初めての仲間
仲間が増えるよ、やったね!
さて、色々と確認できたしこの森の散策でもするか。『浮遊』と『飛行』を使用する。飛ぶのは2回目だったが『森羅万象』のお陰で失敗する事も無く、移動が出来た。
スーッと平行移動していく。周りには見たことの無い植物や小動物らしき何かが見える。
おや、あそこにいるのは……。
《[オーク]豚の顔を持った獣人型のモンスター》
あいつが、かの有名なオークか。思ってたより身長が高いな。今、見えてるのは3匹かな。何かを探しているのか?3匹とも辺りを見回している。
……カサッ
あ。
不覚にも、木の葉に当たってしまった。
俺の擬似的な視覚と3匹のオークの目が合った。こちらに向かって迫ってくる。
ここは、逃げるが勝ちだ。俺は一目散に飛び去る。
オークはそんなに移動速度は速くないはずだ。俯瞰状態にして後ろを確認する。
待って、あいつら足速くない!?豚のモンスターのくせに、動きが俊敏なんだけど!?このままだと追いつかれそうだ。
《スキル『加速』を獲得しました。》
《スキル『硬化』を獲得しました。》
《スキル『物理攻撃無効化』を獲得しました。》
おお!自動でスキルを獲得するとは、『森羅万象』便利過ぎだろ。
ん?思い描いたスキルを生成するのはいいが残りの2つはなんで獲得したんだ?
《自動飛行へと移行します。》
え、ちょっと待って。スキルのくせに勝手に決めたぞ!?
俺の意識に関係なく、方向が決まった。さっきよりもスピードが上がっている、これなら逃げ切れそうだ。方向がオークに向かっていなければ、の話だが。
そのままのスピードを保ったまま、オークの頭に激突する。オークの頭が吹っ飛ぶ。
……ん?頭が吹っ飛んだ?倒れたオークは、モザイクが必要なくらいグロテスクな感じになっている。残りの2匹は、倒れたオークを見て戸惑っているようだ。俺の意識下に無いまま動く体。頭を吹っ飛ばされる2匹のオーク。あたり一面が、オークの血でいっぱいになった。
《自動飛行を解除します。》
《モンスターの討伐により、経験値を獲得しました。》
経験値を獲得か。レベルアップとかするのか?
《経験値の獲得により得られる称号、スキルがあります。》
ほーん。いや、それはいいよ。それよりもなんで、俺の意志を無視したんだ?
《主人様の強さであれば、オーク3匹などたわいもないと考えたためです。》
俺、右腕だけだよ。どうしてそんな結論に至ったんだよ?
《魔王の眷族である主人様と低ランクモンスターのオークとでは、あまりに力の差があります。》
そうなの?俺ってそんな強かったの?
《簡単に言うと、魔物の中では魔王の次に強いと言っても過言ではありません。》
へー、マジか。魔王がどれくらい強いのか知らないけど、そこそこの強さはあるのか。
ガサッ。
オークの血溜まりの向こうにある茂みで物音がした。これは、数分前の俺と同じ状況だ。俯瞰状態に切り替えて、茂みの奥を見てみる。
そこに見えたのは猫であった。
しかも、二足歩行で服を着ているケット・シーであった。
どうしよう。めっちゃ焦ってるよ、あのケット・シー。なんか、すごい可哀想になってきた。んー、話しかけてみようかな。でも俺話せなくね、口無いもん。
《スキル『念話』を獲得しました。》
うん、便利すぎ。俺の思うがままにスキルを作成できるってすごいな。で、どう使用するんだろう?
《対象を選択し、頭の中で文章を考えるだけです。》
あら、お手軽。じゃあ早速念話してみよう。
「「あー、あー、聞こえますか?」」
「ひゃいっ!?」
……あれ?
念話したかったんだけど……。めっちゃ声出てるじゃん。
とりあえず、念話を出来るか聞いてみるか。
「「えっと、念話って出来る?」」
「あ、はい!出来ます!」
少しの間があり、声が響いてきた。
「「聞こえてますでしょうか?」」
「「うん、聞こえるよ。」」
「「あ、あの、、殺さないで下さい!お願いします!」」
「「いや、殺さないよ⁉︎」」
唐突過ぎてびっくりした。まぁ、オークをあんな殺し方したらそりゃビビるか。これは、誤解を解くとこからだな。
「「えーと、オークを殺したのは俺の意志じゃなくて、なんというか俺のスキルが勝手にやったことだから……。安心して?」」
何を安心すれば良いんでしょうね。俺が殺したのは確実に見られていたのに。これでは、俺がサイコパスっぽくなってしまうでは無いか。
「「あ、その件に関しては感謝しているんです。私がオークから逃げ、隠れていた時にあなた様が現れて、オーク達を倒して頂いたたので……。」」
そうか、あの時オーク達が何かを探していた様に見えたのは、このケット・シーの事を探していたのか。
「「あの、お礼は致しますので、命だけはご勘弁を!」」
すごい必死だけど、別に殺そうだなんて微塵も思って無いんだけどなぁ。しかし、お礼とな?俺的には1人じゃ寂しいから、仲間になってもらいたいんだけど……。ダメ元で頼んでみようかな。
「「じゃあ、お礼として俺の仲間になってくれないかな?」」
「「はい!喜んで!」」
そっかー、やっぱりダメか。って今なんと⁉︎考える素ぶりも見せず、即答したぞ⁉︎
「「え、本当にいいの?」」
俺は、意外な返答に戸惑いつつも、念の為にもう一度聞いてみる。
「「はい!あのまま、隠れていてもオーク達に捉えられるのは時間の問題でした。ですから、命を取られ無いのであれば、喜んであなた様の仲間になります!」」
「「あ、そう。」」
結構、簡単に仲間ができた。これで寂しく無いな。
某アニメ風に言うと、ケット・シーゲットだぜ!