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ダークエルフとの戦い

評価のポイントを付けて下さった方、ありがとうございます。とても励みになります。これからも頑張っていきます!

 ダークエルフであるエレラダは、森の中で息を潜めて居た。ダークエルフはこの森の中で恨まれる存在であった。この種族は黒魔術を得意とする種族のため、何か問題が生じると大抵の場合、ダークエルフが疑われていた。

 5年前の戦争では、殆どのダークエルフが殺された。しかし、エレラダは生き残った。それは類稀なる魔術の才能があったからだ。彼女はその才能を用い、襲って来た者達を皆殺しにした。

 相手を殺さなければ自分が殺されてしまう、そんな中を独りで生きて来たのだ。そこで、彼女の心は完全にふさぎ込んでしまった。もう誰も殺したくないという思いから、敵を見つけた瞬間に黒魔術による意思操作を行い、自分から遠ざけていた。


 少し前に、迷える三匹のオークがエレラダの前に現れた。手慣れた手つきで彼らを意思操作し、自分から遠ざけた。彼らがある程度離れたら、意思操作を切るはずだったのだが、その前に誰かに殺されてしまった様だ。

 

 そして今、途轍もない魔力量の魔人が近づいてきている。新たな問題に頭を抱えたくなるエレラダであった。






 うーん、あともう少しか。飛行してるから大して時間はかかって無いが、歩いていくとしたら結構な時間がかかるだろう。

 それにしても、楽しみだな。ファンタジーの代名詞とも言えるエルフに会えるのか。エルフって聞くとグフフな想像をしてしまうな。

 《対象の真上に到着しました。降下します。》

 す、すいません。馬鹿な事考えてる暇無かったですね。もしかしたら戦闘になるかもしれないからな、気を引き締めていきましょう。

 地面にゆっくりと着地。そして視界にダークエルフを捉える。とても美人であった。しかしながら、彼女の顔に見惚れている暇はない様だった。

 ダークエルフが手のひらをこちらに向けた。種族特有の挨拶だろうか。


光弾(スパークバレット)!」


 光の弾丸が飛んで来た。森羅万象が回避行動をしていなければ、直撃していただろう。はっきり言って、死ぬかと思った。問答無用で攻撃して来たところからすると、完全に俺を敵とみなしているな。っていうか、あれ魔法だよね?『魔法阻害』は発動しなかったのか?

 《『魔法阻害』のレベルでは無詠唱の魔法には反応しきれません。》

 おいおい、そいつはマズイな。完全に相手の土俵だ。

氷槍(アイスランス)!」

 今度は、氷の槍が飛んでくる。それをしっかりと回避。俺の後ろにあった大木に大穴が空いた。あれが自分に当たっていたらと思うと、ゾッとする。

土鎖(アースバインド)!」

 矢継ぎ早に魔法が飛んでくる。そして、その魔法によって俺は身動きが取れなくなった。

 俺はこの短い命を振り返る。こんなに早く死んでしまう事になるとは。

「ねぇ、あなた。私の名前はエレラダっていうの、少しお話をしましょう。」

 ダークエルフが話しかけてきた。これは意外だった。てっきりトドメを刺されると思ってたが……。案外、温厚な性格なのか?

「あなたも死ぬ前に言っておきたい言葉とかあるでしょう?」

 おっと、前言撤回。キッチリ殺すつもりの様だ。

「あなたみたいな魔人がなんで、この森にいるのかしら?」

「どういう意味だ?」

「とぼけないで。あなたの魔力量は魔王に匹敵しそうな程なの。そんな化け物がこの森にいる理由は?」

「…………。」

「話す気は無いってことね。」

 いや、俺もここに生まれただけで理由なんてものはないんだが……。

「なら、もういいわ。」

 そう冷たく言い放ったエレラダは「木鎖(プラントバインド)」と「水鎖(ウォーターバインド)」を重ねがけした。俺の体に蔓と水がまとわりつく。もう身動き一つ出来なくなった。

「せめて、私の最高の魔法で殺してあげる。」

 そしてエレラダは、冷たい声で詠唱を唱え始める。

「【魔の狩人よ、獲物の首を搔き切り、その血と魂を捧げよ】」

 魔方陣が出現し、その中から巨大な鎌が現れ、振り下ろされ、俺を真っ二つに…………される前に鎌が消失した。

 何故?と思ったが、『魔法阻害』の効果か。詠唱の時点で阻害できる仕組みのはずだ。

 エレラダは驚きのあまり、呆然としている。それも仕方ない、自分の最高と称する魔法が忽然と消えたのだから。

 この隙を突いて、反撃するとしよう。森羅万象、この鎖をどうにかできるか?

