第一章 1 出来そこないの娘
ネナは出来そこないの娘だ。
生まれは代々召喚魔術の能力が高い血筋と讃えられるシューミレー家。ネナはシューミレー家五番目の子として生まれた。
誇り高きシューミレー家は産まれて産湯に浸かるまでに、その血に魔力が宿っているか特殊な魔石によって調査される。万が一、魔力の宿っていない子が産まれればその場で密かに息の根を止めて死産として処理された。
それはシューミレー家を名家たらしめる為の犠牲であり、そうする事でシューミレー家は幾百世代もの間、召喚魔術の技術と力を高水準のまま守り通してきた。
ネナは高い魔力を持って産まれてきた。上の兄弟姉妹達よりもずっと保有する魔力が高かった。だが、その高すぎる魔力保有量をコントロールする術を持たなかった為、毎日のように大なり小なり事件を起こした。
兄弟姉妹達が小さな犬や猫のような可愛らしい精霊を召喚し始めた頃、ネナは地平線の彼方から暗雲を呼び出し、その暗雲は飛行モンスターのベビーデーモンの群れを産み出し、シューミレー家総動員で退治するという事件が起こった。
兄弟姉妹達がやがて自分達を守護する為の力を持ったヒト型精霊を召喚するようになった頃、ネナは屋敷の三倍は超えるであろう大きさのアイアンタイタンを召喚して屋敷を半壊させた。
アイアンタイタンは、ネナの高い魔力を使い切るまで暴れまわった後霧散してしまったが、この事件は巻き込まれた旅の商人によって一躍王国まで知れ渡ってしまい、シューミレーのスキャンダルとして家名に傷を付ける事になった。
この事件を切っ掛けにネナは、国中の見知らぬ人々から『力を律する事の出来ないシューミレーの娘』だとか『シューミレーの出来そこない』等の烙印を捺され、その存在は隠されるようにシューミレーの領地の東の果てにあるコソゾリ地方に追いやられた。
ネナ・シューミレー。
その当時5歳になったばかりだったのその少女は、人目に曝された事の無い氷河のように冷たいアイスブルーの瞳に、夜の森より暗い髪をざらりと伸ばした、笑わない娘だった。愛された事のない娘だった。出来そこないの娘だった。




