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情報収集

 森の中を進む。俺の隣には、最初の仲間であるケット・シーがついて来ている。

 ん?そういえばこの子の名前を聞いてなかった。


 「「なぁ、名前なんて言うんだ?」」


 唐突な質問に驚いたのか、ケット・シーは少しキョトンとしている。


 「「あ、いやー、名前を聞いて無かったなーと思って……。」」


  「「そうですね、自己紹介がまだでしたね。私の名前はシャルと言います。種族はケット・シーです、ユートラス王国の騎士です。この森には、生態調査のために訪れたのですが、Dランク程度のオーク3匹に襲われたのです。ちなみに私はBランクの騎士ですので、オーク1匹ならば余裕で倒せたのですが。」」


 へぇ、ランクとかもあるのか。俺のランクはどれくらいなんだ?


 《主人様のランクは、Sランクです。》


 Sランク……。それって1番上じゃ無いか⁉︎


 《いえ、魔王:サティア・オベリアのランクはSSランクです。》


 上には上がいるのは、どの世界でも共通なのか。


 で、もう一つ気になることがあるんだが……。


 「「今、王国の騎士って言ったか?」」


 「「はい、ユートラス王国の騎士です。」」


 こいつは馬鹿なのか?王国の騎士なんて、魔物を討伐する側だろ?なんで俺の仲間になってんだよ。


 「「あのさ、そのー、ユートラス?王国の騎士が魔物である俺の仲間になってて良いのか?」」


 「「確かに私は魔物を討伐する者です。ですが、それは知恵なき魔物が対象です。知恵のある魔物は無闇に攻めてきませんから。それに、命を助けて下さった方に忠誠を誓うのは当然のことです。」」


 そういうものか?まぁ、本人が良いならそれで良いか。



 じゃあ、とりあえずシャルのステータスでも確認してみよう。


 《スキル『観察眼』を使用します。》


 よし、今回も頼むぞ。


 イメージの中に情報が表示される。


[ステータス]

•名前・・・シャル

•種族・・・ケット・シー

•称号・・・『聖騎士』『変幻者』

•スキル・・・『予測』『演算』『猫目』『猫歩行』『変化』『治癒』『剣技』『鑑定』『読心』



 ほー。さすが、ケット・シー。猫っぽいスキルがある。『猫目』とはなんですか?


 《スキル『猫目』の効果。[暗視]暗闇の中でも視界を確保できる。》


 ふむふむ。では、『猫歩行』とは?


 《スキル『猫歩行』の効果。[跳躍]ジャンプ力が上昇する。[落下ダメージ無効]落下によるダメージを無効化する。》


 はー、結構便利だなー。落下ダメージ無効は高さの制限が無いなら、かなり有能なスキルだ。



 「「あの、あなた様のお名前はなんと言うのですか?」」


 ステータスの確認をしていて、完全に自分の自己紹介をしていなかった。


 「「ああ、そうだな。俺の名前は梵 悠斗。種族は不詳だ。自分は、転生してきたからこの世界のことはまだ、何も分からないんだ。」」


 「「転生者……?」」


 あ、しまった。いきなり自分は転生者だ、なんて言っても信じてもらえるはずが無い。


 「「あの方と同じ……。」」


 少し、驚いた様子のシャル。


 あの方と同じ?俺の他にも転生者がいるのか?


 「「なあ、シャル。あの方と同じって、俺以外の転生者がいるのか?」」


 「「いえ、何でもありません。そんなことより、何故、ソヨギ様は人型にならないのですか?」」


 「「え……?」」


 「「ソヨギ様の魔力量であれば、仮の肉体を生成することが出来そうですが?」」


 そんな事出来るの⁉︎初耳なんだけど⁉︎おい、森羅万象、肉体の生成とやらが出来るのか?


 《はい、可能です。主人様の魔力・魔素量であれば、容易です。》


 こいつ、サラリと言ってるが、ものすごい重要な事だろうが!


 《主人様の魔素を消費し、肉体を生成しますか?》


 ……。もういいよ。作ってくれ、とっとと作ってくれ。


 《肉体を生成します。基盤として、魔王:サティア・オベリアの情報を読み込みます。》


 そうだ、説明をしとかないと。


 「「シャル、申し訳無いけど早速、肉体を生成するから待っててくれ。」」


 「「はい、分かりました。その間、周りを警戒しておきます。」」


 しっかりしてるな、シャルは。仲間にしといてよかったと思う。


 《読み込みが終了しました。肉体の生成に移ります。》


 俺の周りを、黒い霧のようなものが包む。視界が閉ざされた。


 《進捗状況……21%》


 うーん。なんか変な感じがするな。ムズムズする。


 《進捗状況……58%》


 結構速いな、視界は相変わらず真っ暗だ。


 《進捗状況……94%》


 お、一気に進んだな。なんだか懐かしいような感覚がする。


 《進捗状況……100% 肉体の生成が完了しました。》


 今まで、俺を覆っていた黒い霧がだんだんと晴れていく。そして、生成された新しい肉体が見えた。

 肌は白く、一人称視点でも見える位の長さの銀髪。そして、下半身辺りを恐る恐る確認してみる。


 そこには何も無かった。


 凹も凸も何も無かったのだ。まあ、種族が不詳な奴が生殖行為をする訳ないか。では、俯瞰状態で見てみるか。


 視点を切り替える。


 その視点に見えたのは、銀髪で金眼の美少女であった。てか、誰だよこれ?元の俺の面影なんてものは、1ミリも無かった。


 「仮の肉体の生成が成功したようですね、おめでとうございます。」



 「ありがとう。これで色々と楽だな。」


 おお?


