妖怪カフェへようこそ!
仕事帰りに俺は、一軒のカフェを見つけた。
妖怪カフェ
ちょっと面白そうだ。入ってみよう。
「いらっしゃいませー」
出迎えてくれたのは黒いベストを着たイケメンなのだが……
「一つ目小僧……?」
「あ、そうっす。お席、こちらっす」
「いや、一つ目ってガチの妖怪じゃ……ってなんかテーブルがヌメヌメしてるんですけど!?」
「あれ、アカナメくん? テーブル拭いたっすか?」
奥から髪がすだれのようになった猫背の男性が現れた。
今度は妖怪・垢舐めかよ!
「ちゃんと舐め……拭いたよ……?」
「そいつ絶対テーブルを舐め回してますよね!?」
「ははは、アカナメくん、今度はちゃんとテーブル拭きを使ってほしいっすよ」
「飲食業として衛生的にアウトなやりとりを客の前でしないで!」
俺は心を落ち着かせようと席にあったメニューを開く。
コーヒーに紅茶、日本茶もある。
そして、カフェご飯も……
「おい、なんでここのカフェご飯は胡瓜の味噌漬けと胡瓜の浅漬けと胡瓜の酢の物なんだよ!? なんだこの胡瓜推し!? これもうご飯っていうかおつまみだろ!?」
「流石、お客さん。目の付け所が違うっすね」
「本当に目の位置が違うお前に言われても」
そこに黒いエプロンをつけたおじさんが現れた。頭には皿。あぁ、そんな気がしてたよ。
「それらはマスターである私の力作。自信を持ってお勧めできるカッパよ」
「取ってつけたような語尾やめろ」
「折角だから何か注文してくれると嬉しい。季節限定メニューもあるぞ。……あるカッパよ」
「早速語尾がガバガバじゃねぇか」
マスターの河童と話している俺の元に、ニュッと首を突っ込んでくる女性店員が現れた。なお、首だけだ。
「こちら季節限定メニューになりますー」
「メニュー表を咥えて差し出すなよ! 客に渡すものを咥えるとか衛生観念おかしいだろ!」
「伸びるのが首だけなんで、つい首だけで動いちゃうんですよねー。私もゴム人間になれる実を食べて、口を使わずに腕で渡せるようになりたいんですけどー」
「ろくろ首が国民的少年漫画の設定に憧れるなよ! ていうか歩いて席まで来れば良い話だろ!」
興奮する俺にマスターがすっと何かを差し出した。
「お通しの胡瓜の浅漬けです。お代はサービスするカッパ」
「あんたカフェと居酒屋を混同している節あるよね!?」
俺はそう言いながら胡瓜を口に運ぶ。
「って超美味いな、これ!?」
こうして俺は店員が妖怪の変な店に胡瓜目当てで通う常連客になっていくのであった。