プロローグー前編ー
一応異世界ものですが、プロローグ前後編は異世界ものらしからぬ感じなのでご了承ください
水。それは人類にとって最も身近な液体であり、すべての生命体にとって必要不可欠な物質である。
だが時に水は、突然として我が身を襲う厄災となり得るだろう。
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ここは某県某所にある高等学校。程々の都市部に位置し、程々の偏差値で入学できる、極一般的な高等学校である。
そんな高校の放課後。授業は終わり、皆部活動に励むか、帰路に着く等している最中、彼、碓氷 水都は未だ教室に残っていた。無論、居残りである。
彼はふと窓の外を眺め、プリントの提出が面倒だからか、一雨きそうな空模様だからか大きな溜息をついた。
憂鬱だ。
最近は滅多に感じることがなくなった感情が再び芽生える。高校に入学してすぐの時は頻繁に感じていた感情。
異性とのお付き合いだとか、部活動だとか、友情だとか…所謂『青春』とやらに無縁なせいなのか。
明るく陽気な感情よりも、暗く陰鬱とした感情を多く持つようになっていたのは確かだった。
「お前さぁ。もっと明るく考えようぜ!いいか?青春ってゆうのはな?あの時は楽しかったー。だとか、俺たちバカみたいなことしてたなー。とか、まぁようは未来から見た過去!つまり、『今』楽しめばそれは自ずと未来のお前から見たら青春になるんだ!」
と、水都の前の席の時田 佑磨は言 う。
別に青春に興味はなかったが、陰鬱な感情が消えるのならばと、時田の口車に乗せられる事にした水都。
その日からは時田経由ではあるが、クラスのヤツらと打ち解けられたような気がした。心の中が満たされて行くような気がしていた。陰鬱な感情を心の奥底へと押しやることが出来るくらいには……。
だが、楽しかったか?青春だったか?と問われれば未来の彼はきっと答えることは出来ないだろう。
彼の心の中に満ちている幸福感はきっと虚構なのだから……。
水都は考えていたことを取り払うかのように首を左右に振り、プリントの空白部分を埋めて行った。
若干キリが良さげなのでここで前後編分けさせていただきました。