 そうか、肉体を生成したから擬似五感ではなく本当の五感になったのか。これで念話じゃなくても話せる。



 新しく体を生成したわけだが、右腕は前に見ていたものと変わっていなかった。つまり、右腕を核として、他の体は魔素によって作られたということか。


 「ソヨギ様、何かしら服を着なければなりませんね。」


 そう言われれば、俺は素っ裸だった。衣服を作るスキルとかある?


 《称号『創造者』の恩恵によりスキル『物質創造』を獲得しました。》


 《スキル『物質創造』、スキル『絵空事』を並立使用します。》


 どうした、森羅万象?気の利き方が、森羅万象じゃない。さてはお前、偽物か?本当の森羅万象を返せ!


 《……スキルの使用を中断しますか?》


 大変申し訳ございませんでした。スキルの使用は続行して下さい。



 「どうされました?」


 シャルが不思議そうな顔でこちらを見ていた。



 「ああ、何でもない。さっさと服を作らないとな。」



 服か、どうしようかな。やっぱり、動きやすい服がいいな。


 俺が前の世界で部屋着として着ていた、パーカーと半ズボンでいいか。


 じゃあ頼むぞ、森羅万象。


 《衣服の作成を行います。主人様の記憶を元にデータを構築します。》


 俺の周りをさっきと同じ、黒い霧に包んだ。そして、肉体の生成よりも短い時間で霧は晴れた。俺のイメージ通りの黒いパーカー、深緑色の半ズボン、おまけに靴下とスニーカーまで作られていた。


 「初めて見る衣服ですね。ですが、ソヨギ様なら何でもお似合いです。」


 「あ、ああ。」


 シャルって少し前に仲間にしたばっかりなのに、忠誠心がすごい。そんなにお世辞とか言わなくていいのに。まぁ、嫌われてるとかじゃないしいいか。



 身体も服もできたし、そろそろ当面の目標を決めないとな。まず、この世界がどんな感じか知っておかないといけない。やはり、ここはシャルに聞いてみるのが一番か。


 「シャル、この世界の事について何でも良いから教えてくれないか?」


 王国の騎士って言ってたし、色々と知ってそうだ。


 「もちろんです。……では、この世界の情勢からお話致しますね。まず、人間側はウルフェシア帝国という国が最大の勢力を誇っています。それに次いでユートラス王国が規模としては大きいです。また、国としての規模は小さいですが圧倒的な技術力の高さを誇る技能国ルサンザなどがあります。そして、魔物側の国として魔王が治めている、魔帝国オベリアルや魔導国家ムスガントが強大な力を持っています。」



 魔帝国オベリアル、それは魔王サティアが治めている国なのだろう。


 シャルが説明を続ける。


 「ちなみにこの森は、魔帝国オベリアルとユートラス王国との間に位置しています。ですので、この森の調査をユートラス王国の騎士である私が任されたというわけです。ここの森には、普通C〜Bランクの魔物しか発生しないのですが、最近になってAランクの魔物の目撃情報が相次いでいたのです。その脅威がどれ程かを調査しに来たのです。」


 成る程な、Aランクの魔物か。どれくらいの強さなのだろうか。


 「そして、この世界では5年前に戦争が起きています。その戦争はあらゆる種族を巻き込んだ、とても規模の大きい戦争でした。事の発端は、1つの噂話からでした。」


 「噂話?」


 「はい。その噂話とは、魔王サティア・オベリアが人間達を滅ぼそうとしているというものでした。それを聞いた人間、人間側に加担していた種族達はやられる前に攻撃を仕掛けようとし、魔帝国オベリアルに侵攻しました。当然、魔王軍もそれを迎え撃ちました。そこからは激しい戦いが続き、ユートラス王国の先代の王が戦死し、魔王サティア・オベリアの弟であるロスク・オベリアが捕らえられ、痛み分けという事で戦争は終結しました。」



 はぁー、俺が来る前にそんな大規模な戦争が起きていたとは



 ……ん?



 「魔王に弟なんていたのか?」


 魔王というと唯一無二の存在のイメージがあるんだが。


 「はい。しかし、実際のところ魔王は姉の方であり、弟はそれと同格の力を持つというだけです。」


 いやいや、同格の力を持つだけって言うけど、それって魔王が2人いるのと同じからね。そんな戦力に対してよく、痛み分けで終われたな。


 それとも、人間側の陣営がそんなに強かったのだろうか。


 「いえ、人間側の陣営には騎士団や軍隊はありましたが、魔王軍には劣るものでした。そのため戦争は魔王軍が優勢に進め、先代国王が戦死するまでにそう時間はかかりませんでした。しかし、2人の転生者により戦況は大きく変わりました。」


 さっきはスルーされたが、ここで話してくれるのか。俺以外の転生者の話を。



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