表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ世界が壊れても  作者: 霧島 奏
序章 悲劇
1/31

0話 書き置き

物語は変わりませんが、構成上「0話」として新たな話を付け加えました!(2020/9/3)

既に読み進めている方は、この話を読んでも読まなくても物語を追えるようにしていますが、気になる方は読んでほしいです!


初めて読む方はこの話から読み始めてもらえると嬉しいです!

俺は何のために生きてきたのか。

何のために犠牲を払い、何のために戦ってきた?



この世界を平和にする……?



違う、そんなの建前だ。

ただ憎かった。

憎くて憎くてたまらない。

何もかも壊してしまいたかった。



俺は周りの人間が思っているような、できた人間じゃない。

平穏な日常を奪った奴らに復讐してやりたい、そのためだけに多くの人の命を奪った。



心から信じられるのは自分だけ。



――君を除いて。



俺は君を愛していた。

その温もり、香り、笑顔……その全てが愛おしかった。



そんな君を、俺は救えなかった。



君を救うために、何度も何度も何度も挑んだ。



君のためなら、世界がどうなろうと構わない。

この世界の理を変えてでも、君を救えるなら。

俺には君さえいれば、それでいい。



――たとえ世界が壊れても



そう思っていた。

それでも俺は、君ではなく世界を選択した。

それが君の願いだった。




君を失った。




そうか……これは罰かもしれない。

神の設計図を(もてあそ)んだ罰。



どんなに理を変えようとも、この運命だけは変えられない。



ならばもう(あらが)うことは止めよう。

もう無理だ。



つらい。



苦しい。




だから俺は一番手っ取り早く君に会う方法を思いついた。

なんだ、すごく簡単なことじゃないか。

なんで今まで思いつかなかったんだ?




今日、俺は自分の人生を、ここで閉じる。



***


 

 男は(したた)めたものを机の引き出しに入れると、机上の砂時計に目を移した。

(まぶ)しいくらいの白銀で装飾が施され、何もないくらい透き通ったくびれたガラスの中に、きめ細かな金色に光る粒が入っている。

これほど美しい砂時計は、世界のどこを探しても見つからないだろう。


 それを取ってひっくり返すと、輝きがさらさらと滑らかに落ちてゆく。

静かな時の流れ。

砂の落ちる音は、そよ風に似ていた。


 砂が全て落ち切った後の余韻。

男は目を瞑ってゆっくりと呼吸する。

それからその砂時計を取り上げると、郊外へ向かった。



――あの荒廃した、誰もいない土地へ。



 灰色の木々を抜けると、既に日が傾き、燃えるような空が広がっていた。

第3次世界大戦の傷跡を未だに残しているこの土地は、まさしく死の象徴のように、全く生気を感じられない。

男は砂時計をポケットから取り出すと、それを近くの木の根元に置いた。


(ここで全てを終わりにしよう……)


男は高い崖の淵に立ち、ゆっくりと辺りを見渡した。

それから目を閉じ、一歩を踏み出す――その時である。



――ねぇ……



頭の中で声が響いた。

気付くと男の目から涙があふれ出している。


(あぁ……そうか……)


止まることを知らない涙を拭いつつ、男は先ほどの木の方へゆっくりと引き返した。


(君は俺に、未来を信じろと……そう言ってるんだね)


地面に崩れるように膝を着いた。

震える手を伸ばし、砂時計をそっと手に取る。


(それが君の望みなら……俺は信じよう……)




それから間もなく、白い光が男の手元から発せられたかと思うと、真上に向けて一筋の光線となった。

やがてその光線の先端が広がり、一瞬にして空全体を覆った。




ちょうどその光が消える頃、赤羽(あかばね)隼人(はやと)は悪夢にうなされていた。

この作品が面白い、気になる、あるいは応援したいという方は、ブックマーク登録と評価をお願いします!

(私がすごく喜んで、投稿ペースの頻度が高まるかもしれません!)


また感想やコメントも嬉しいです!

投稿情報や、作品の情報はTwitterでお知らせているので、もしよければフォローよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いと思います。綺麗な文字の始まり、先の話が読めない展開、気になるキーワードだらけで本当に読めない展開が、気になる作品ですね~♪ [一言] 椿・巫女です。零・朔弥は前のハンネです♪
2020/09/10 00:13 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