 《勿論です、スキル『転移』を使用します。転移先はダークエルフの目の前です。》

 一瞬にしてエレラダの目の前に転移した。体の自由も戻っている。では、

「【魔の狩人よ、獲物の首を搔き切り、その血と魂を捧げよ】!」

 魔法の発動は初めてだったけれど、森羅万象のサポートにより発動自体は簡単に行うことができた。

「嘘でしょ……、何でこの魔法を……?」

 エレラダは俺の発動した魔法を見て更に驚いてる様だ。そして、発動した鎌を振り下ろさずに浮かばせている俺を見て戸惑った顔をしている。

「……殺さないの?」

 エレラダはそう言った。

「殺さないよ?」

 俺がなんかしたら殺される決まりでもあるのか、この世界には。

「殺さない代わりに仲間になってくれ。」

「は?」

 純粋な「は?」はとっても心にくる。俺の豆腐メンタルを潰すだけでは飽き足らず、ミキサーにかけられた様にグチャグチャだ。

「えっと、あの、別に殺したりしないので、仲間になって頂きたいなって……。」

 俺はしどろもどろに言葉を繋げる。

「だって、私はあなたを殺そうとしたのよ?」

 そいうことか。

「別に死ななかったし、どうせ殺せなかったから安心して。」

 とは言えあれ?

「でも、なんで俺を殺そうとしたんだ?」

「あなた程の魔人が来たってことは私を殺しに来たんでしょう。だから殺される前に殺そうと思っただけよ。」

 なるほど、森羅万象も言ってたけど俺はそんなに強いのか?だけど、

「 別に俺は、誰も殺さない。ただ仲間を増やしたいだけだ。だから俺の仲間になってくれ。」

 3回目の頼みを聞いて、エレラダは考えている様だ。俺は、彼女の返事を心待つ。


 …………。


 何分くらい経っただろうか。やっとエレラダは口を開いた。

「分かった。あなたの仲間になるわ。」

「本当か⁉︎」

「だけど、私は森の嫌われ者なの。他の人達から良く思われないことは確かよ。それでもいいなら。」

「別に構わないよ。俺の仲間になってくれればそれで良いんだよ。」

「……そう、変な人ね。」

 エレラダそう言って、少し微笑みを浮かべた。ファンタジー特有の西洋風な顔立ちの美女の笑みは、非リアだった俺には少し眩しすぎた様だ。目が潰れそう。

 《現在、その様な状態異常は確認できません。》

 うるさいなー、こういうのは気持ちの問題なんだよ。

 《分かりました。》

 俺と森羅万象の無音のやり取りを見て、エレラダは不思議そうに首を傾げるのだった。





  ソヨギがダークエルフの探索へ出かけた後、シャル達は受けた命令を遂行しようとしていた。

  「森の調査に当たって、まず、二手に分かれましょう。」

  最初に口火を切ったのはシャルだった。ここは森の中央部。辺りには背の高い木が鬱蒼と生い茂っている。その木々の間の空いたスペースに全員が輪になって座っていた。時間としては、午前10時ごろである。木漏れ日がそれぞれの顔を薄く照らす。

  「私とハルバさんのチームとガドアさん達のチームという分け方でいいでしょうか?」

  皆の表情を伺うように尋ねるシャル。誰も異論はないのか黙っている。

  「では、ソヨギ様は北側へと行ったため、私達は西側と東側に分かれて調査しましょう。私達は西側をガドアさん達は東側をお願いしたいのですが……。」

  「ああ。それで構わない。」

  ハルバが静かにそう言った。

  「我らもそれで異論はない。」

  ガドアや3兄弟も同意した。

  「では、ソヨギ様ならば直ぐに戻られるでしょうから、時間はありません。早速、行動に移りましょう。」

  シャルの言葉を最後に速やかに調査を開始した。

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