自己紹介
梵 悠斗が転生した時、魔王サティアは紫毒大蛇と戦っていた。紫毒大蛇はAランクの魔物であり、この森においては絶対的な強者であると言える。しかし相手は魔王、格が違いすぎた。魔王にとっては、鬱憤を晴らすために殴っているだけ。
殴っている途中、紫毒大蛇が隙を見て、鋭利な尻尾によって右腕を斬り飛ばした。これは魔王にとって、大した事ではない。すぐに再生するからである。
数十分後、多少手加減して殴ってはいたが紫毒大蛇の体力が尽きた。その死体を見て、憂鬱そうに溜め息をつく魔王。そして、さっさと転移して行ってしまった。梵 悠斗が自分の斬られた右腕に転生したことなど知らずに……。
場面は変わり、ソヨギ達は。
森の中で自己紹介をしていた。
「俺の名前はソヨギ ユウト。ソヨギって呼んでくれ。」
俺は、簡単に自己紹介を済ませる。次にシャル。
「私はシャルといいます、種族はケット・シーです。王国の騎士としてこちらの森の調査をしていたところ、ソヨギ様に助けて頂いたのです。」
そして、次はオーク達。最初はオーク達のリーダー。
「我は、ガドアと申します。先の大戦で故郷を失った者達をまとめ、生活してきたのですがその数も段々と減り、今では我々だけとなりました。これからはソヨギ殿のために戦わせて頂きます。」
大戦っていうと、あれか。シャルが教えてくれた5年前の戦争のことだろう。それを生き延びるとは、こいつら結構強いのでは?
「わっしの名前はオルといいやす。わっし達は兄弟で、ガドア隊長に拾われたんすよ。」
「自分の名前はルトです。拾われた後はこの森でずっと暮らしていました。今日は自分達で森の見回りをしていたのですが……。」
「オイラの名前はトア。その途中で意識が途絶えて、気づいたら倒れてたんだ。これからは隊長と兄貴達と一緒に役に立てるよう頑張るよ!」
ほう、こいつらは兄弟だったのか。それぞれだと大した事なさそうだが、連携とかできたら強くなるかも。
最後は人狼。こいつは俺の次に強いだろう。
「俺の名前はハルバ、人狼族だ。職業としてはフリーの傭兵だ。この森に来たのはAランクの魔物を討伐するためだ。」
こいつも目的はAランクの魔物か。そういえば、森羅万象がオーク達を操った術者を突き止めたんだったな。
おい、森羅万象。術者の特定はできたんだろ、教えてくれ。
『分かりました。端的に言いますと、噂されているAランクの魔物と術者は別物です。補足としてAランクの魔物は魔王に殺されました。』
さらっと、みんなが調査しに来たAランクの魔物が殺されちゃったよ。
『そして、術者はダークエルフです。ダークエルフは黒魔法を得意とする種族で人や魔物を操ることに長けています。』
エルフ……。ファンタジーには欠かせない要素だ。そんなに悪いやつじゃ無ければ仲間したいところだ。
……おっと、そろそろ話さないと不思議に思われてしまう。
俺は何か考えてた風に話し始める。
「よし、一通り自己紹介は終わったな。次の話題に移りたいんだが……、Aランクの魔物と術者についてだ。」
みんなが一斉に俺に注目する。ああー、人前で話すのは苦手なんだよ。緊張を体内に押し込み、一呼吸をおく。
「最初にAランクの魔物は魔王に殺された。そして術者はダークエルフだ。」
さっすが俺、説明がとても下手。 それはもう仕方ないか。
「ダークエルフ、この森にもいたのですね。確かに、ダークエルフであれば対象を操ることも可能でしょうね。」
シャルは、ダークエルフの存在は知っているようだ。他のみんなも各々の反応を示している。
「術者がダークエルフって事が分かった。だから、これからそいつと会いに行く。」
「お言葉ですが、それは少し危険では?」
うん、そうだろうね。俺も、そう思う。
「だから、俺だけで行こうと思う。その内に、お前達にはやってもらいたい事があるんだよ。」
「やってもらいたい事ってのは何だ?」
今度は、ハルバが質問してきた。
「いい質問だ、ハルバ君。俺の考えではこの森を当分の間、拠点にしたいと考えている。だからこの森の情報を出来るだけ集めてほしい。」
この世界で情報は大事だ。だからこそみんなには出来るだけ情報を集めてもらいたい。この森にはイレギュラーが多いようだし、不確定な要素は無くしておきたい。
「ここの森はかなり広いようだし、隅々まで調査してもらいたい。」
俺がそう言うと、話を聞いていた全員が頷いた。みんなは特に不満もなく、了承してくれたようだ。
さて、俺はダークエルフの追跡をするか。
《ソヨギ様、お仲間の方々に危険になった時の連絡手段を伝えておいた方が宜しいのでは?》
おっと、忘れてた。確かに伝達手段を決めておくべきだな。
《スキル『系譜』により、スキル『伝達』を獲得しました。また、同様にスキル『系譜』によりお仲間へとスキルを配布しました。》
ありがとう、森羅万象。『系譜』もかなり有能なスキルだな。しかし、それを自動的に使用してくれる森羅万象が一番、有能だ。
これで、危険時も大丈夫だろう。
気を取り直して、ダークエルフの追跡の準備をしよう。ダークエルフは対象を操る事に長けている種族だ。精神干渉を受けないように何か対策しないとな。
《スキル『魔法阻害』を獲得しました。スキル『魔法阻害』はその名の通り、相手の魔法の詠唱の時点で解析し、阻害をするスキルです。》
森羅万象は淡々とそう告げた。
もう、俺がやること無いな。全部、森羅万象に任せておけば心配要らない気がする。冗談はさておき、どこにいるんだろうなダークエルフ。
《スキル『魔力感知』を獲得しました。スキル『俯瞰』と並立利用します。おそらく、この森の中で魔力量が多い物がダークエルフでしょう。》
自分の視界に森の全体が映る。そこに、前の世界で言うところのサーモグラフィーの様に色が付いた。ある一点だけ、色が濃くなっている。ここに居るのが、ダークエルフなのか?
《はい、その通りです。》
距離はそこそこ離れてるな。『飛行』があるからどうにかなるか。
では早速、レッツゴー。




