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僕の皮肉な冒険譚  作者: リンゴ
第一章
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道中記その4

淡いブルーの空を僕は荷台の窓から見上げてるとグレー色の厚い雲が周囲に広がり始めていた。

晴天からの曇天、一気に曇り始めた景色に僕は遣る瀬無さを感じながらも馬車は目的地に向かい動き続けた。

雨が降りそうな天気なので一度レイヤさんは、レインコートを着にドアを開けて荷台に入った。

木張りの床は軋む音を立てる、着替えている間、操縦するのはヴェーンだ。

曇天の空を見やるヴェーンは軽く毒を吐いてから、操縦席に座り操縦する。

レイヤさんが交代する時はもう森を抜けて、港の姉妹街である、

『スター・シサード」が見え始めた。

海風の潮の香りはまだしない、そして雨が降り始めた。

荷台の屋根からはポタポタと雨音が聞こえる、 その騒がしい音からか奴隷少女は目を覚ました、呑気にのんびりと欠伸をかいて口元を左右に揺らして伸びをして、目を見開いた。

「____」と少女は立ち上がって、周りをキョロキョロと見渡す。

さっきいた場所とは違うのだ、驚くのは仕方ないだろう、最初此処はどこなのだろうと思い、見渡していたが、僕達の姿を見て、

少女はへたり込んで座り、ヴェーンは心配そうに少女に近づいた。

やはり、ヴェーンは何かと少女を気に掛けているように感じる、若しかして少女が好きなのか? と皆目見当が付かない僕は露骨に失礼な事を考えて、失礼だと思い直して頭を振った。

ヴェーンは、さっきレイヤさんに渡された木櫛で髪を軽く優しく崩さないように梳かしてあげる。

とニィィと純粋な笑顔をヴェーンに向けて優しく微笑んだ。

なんと言うか父と娘の様な幸せなで暖かい構図の様に見えた。

馬車は、急に動きをゆっくりとさせる僕はなんだろうと窓から顔を出すとどうやらスター・シサードに着いたらしい。

スター・シサードの門には検問があり、そこに並ぶ数台の馬車があった。

スピードはもっと遅くなり次第に止まった、

検問をするという事は持ち物調査があるということだ、

ヴェーンは一早く気づき、梳いていた手を止めて被っていた大きな帽子を少女の頭に乗せた、貫禄あるカウボーイ帽子を年端のいかない少女がつけている姿は、はっきり言って凄く異様だった。

順番が来て、目的は何かと聞かれたレイヤさんは、簡単に説明をする、憲兵は荷台に近づく、レイヤさんは僕達の事を軽く説明すると

納得した様子で、何も言わず案外楽にすんなりと門を潜らせてくれた。

そしてゆっくりと馬車は動き、レンガで作られた家が立ち並ぶ、大型の街へと僕達は吸い込まれていった。

「___ヴェ...ン」とカウボーイ帽子を被った少女はヴェーンを呼んだ、

「なんだ? 」少女は小さくなって、恥ずかしそうに

「______少しだけ、言葉、思い出した」と拙く発する言葉は確かに僕達の言語だ。

僕ははっきり言って驚いていたが、皆の表情は変わらない、ヴェーンは小さな声で僕にアドバイスをした。

彼女も奴隷の一人なんですよ、言葉が無いと働けないでしょう。

僕は納得いき、顔を戻す。

その間にヴェーンは、頷き無理に思い出さなくて良いと言って、少女の頭に乗せていたカウボーイ帽子を返して貰い、少女の隣に座って、帽子を買う約束をした。


僕達の着いたスター・シサードの、

街の中心には大きな噴水のあるが広場に有り、その隣には馬車を停泊、出来るほどの大きな停泊場が有り其処に僕達の馬車を止めた。

相変わらず雨が止まない、寧ろ増して来ているように感じた、レイヤさんは馬車を屋根付きの停泊場に置き、ドアを開いて荷台の中に入ってきた。

僕は薄暗い荷台を火のついたランタンで照らす。

レイヤさんは、余って封の空いていない木箱は売ってきたらどうかと聞き、僕もお金は少しでも余裕があった方が良いと思い、せっせと開けていない荷物を纏めると、

ヴェーンは、一度チーム分解して換金して来る奴と待ち人になる者を決めた方がいいんじゃないか? とヴェーンが提案して一度、チームは解散となった。


降り続けていた小雨は止んで、蒼天に移りつつある、この町は少し寒気がした。

僕達は、寒気のする寒い道で物の換金をする為に銀行をへと向かうの途中、レイヤさんは奴隷少女の話をした。

「_____彼女を加えて叔父様の家に向かうのはリスキーなのでは?」とお節介焼きの僕ら二人を心配する様なあの日見せた慈愛の瞳で僕に瞳のナイフを指す。

僕は少し汗を出して黙ってから、僕は

「僕が僕である為に僕が僕である限り、不幸な人を見捨てたりは出来ないよ」 僕が、自分が恥ずかしい人にはなりたく無いと本心を出すとレイヤさんは人はそれを偽善と呼ぶのですよと毒を吐いた。

