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犬《チビ》

 放課後のチャイムが鳴り、今日も大嗣たいしは空き教室にやってきた。

「こんちは・・・は?」

『ワン!!』

 教室に入った大嗣を一番最初に迎え入れたのは、先日の捨て犬だった。

「あったいちゃん。おっす!」

 元気に手を挙げあいは言った。

「おっす!じゃないですよ。なんで犬がまた居るんですか?」

「それがね~分からないんだよ・・・私がここに来たらもう居たんだから」

「はぁ?そんなわけないでしょ」

「本当です~」

 信じていない大嗣に対して頬を膨らませて怒った素振りを会はした。

「でも・・・」

 にわかに信じられるものではなかった。捨ててあった場所に戻した犬が翌日学校の門や玄関を抜けて、四階の奥のこの空き教室まで侵入してきたなど。

「本当なの~信じてよ~」

 信じてもらえないのがよっぽど悲しかったのか、目に涙を浮かべて大嗣の事をポカポカ叩いてきた。

「い、いたいです・・・分かった、信じますから・・・やめてください」

 それが思いのほか痛かった為、大嗣は信じることにした。でないとずっと叩かれ続ける気がしたからだ。

「でも、だったらどうやってこいつは入ってきたんだ?」

「さぁ~・・・」

 腕を組んで会は考える仕草をする。

「そうだ!もしかして瞬間移動したんじゃない!?」

「は?なに言ってるんですか?」

 自信満々に声を上げる会をバカにしたように大嗣は言った。

「だから、拾ってくれた私に会いたいと願い続けたこの子に不思議な力が宿って・・・」

「で、ここに瞬間移動したと?」

「そうそれ!」

「ないですね。漫画の読み過ぎです」

 一蹴した。特に感情も込めずに心無く会の考えを否定した。

「ガフッ・・・」

 会はその場に崩れ落ちた。

「じゃあ、こういうのはどうっすか?」

 突然、鶴美つるみが挙手をして声を上げてきた。

「なんだ?」

「今日ここに来た時、窓が開いてたんすよ。だからジャンプして入ったんすよこの子は!」

「ここ・・・四階だぞ」

「犬の身体能力を舐めちゃいけないっすよ」

「猫でも無理だな」

 ジャンプするイメージがあるのは犬より猫だ。なので、猫でも無理と言うのは犬じゃ絶対に何がっても無理と言う意味になり。

 つまり、遠回しに鶴美の意見を論破したのだ。

「カハッ・・・」

 鶴美もその場に倒れた。

「今度は私だね」

 今度はそらだ。

「いや・・・別に大喜利大会じゃないんで、無理に意見出さなくても」

「・・・・・・?」

 十二分に間を取った後、ついに言うのかと思ったら空は首を傾げてしまった。

「なにも浮かばなかったんかい!」

 今まで特に興味が湧くことなく、心無く意見を否定してきた大嗣も今回ばかりはさすがに盛大にツッコんでしまった。

「誰一人まともな意見出さないな・・・」

 大嗣が呆れていると、後ろでドアの開く音がした。

「ちーっす」

 入ってきたのはあらただった。

「あ、新さんこんちは」

「どうしたんだ?みんな。おっこいつまだ無事だったのか~」

 犬を見つけた新が撫でながら嬉しそうに言った。

「え?知ってるんですか?」

「いやだって、俺が入れたからこの犬」

「「「「・・・・は?」」」」

 女子三人と男子一人の声が見事にハモッた。

「今日学校来た時に校門のところで寂しそうにしてたから・・・・連れてきちゃった」

 てへぺろっと舌を出してウィンクする新に若干大嗣は引きそうになったが、女子三人は違ったようだ。

「あらた~」

「な、なんだ?」

「「「お前!よくやったなぁ~」」」

 そう叫んで女子三人は新に飛び乗り、ぐしゃぐしゃにいじくった。

「な、何だこれは!?褒めてるんだよな?」

 第三者の目から見るといじめられているようにしか見えないが、実際女子三人は新を褒めちぎっている。


 結局、犬は今日誰にもばれなかったことを良いことにこの空き教室で飼うことになった。(女子陣の独断で)

 ちなみに名前は「チビ」になった。

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