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かみてん。  作者: あゆみのり
肉我。
82/89

宣告。

 ヤウが去ってから半年が経つ。

 結論から答えると、タチには「寿命」の「じ」の字すら言っていない。

 ――というか、言えてない。

 

 言った方がいいと分かってはいるけれど、簡単に言い出しにくいのは分かって欲しい。

 そして、そんな事より、今、目の前の日々を大切に過ごそうとした結果、半年も経ってしまった。

 

 この半年の間も色々とあった。

 わちゃついてたり、わちゃついてたり、相も変わらずわちゃついてたり、が殆どだけど。

 ユニちゃんがタチに抱かれたり、エミーさん(ワイバーン)がちょっかい出しに来たり。ナビが編み物に目覚めたり……

 と、結局わちゃついていた。

 

 火の化身アチャとも一度会った。

 でも、正直どうでもいい。

 


 あと三年。

 そう伝えたとしても、タチは傷つかないし、凹まないとわかっている。

 何も知らされずいるより、どんなに短くとも、二人覚悟して過ごすことを望むことを……

 

 なら、なぜ口にできずにいるのか。 

 それは「私」が弱いからだ。


 タチに打ち明けた時、絶対。ぜ~ったいに。私は泣く。

 そりゃ~もう。凹むし、傷つく。

 

 自信がある!


 そして、そんな私を絶対。ぜ~~ったいに、タチは慰めてくれる。

 そりゃ~もう、格好良く、素敵に。

 知っている。

 

 体も、心も、ふやかし、包み込み、わからせてくれるに決まっている。

 ずっと、一緒だよって。


 それが情けないのだ。

 そんな私が嫌なのだ。


「ナナぽん!ナナぽん!今日のお洋服はこれユニ!」

 タチ枕(右腕)で目を覚まし、体を起こさずウダウダと思考を巡らせていたら、タチ枕(左)の方から大人ユニちゃんが服をかかげた。

 白くて、フリフリで、かわいらしい服を。


 風の大陸の西の端、フィルル高原のちょっと南。ジャーネブの街の宿の一室に私達は居る。

 今となっては珍しい、白くない宿屋。

 

 つまり、祝福が作ったのではない、昔ながらの非効率な宿屋だ。

 この「ナシオン亭」で言えば、急すぎる階段とか、天井の隙間がそうだと思う。


 そもそも、宿屋自体の需要が大幅に減ってしまっている。 


 そんな時代の中。ここのご家族の祝福は「ナシオン亭」を立て直すより、作り直した方が早いと判断したのだろう。

 ここより一キロ東のあたりに「新ナシオン亭」は作られていた。


 最初はそっちをのぞいてみたの、そうしたら受付に居た祝福ちゃんが「あなた方にはこちらがいいかもしれまセン」と親切に教えてくれたのだ。

 実際、こっちの方が私には良かった。

 

 木と、少しかび臭い匂い。ゴワついたお布団。せっかく旅をしているのだから、同じような寝床じゃつまらない。

 それに、結局は全てを打ち消す、最強のタチ枕のおかげで安眠は約束されている。

 

 言っている事が矛盾している気もするが、気にしない。

 それに、この枕じゃないと、嫌な夢を見るに決まっている。

 私にとっては手放せない、必須寝具だ。

 

「うぅ~。勝手に着替えさせて……」

「「わかった!」」 

 裸のユニコーンと、裸の枕が、声を重ねて返事をした。

 裸の私に、色んな布やら、小物が引っ付けられる。

 

 ユニちゃんの角は、聖なるモノを分解して保存できる便利角。

 主に、ちびっ子服が詰められているようだ。


 何が凄いって、今の所出てくるお洋服に被りがないこと。

 毎日毎日楽しそうに、私を着せ替え、そのたびタチが燃え上がる。 


 「期限」について、余り考えすぎないように努めてきた。

 悲しくなるから。

 

 でも、日に日に「早く言わなくちゃ……!」と、焦る気持ちが湧いて出る。

 

 だって、ヤウから宣告される前から、考えちゃったりする時はあったから。


 タチが長生きできそうなタイプか?と言われると疑問だけれど、お題を「しぶとそうな人間」に変えれば、あら不思議。

 絶対にしぶといであろうタチさん。


 普通の人なら六十年ぐらいだろうけれど、ここはもってけ泥棒!しぶといタチさんなら百年まで生きるとして、半分は五十年。

 タチはきっと二十台だろうから、残りは三十年?

 

 そう考えるとちょっと、息継ぎができる。 

 三十年……それなら、もうちょっと考えないでおいてもいいんじゃないか?

 

 ……本当いうと、六十歳まで生きれたとして、残り二十年。

 そう考えても、今の所。まだ今のところは不安にならなくたっていいじゃない。


 ――そう納得させていたのに、二十年ぐらいが、あと三年……たった三年に縮まってしまった。

 正直パニックだ。 

 


 つらい。認めたくない。

 口にしたら、現実になりそうだし、考えると気持ち悪くて、吐きそうになる。

 

「ナナぽん?」 

 小さく編んだ私の髪に、無数のリボンをつけていたユニちゃんが、のぞき込んできた。

 

 こんな時間の過ごし方はとてつもなく、もったいない。

 だからさっさと言うべきなのだ。

 

 残り時間を丁寧に生きるタメにも。

 今更、タチに弱い自分を見せたところで、恥も外聞もあるまい。

 

 明日こそ話そう。 

 そう心にきめた夜を、半年も繰り返してしまった。

 

 だって「死の宣告」をタチにするということじゃない。

 


 でも、もう私は限界だった。


「タチ……話があるの」

「まかせろ」

 彼女はいつも通りに、笑い。

 私はいつも通りに、泣いた。

 

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