恋人と結婚
ヴィヴィが金龍のジラルドの屋敷で働くようになって、四年が過ぎた。
ヴィヴィは今では15歳の美少女へと成長していた。
年頃の彼女は結婚相手を探していた。
狙っているのは、ジラルドの後輩の騎士たちだ。
顔はほどほどに格好いいのが揃っていて、地位も収入も申し分ない。
あとは性格さえ良ければヴィヴィ的にはオーケーだった。
「あんたならもっと上も狙えるのに」
メイド仲間のミーナが言う。
そういう彼女はジラルドを狙っている。
「あんまり高望みするのは良くないよ」
「けど、どうせなら、ジラルド様みたいな男と結婚したいじゃない」
夢見る乙女の顔をするミーナを、ヴィヴィは醒めた目で見ていた。
「ジラルド様みたいな人は、貴族のご令嬢と結婚するんじゃないの?」
「……ヴィヴィってば、夢がない」
「夢ばかり見てると嫁き遅れるよ」
「そうかもしれないけどー」
ミーナは不満げにぶつぶつ言っている。
そんな彼女を、ヴィヴィは羨ましいと思っていた。
(ミーナはいいわよ。龍族だからいくらでも時間はあるもの。でも私は急がないと、あっという間に年老いてしまう……)
龍族と人族では寿命の長さが違うのだ。
だから龍族のように、気長に相手を探している時間はヴィヴィにはないのだ。
こんな時、ヴィヴィは龍族が羨ましいと思う。
もしも自分が龍族だったら、もっと長い時間をかけて好きな人を見つけて結婚するのに。
でも龍族と結婚してしまえば、人族でも同じ寿命を得られるのだ。
それを知ってからというもの、ヴィヴィは結婚できる年齢になったらすぐに結婚しようと相手を探していた。
けれど、どうも上手くいかない。
出会いがないわけではないのだ。
けれど、良い雰囲気になると必ずと言っていいほど邪魔が入るし、その後もなぜか全く進展しない。
恋愛関係になってから求婚するのが当たり前の龍族が相手では、とにかく恋人を作らなくては結婚できない。
ヴィヴィは焦っていた。
美少女の彼女は嫁き遅れる心配はしていなかったが、寿命のことを考えるとなるべく早く結婚したいと思っていた。
もうすぐ人族が結婚可能な16歳になるのだ。
それまでに恋人を作るはずだったのに、今だに狙う相手も定まらない。
このままでは、結婚の予定がどんどん遅くなってしまう。
(高望みなんてしてないのに)
なのに、どうして恋人ができないんだろう。
もっと望みを低く持つべきか、ヴィヴィは真剣に悩んでいた。