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僕の皮肉な冒険譚  作者: リンゴ
第一章
4/6

道中記 その3

俺は、早朝、体に取り巻く倦怠感と気持ち悪さで目を覚ました。

昔から、酒に弱い俺は、急いで立ち上がろうとするのだが、倦怠感からか身を起こすのに数十秒を労した。

俺は咳き込みながらも大きく息を吸い込み荷台から、降りて森の中に身を投げた。

「______ああ、クソッ 相変わらず俺って酒弱いな全く」 昨日の盗賊団からの猛追から逃げ切った高揚感からの行動を恥じて、タオルで口を拭いた。

そしてゆっくりと大きく息を吸う、心地良い涼しげな風と大きな木々の揺れる音が周囲に響く。

その木陰から、小さな人影があった。

俺は腰に下げた、刃渡三十センチ程の長剣を鞘から引き抜き、横に据えてその影に近付いた、木々の無い比較的、人が通れる道から離れて、木漏れ日が地面に刺す森の中へと俺は、同行者と呼べるエリックとレイヤに何も言わずに森の中へと吸い込まれていった。

森はより一層、大きな音を出す。

俺は、人影があった場所へと急ぎ足で近づくと一人の人間の姿があった。

服はボロボロで足には血が流れている。

出血は止まっているが、止血もせずに走って来たのだろうかもう既に息が上がっていて、力尽きる寸前と言ったところだ、目は怯える様にし、小さな声が助けを請いた。

俺は抜き身の剣を鞘に収めて、葉の色をしている髪の少女に

「_____おい、どうした? 」と割と親身になって腰を下ろして少女に聞いた。

だが最初、彼女は意味が分からない様にしていたが、彼女は必死に状況を伝えようと片手を俺に突き出す、その片手の肩には見慣れない焼印がされていた。

「____奴隷なのか」俺は少し待っていろのジェスチャーをして、首にかけたキツい酒を傷口にかけた。

「____ック」 奴隷少女は苦悶の表情を浮かべてはいたが、逃げようとはしなかった、俺は腰のポーチに入った包帯を彼女の傷口に押し当てて巻いて、サムズアップを混ぜたジェスチャーをすると、感謝するように目を細めている。

幸い、人を怖がる程の酷い事はされていないらしく、俺はこの子を担ごうとした。

「____ カノスハナアデタノタヲシワレルクテケスタ?」 俺には分からなかったが、一応頷き、安心させるように目を離さない様にして手を握ろうとするが、彼女はやはり人が強いのだろう、殆ど無意識に彼女は後ろへと体を引きずって逃げる。

足にまた、木で引っ掻き傷を作った少女の頭を埒が明かないので、掴んだ。

少女は紙のように軽かった、

きっと、ここ数日間水も食い物も碌に食っていないのだろう。

俺は暴れる少女の頭を離してやり、腰のポーチに収まった一個の丸薬を少女に渡す、と少女は良く分かっていない顔をしているので、コレを飲むようにジェスチャーをする。

少女は、怪しげな顔を崩さないので毒味役替わり俺が口の含む。

固い丸薬は口の中の水分でどんどんと様変わりして行き無味無臭だった丸薬はどんどんと花の香りと甘みが出てくる。

ちなみにこの丸薬は元々、お湯などを入れて抽出して飲んだりするものなのだが、これは乾燥しているだけで渋みも無く、食べれるので面倒な時やお湯を作るときが面倒な時良くやる俺の食し方だった。

ジェスチャーで大丈夫と伝えて、少女に一個渡すと少女は其れを俺と同じように口に含み、甘い花の香りと味を味わった。

そして、美味しかったのかサムズアップして、僅かながら信用してくれたのだろうか、俺から後ろに後ずさって離れようとはしなかった。

何時迄も森の中にいたら、彼奴らは勝手に目的地に向かって行ってしまいそうな気がしたので紙のように軽い少女を背中に担ぎ、数歩で出れる森の入り口から出ると、起きたのかそれとも近くにある異臭で目が覚めたのかよく分からないが、好青年のエリックは俺に手を振って、朝の挨拶を言った。

俺は適当にに返して、まずは背中に背負ったこいつの話から始めるのだった。


ヴェーンは早朝、森の中で人影が近づいているのを感じて、僕らには何も言わず確認しに行ってくれたらしい。

そしたら、炭鉱や首都などでよく使われる作業員、所謂。

奴隷と呼ばれる少女を発見したらしい。

僕は、レイヤさんにどうするかを今後のこの子をどうするのか、考えを委ねてから、少女に挨拶をした。

こんにちはと挨拶をし軽く自己紹介をするが通じていない、異国の地から此処に連れてこられたのだろうか? 人に対して警戒心が高く有るように感じる、とレイヤさんは僕に近付き彼女に解読不明の言葉を投げかけると急に理解した様に目を輝かせた。

