Ⅲ 初めてのダークプロミネンス
次に目を開けると俺は見知らぬ大地に立っていた。
周りには草原が広がっているが、近くに人は見あたらない。
「ここが異世界なのか?」
背格好が先程までと同じこともあり、実感が薄い。
しかし体内から溢れてくる力を感じることができる。
これが魔力なのだろう。
魔法が使える!感覚がそう告げている。
「あの木を燃やしてみるか」
やはり魔法を使ってみたいので、目についた木を燃やそうと考え、試しにその木が燃える様子をイメージしてみる。
すると・・・
「びみょーだな」
確かに木は燃えた。
しかし、料理に最適そうな火加減だったため、戦闘で使えそうにない。
「やはり詠唱が必要なようだなぁ!」
魔法と言えば詠唱だ。
意味もろくに知らない単語を並べて必殺技のようにしていた中学の頃が懐かしい。
そして、空に浮かぶ漆黒の太陽をイメージして
「我が裁きを受けるがいい!漆黒の太陽!」
と詠唱すると・・・
空にイメージ通りの漆黒の太陽が出現した。
「す、す、素晴らしい!!!」
素晴らしい!最高だ!イメージ通り出現するとは!
大満足の結果とは裏腹に、疑問に思う所もある。
それは、こんなにも簡単に出せる魔法が通用するのか?
全く疲れを感じないがどれ程連発出来るのか?
など疑問は多い。
「威力を確かめてみるか」
通用するかは別として、自分の魔法の威力も知らないようでは話にならない。
そもそも、ダークプロミネンスをここにほかっておくわけにもいかない。
俺が草原に直撃するようイメージすると、頭上のダークプロミネンスもその通りに動き・・・
「どごぉぉぉん」
着弾と同時に凄まじい熱風が吹き荒れ、鈍い爆発音が鳴り響き、地上には巨大なクレーターが出来上がってしまった。
「この威力がスタンダードなら町がいくつあっても足りないな」
俺が放った魔法がこの世界の最高ランクであって欲しいという淡い期待を乗せてそう言った。
「何はともあれ、まずは人を探したいな」
魔法こそ使っているが、逆にそれしか異世界らしい事をしていない。
やはり獣人やエルフやらの他種族との交流、
モンスター討伐、悪徳貴族の成敗など殺ってみたいことは盛りだくさんだ。
「風よ、我が翼となれ。飛翔の翼」
それとなく飛べそうな詠唱をすると、難なく空を飛ぶことにも成功する。
すると遠目に10メートル程の巨大な城壁に囲まれた王都?のようなものを確認できた。
いきなり空から侵入するのは目立ち過ぎると思ったので近くに降り立ち城門から入ろうとすると
「見かけない顔と服装だな。ここに来た目的はなんだ?」
そう門番に呼び止められた。
そういえば高校の制服のままなのを忘れていた。
不審者にでも思われたのだろうか?
「俺は旅をしている。この町の名前と、まず行くべき所はどこだろうか?」
ギルドらしき建物に直行し、後になって在国許可が必要なんてことになっては面倒なので、先に行くべき所があれば聞いておきたいが・・・
「ここはモナート王国城下町だ。とりあえずこの道をまっすぐ進めば一際大きいギルドの建物があるからそこに行くといい。まず間違えやしないよ」
どうやら俺の心配は杞憂に終わったようだ。
親切な門番に感謝を述べつつギルドへと向かう。
ここはかなり活気のある町のようで、結構な数の人とすれ違う。
しかし他種族とはいまだすれ違っていない。
この町は人間ばかりのようだ。
すれ違う中には、制服のような服装の人間もいたため、目立つようなことはなかった。
魔法学校のようなものでもあるのだろうか?
だとしても異世界に来ていつまでも同じ服装では興がさめるので、早く収入を得て衣類を新調したいなと考えていると、周りの建物より一際大きい建物が視界に入る。
「ここが目的地で間違い無さそうだ」
周囲の建物と高さも幅も違いすぎるため、確かに間違え用がない。
もはや町の景観を損ねているのでは?
と思うくらいだが、ギルドの力の大きさの現れなのだろう。
これから先どんな出会いが俺を待っているのか。
心を弾ませギルドへと入るのであった。
毎日投稿している人って凄いですね