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月夜に舞う桜へ。の方が行き詰まって3話以降あまり書けてないので、新作品を書いてみました。


この世界は理不尽だ。

ちょっと前まで、というより前国王の時まで男も女も地位は同じくらいだったのに。

今の女王になってから、法が改変され、男の地位は奪われ、今や使い捨てのように戦場に送り込まれている。

俺は、そんな世界が嫌いだった。

そして今、国家転覆を企てたという無実の罪を着せられ、女王の前にいる。


「なぜ国家転覆を企てた?」


「知らねぇよ。俺がやったんじゃない。」


裁判所に声が響く。

今この時代、国家転覆を企てるとしたらそれはただのバカだ。

俺はそう考えていた。

女性が企てるならまだしも、男性なら死刑は免れないだろう。


「ならイルミア。貴方以外に誰がやったと言うのです?」


女王の冷たい言葉が飛んでくる。

ここは少し、試してみるか。

いや、ダメだな。

嘘や偽りは、魔法ですぐに見抜かれる。

そんなので死刑とかになったら、それこそバカだ。


「それが分かれば苦労しないだろう、お互いにな。」


罪状は、王城の壁を爆破したというもの。

それも、様々な資料が置かれている部屋の壁だ。

俺はただ、壊れた壁を横目に、街を歩いていただけだ。

それなのに目撃者から「犯人だ」とか言われて。


「ついてねぇなぁ………。」


思わず口にしてしまう。

この時点で、俺は女王に対して無罪になる為の作戦を仕掛けてみる気満々だった。


「ところでさぁ、“なぜやったか”って、聞かなくても魔法で分かるだろ?なぜ魔法を使わなかった?」


俺の読みが正しければ、恐らく証言だけで開かれたこの裁判に、証拠なんてものは存在していないからだ。

不確定要素しかない人物に、下手に探りを入れて無罪になると、女王の信頼が薄れるからだろう。


「もうひとつ。まだ有罪か無罪かも分からない俺に刑を出して、もし後から無罪が分かれば?あんたらの信頼はほとんど無いようなもんだぜ?」


もっとも、俺を殺すなんてことは、今の設備じゃほぼ不可能だが。

俺が持って生まれた能力は、『メモリーズコール』。

もとは、武器や盾とかを『収納』する為の能力だが、応用することで、一瞬の防御にも使える。

斬首刑はもちろん、銃殺刑や絞首刑も、能力応用で逃れられる。

その他、ある程度の刑なら耐えることができる。


「仕方ない。証拠が見つかるまで、地下牢に閉じ込めておきなさい。」


やはり証拠無しでは殺せない、か。

こんな裁判に意味有るのか?

意味があるのはなんだ、俺が有罪になった時か?

