Ⅰ 陳腐な授業で
「今日も小鳥たちのさえずりが俺を祝福している」
何の変哲もない、いつも通りの授業中に窓の外の景色を眺めながらそんなことを呟いた。
俺はごく普通の高校に通っているごくごく普通の男子高校生の佐藤 蓮だ。
ただ一点、厨二病が抜けきっていないことを除いては・・・
しかし、俺は年中左手が疼いていたり、何も無いのに眼帯をしているような危ないやつではない。
そんな行動もしていた時期もあるが、楽しさよりも恥じらいの方が強くなり、黒歴史という名の古き良き思い出となっている。
そんな2、3年前の事を思い出していると、周りから浮いているから恥じらうのであって、剣や魔法のある異世界ならそんな行動も浮かないのだろうなと考える。
俺は異世界に行ったときどのような行動をとるのだろうか?
「ドタドタドタ」
次の妄想のネタも決まったなと思った時、授業中とは思えないそんな荒っぽい足音と共に教室の扉が乱暴に開け放たれた!
「だっ誰なんですか!?」
授業をしていた教師の田中 千絵がそう口にした。
しかしそんな問に答えもせず、刃渡り15センチ程のナイフを手に覆面の男が入ってきて、小柄な千絵先生は人質にとられてしまった。
「死にたく無ければおとなしくしろ!」
そんな上品のじの字も無い下品な声が覆面の男から放たれる。
クラスのみんなは唖然として言葉を失い、ただただ眺めている。
当然だ
こんな状況を想定して過ごしている人間などそうはいない。
そう、この俺を除いてはなぁぁぁ!!!
俺の脳内は完全にフィーバー状態だった。
このような展開は腐る程予行練習済みだからだ。
しかし、ここで平静を保てないのであれば他の一般ピープルと何ら変わらないなと考え、燃えたぎる熱い思いを一旦冷ます。
冷静さを取り戻し始めると、昨晩のニュースで近くの銀行強盗を報じていたことを思い出す。
今、教室に乗り込んできたこの男を強盗犯と当たりをつけもう少し思い出すと、確か犯人は一人で拳銃も持っていという情報にたどり着いた。
マスコミは国民の洗脳を企んでいるに違いない!と勝手に敵対視させてもらっている俺だが、今回はマスコミの迅速な報道に素直に感謝する。
拳銃が無いのであれば妄想通り勝てるのではないか?
男の図体が標準的であったこともあり、そんな考えが頭をよぎる。
男の隙をつき俺の[一撃必殺の奥義]をお見舞いする。
それだけのことだ。
そうと決まれば後は実行に移すのみだ。
「ガタン」
廊下で物音がした。
異常に気付き隣の教室で授業をしていた教師が様子を見に来ていたようだ。
「下手な真似するとこの女殺すからなぁっ!!!」
そう廊下に向かい叫んだ男の乱暴な声は恐怖に支配されている教室に大きく響いた。
しかし、俺はこの隙を見逃さなかった。
「今、犯人の意識は廊下にある」
そう俺が感じた次の瞬間、俺は男を戦闘不能にすべく、俺の必殺奥義[金的一閃]を直撃させる
・・・はずだった。
そもそも窓側の席から廊下側にいる男に不意討ちを喰らわすこと自体が間違いだったのだ。
そんな初歩的なミスに気付いた頃にはもう遅く、攻撃を喰らわすことは疎か咄嗟に振り回された男のナイフにより切り裂かれてしまった。
「バタン」
そう音を立て床に倒れた。
血が止めどなく流れている。
肌で床の冷たさを感じつつ、血の生ぬるさも伝わってくる。
「気持ちが悪い」
そう感じつつ意識が薄れていく・・・
「蓮くんっっ!」
遠くで先生の声がする・・・
「きゃあぁぁぁ!」
教室に叫び声が響く・・・
薄れ行く意識の中、俺は「強くなりたい」そう願った。
感謝