出店の芳しい肉の焼ける香りと弾ける油の音がする、この悪天候の中で良くやる人がいるなと僕は軽く感心し、で店の看板には一個、銅貨十五枚と書かれている、意外と価格が安いな、換金したら四人分、買って帰ろうと考えつつ、換金処に着き、金属の飾りのついたドアを開けた。

鈴の音がする、ドアの近くにカウンターが一個あり、人の受け付けが僕達の持っている品を聞いた。

レイヤさんは、赤ワインと生ハムと返すと受け付けは声を上げて笑った、

「此処は質じゃないんだぜ? そんな消費物を受け付け出来る程、儲かってない商売じゃないんだぜ」と爆破する様な勢いで僕達を思いっきり嘲笑した。

レイヤさんは腹が立ったのか早走りで近付くが、特に怒鳴りつける事もなく、僕にはに聞こえない程小さな声で何かを言うと、受け付けは目を左右に持って来て交互に彼女と換金物を見遣った。

冷や汗をかいて先程の無礼を詫びて握手をして恥じた、僕は頭の向きをレイヤさんに向けて静かに思う、レイヤさんは一体どんな事を言ったのか、どんな恐ろしい事を口走ったんだと、一人畏まって考えるが、答は浮かばなかった。

換金は順調に進み、数分で終了した。

したり顔のレイヤさんは、キャッキャと嬉しそう、まあ金貨が十五枚も増えたのだから僕もすごく嬉しい。

僕はレイヤさんに何を言ったのかを聞くと僕達が換金したハムとワインの話をした。

「____私達が持ってきた食料品は、厳選された物だと説明しただけですよ? ハムは稀少な香辛料をふんだんに使った貴重品。 安酒と言ったワインも今まで出した中では安いだけですと言葉を返して納得する。

僕は、そのままで足を運び、観光客用の洋服店の中に入った。

其処で、少女用の帽子を買う事にした。

「____ちょっと、少女用に小さな鍔のある帽子が欲しいんだが」 店内に入り、多種多様な帽子を選びかねた僕達は、受け付けに注文すると、初老のおじさんは、立ち上がり僕達を案内した。

そして至った答は、この大きな麦わら帽子を買うという事だった。

僕達は、顔を隠す用の鍔のついた麦わら帽子を買い、其れをプレゼント用に外装をつけてもらう、意外と大きい。

その場を後にした僕達は、買うことを決めていた出店で昼食を買い、僕達の荷台に帰ってきた。

「____結構、浮いた顔してるぞエリック。....てか、その脇に挟んだものはなんだ?」帽子と問いを返して僕達は荷台に乗り、袋に詰められたジャンクフードをヴェーンに渡して、座った。

僕も一つ、ボリュームのありそうなジャンクフードの外装の封を開けると、僕の予想とは大きく異なった。

「____おお! コレってトルティーヤじゃないか」 よく分からない僕に、ヴェーンは簡単な説明をした。

「____トルティーヤってのは、ここを南に行った処にあるキサス・コシメテキって街のポピュラーな料理だ」僕は、トルティーヤをもう一度見て、其れを齧った。

柔らかい生地に挟まれた数種の野菜と熟成された肉の味、辛味と酸味の効いた特製ソースが口に広がる。

「____美味しい」 もう細かい事を気に出来るほどの理性はなかった。

礼儀とか作法とか、そんな細かい事を気にはせずただ皆黙って、これを食した。


僕達が食べ終わり、ヴェーンは差し出された品の外装を引っぺがす、察しはついていたらしいので驚きはしない。

ジェスチャーで、ヴェーンが贈ってやれと合図して、やや緊張気味な顔をして帽子を少女にやった。

人に、食事以外のものを与えられたのは久しぶりだったらしい少女は嬉しそうな顔をして驚き、感嘆の声を上げた。

こうして、僕達に対しての信頼度が上がると同時にまた、雨が降り出したのだった。

「レイヤさん、今日はここから出ずに明日向かうことにしますか? 」

「____そうですね、まあヴェーンさんもあの子もお疲れの様子ですし」 まあ、今日は特に問題が発生することは無かったが、其れでも疲れるものは疲れる。

「処で、この子。 本来の名は無いんですか」

「____忘れてしまったらしいですし、自分は名に対して思い入れも無いと」

「そうですか...じゃあ、僕等が名を付けるとかはどうでしょう、もしも目をつけられていても他の名ならば多少は誤魔化しも聞くだろうし」とあの子も呼び名があった方が良いでしょう? と提案するとレイヤさんはやれやれと手を出して、戯けてから了解して案外ロマンチストなヴェーンと一緒に案を出し始めた、そして、晩になるまでこの名前の案は終わらなかった。

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