そして俺は、地下牢に入れられた。


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地下牢に入れられて3日。

まだ証拠は見つからないらしい。

出ようと思えば出られるが、脱獄なんてしたら確実に死ぬ。


「なぁ。」


隣の牢の人物が話しかけてくる。

彼は、食い逃げをしたらしい。

食い逃げしただけでこのザマか、とんでもねぇな本当に。


「おまえ、何やらかしたんだ?」


「国家転覆っていう無実の罪。」


「なんだ、無実の罪か。おまえも大変だな。」


なんだ、悪いかよ。

3日も囚われたままで、それも、無実の罪で。

何が悪いってんだ。

どこが大変だ。

それどころじゃねぇよ食い逃げ犯。

こんなんじゃ、剣術の成績トップでアカデミーを卒業した身体が鈍ってしまう。

遠くから、地下牢の石段を降りる足音が聞こえた。

大勢の足音だ。

また誰か連れてこられたな。

ため息をついて連れてこられた奴を歓迎してやろうと思っていた。

足音の主は俺の牢の前で止まった。


「イルミア。出なさい。真犯人が見つかったわ。おまえを疑ったことを謝罪する。私共にできることなら、なにかお詫びをしよう。」


なるほど、証拠を見つけるより先に、真犯人を見つけたんだな。

それなら確かに、俺の有罪を証明するより簡単だ。


「とりあえず、荷物返してくれ。あと、今ここで要求することも無い。だから、俺が困った時に1度でも助けてくれるならそれでいい。」


じゃあな、と言い残して。

俺は薄暗い地下牢を出た。

久々の太陽の光が眩しい。

さて、これからどうしようかな。

とりあえず自由の身になれたんだ、久々にアリスのところでも行こうかな。


「アリス、元気かな…?」


アリスは幼馴染。

今でも頼り頼られる関係だ。

最近は、女性の地位が上がったから、頼られることは減ってきて、長らく会っていないが。

いや、女性の地位が上がったんじゃないな。

男の地位が下げられたんだ。

まぁ、そんなことはもうどうでもいい。

そういえば、敵国のアルマノロでは、最近数十年に1度の剣豪が現れたのだとか。

情報屋が誰かに売っている情報を盗み聞きしたが、どうやら生還は絶望的とも思われる戦場から何度も生還してるらしい。

それも1人で。

そんな人、実在するのだろうか。

そんなことを考えながら、俺はアリスの家へと足を運んだ。


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アリスの家は、いわゆる金持ちだ。

だから、今目の前にある大豪邸を建ててもまだ、赤の他人を養える財力がある。


──少年は幼い頃に故郷を滅ぼされ、妹と少年だけが生き残った。

だから少年は、ずっと妹と二人暮らしだった──


「今やその“妹”は軍の偉い人、か。」


そう呟いて、大きな門をくぐり、アリスの家の敷地へと足を踏み入れた。

昔はよく裏口から入っていたが、流石にもうそれはできない。

俺はドアをノックし、返事を待った。

今日は、屋敷の中が騒がしい。


「はい?あら、イルミアじゃない。アリスになにか用かしら?」


「あぁ。まぁ、そんなところだ。」


玄関から、アリスの姿は見えなかった。

だが、声は聞こえる。

恐らく2階で騒いでいるのだろう。


「ごめんなさいね。アリスは今から、お見合いなのよ。だから、帰りなさい。今すぐに。」


そう答えた瞬間に、轟音が鳴り響き、奥の階段からアリスが落ちてきた。

そして、俺に向かって叫んだ。


「イルミア助けて!」


なにを?

とも思ったが、一応助けることにした。

正直に言うと、ここの警備は敵に回したくない。

ここの警備は、その1つ1つが国宝級の魔術武具の劣化量産版、呪術武具を持っている。

劣化版とはいえ、素が国宝級だ。

魔力的なものは無くとも、それは一撃必殺とも言える。


「もういいから帰りなさい!貴方がいると邪魔なのよ!」


バタン!

ドアが閉まる音がした。

俺は、それをアリスの隣で聞いていた。

投幻回避術。

俺が学んだ回避術の1つだ。

人間は、誰しも魔力を持っている。

その魔力をどのように使うか、それで魔法を使えるかが決まる。

俺の場合、能力の影響で自身の身体強化にしか魔力を使えない。


「あら、魔法を使えないはずの貴方が、いつそんな技を覚えたのかしら?」


そう、俺は魔法を使えない。

だが、投幻回避術は魔法ではない。

自身を一瞬非実体化し、攻撃などを回避する。

つまりは一瞬の身体強化なのだ。


「まぁ、欠点があるとしたら、武器が多ければ避けきれないってとこか。」


この術は欠点が多い。

が、利点も多い。

例えを挙げれば、少しの距離なら1秒も経たないうちに移動できることだ。

1対1の近接戦闘において、この術を破ることはほぼ不可能に近い。

逆に欠点は、この術から攻撃には繋げられない。

防御特化の術という訳だ。


「私に歯向かうつもりなのね。いいでしょう。…場所を変えましょう。貴方の血で家具を汚すことは避けたいわ。」


俺の後ろから、アリスが心配そうな声を出す。


「イルミア。お母様、レイピアの腕前は王国一の剣士にも負けない程なのよ?それなのに…」


「心配してくれるのはありがたい。だけどな、アリスは飛び級で卒業したから知らないだろうけど。俺、アカデミーでの剣術の成績、ダントツでトップなんだよ。」


だから、心配要らねぇよ。

俺は負けない。

負けられない。

どれだけ相手が強かろうと、逃げてはいけない。

逃げたくない。

本来なら、敵に回すべきでは無いのだろうが。

いや、俺自身が敵にしたくないだけか。

能力が俺に語りかける。

おまえはどうしたいのだ、と。

能力がまた、語りかける。

イルミア、おまえなら勝てるだろう、と。


「うるせぇよ。どうしたいかなんて、あんたらには関係ないだろ?」


能力に、いや、違うか。

能力の中に眠る『魂』に反論し、俺はアリスの屋敷の外へ出た。

そして、アリスの母、マリアと対峙した。

不敵な笑顔を浮かべた俺に、


「何がそんなにおかしいのかしら?」


マリアが聞いてくる。


「いやぁ、久々に強い人と手合わせ出来ることが嬉しくてね。」


嘘だ。

本当は、勝てるかも分からないこの勝負、絶対的優位にあると勘違いしてるマリアが、滑稽でならないのだ。

もちろん、俺だって勝てるかどうかなんて分からない。


状況が悪くなったら、引き分けに持ち込むか?───そうだな、せめてその自慢のレイピアを折るくらいは出来るだろう。


殺せもしない臆病者のクセに、どうやって勝つんだ?───殺さずに勝つさ、死ぬ程痛いだろうがな。


相手は常に『最善の手』を打ってくる。『最悪』を想定しておけ。───あぁ、分かってる。


自問自答を終え、目を開く。

マリアが俺を睨み、レイピアを引き抜いた。

常に『最悪』を想定し、こちらは相手が予想すら出来ない至高の手を。

なら、ここは何をすればいい?

答えは1つ。

空間転移の能力を持つ剣、『シフトブレード』を使う以外に手は無い。

いや、そもそも剣を使わずとも、避けまくってりゃ勝手に疲れてくれるか?

だが、避けるのはマリアの想定内だろう。

それに比べ、シフトブレードは、『ソウルメモリーズ』。

今までほとんど使ってこなかったから、分かるはずが無い。

それに、まさか俺自身ではなく“剣に”能力があるだなんて、誰が思うだろう。


「始めましょう。あまり時間を掛けたくないわ。」


「あぁ。そうだな。」


ここまで来たらもういいだろう。

考えるのはもう止めだ。

俺は、封印から目覚めて間もないシフトブレードを“コール”した。

そのコールに、迷いなどなかった。


月夜に舞う桜へ。の方も書きつつ、こちらも書いていこうと思います。

投稿ペースが不定期な上、とてつもなく遅いです。ごめんなさい。

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