そして耳に口を近づけてコショコショと話して離れ、ヴェーンの陰に隠れた、

「____どうやらこの子は奴隷船へと強引に乗せられて、ここに来たらしいです」とレイヤさんは、僅かに悲痛そうな顔をしてから、簡単に彼女の経歴を話してから、彼女を一時的に保護するのはどうかとご主人である僕に聞いて来た。

勿論、人が多くいる方がより良いし、此処は危ない輩も多くいる山賊の森が近いので、了解してから、少女に何か美味しい食事を作るようにレイヤさんに言ってから少女引っ付くヴェーンに近づいた。

「結構、あんたも人が良いらしいな」と軽口叩くヴェーンの肩を軽く叩くと、クスクスと彼は気楽そうに笑った。

レイヤさんは、サンドイッチを作りヴェーンがくれた丸薬を抽出したお茶を少女に渡すと、彼女はレイヤさんに軽く礼を言ってから食べ始めた。

レイヤさんは抽出された薄い黄色のお茶を僕に僕とヴェーンに渡して僕達のすぐ隣に座った。

「____実は、先程あの子を事を説明した時に一つだけ言うの躊躇ってしまった部分が有るのですが、話していいですか?」一度確認と一拍をとり、僕達は頷いたのを確認して彼女は続けた。

「____あの子は、どうやら女王陛下直属の貴族騎兵団の一人が娼婦として買ったらしいんです」と僕はそこで理解した、この子がこんなにも薄汚れで助けを請うことも出来なかった事も、

騎兵団とはこの国に最大の剛の者が入る孤高の兵団。

きっと助けてくれた人達は一人残らず殺されたのだろう、其れを見た物は助けを請う少女を見なかったことにして見捨ててきたのだろう、そして信じる事を少女は辞めたのだろう。

最初に同情の念が湧いた、次に恐怖を感じて、最後にこの世界の残忍さを感じた。

ヴェーンは押し黙り、美味しそうにサンドイッチを頬張る少女を担いで、胡座をかいた足の上に乗せて優しく抱きしめる。

純真無垢の少女は、何も思わずにただ黙って、サンドイッチを完食した。

「____こいつの名はなんだ」ヴェーンは少女を優しくあやす様に抱きしめながらレイヤさんに少女の名を聞いた。

「オンディ ライダンとこの子は私に名乗ってはいましたが其れはきっと商品名としての呼び名だと思います」と安心したのか、お腹が一杯になったのか寝息を立てている少女にレイヤさんは近づいてポケットに入れていた木櫛で森の色をした髪を梳かす。

「____つまりはその名で呼ばない方が良いのか? 」とヴェーンは聞き、そうですねと割と集中して髪を梳かすレイヤさんは返す。

「_なんと言うべきか、こいつも年齢の割には修羅場を通ってきたんだな」とヴェーンは寝ている少女をレイヤさんに預けて、呼び名を考えると言って荷台の中に入って行った。

その顔はとても悲痛な表情だったが、僕には何かを決意した顔にしか見えなかった。


何時迄もここに停滞している訳にも行かないので僕達は、寝ている少女の名を考えつつ移動する為の準備を始めた。

レイヤさんは、既に荷台に乗ったヴェーンの事は特に気にせず、荷台にもたれる様に少女を優しく乗せてあげる。

一方、ヴェーンは抜け殻のように静かに深く何かを考えているようで僕の受け答えに一切の反応を示さない。

でも、寝かしつけた少女の場から離れようとはしなかった。

「____さあ、ご主人。 出発するとしましょうか」とレイヤさんが聞き、僕が荷台の窓から手で了解とジェスチャーすると彼女は馬を走らせた。

僕達が向かっているアエートルジュは馬車だけでは着くことが出来ない。

何故かと言うと、アエートルジュは円形の内海を挟んだ先にある街だからだ。

「____このまま、何事無く走らせれば明日の昼までには着きそうです」

「ところで、お前らは何処を目標に走っているんだ」と抜け殻だったヴェーンはレイヤさんに聞き、アエートルジュに向かうと返す。

成る程、と軽く相槌を打ってから言う。

「____俺ら四人があの内海の船に乗るには、金貨三枚が必要だけど大丈夫か?」と生々しい金の話をし始めた。

この国の金銭は、金貨、銀貨、銅貨の三つのみでその最高にランクに属すのが金貨だ。

その金貨が三枚必要となると結構な値を指すのでレイヤさんに残金を聞く、

「______今、僕達が持っている金貨って何枚でしたっけ?」

「えっと、五枚です。 後、銀貨が十五枚程で銅貨は数え切れない位です」

「____うわっ 結構な少ないな。 この馬車って結構でかいから、多分デカイ観光船とかじゃないときっと入れないぜ?」レイヤさんは良い、ヴェーンは僕を焦られるような事を口に出す。

馬車は右へと進路を変える、数は少ないが人の居る街へと着いたらしい。

「____レイヤさん見てください、人が居る街に着きましたよ」と言うが馬車は足を止めなかった。

そして僕達は、港までの航路を順調に進むのだった。

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