犬と猫
「犬と猫、みんなはどっちが好き~?」
いつもの放課後。静寂を切り裂いたのは会だった。
「え?どうしたんですか?急に」
「いいから!どっちが好き!?」
「え~・・・そうですね、やっぱり猫ですかね。癒されますし」
悩みに悩んで大嗣は答えた。
「私は犬っすね!今も飼ってるし、散歩が楽しいんすよ!」
「つるちゃんは犬と競争しそうだね」
「何でわかるんすか!?エスパー?」
「するのかよ・・・・エスパーじゃねえし」
大嗣は冗談のつもりで言ったのだが、見事に的中させてしまったようで鶴美驚きの表情をしている。
「私は猫かな」
「ですよね。さすが空さん分かってらっしゃる」
「仕草がいちいち可愛いんだあの子たちは」
「そうなんですよ!」
しばらく大嗣と空の間で猫の話が止まらなかった。
「俺は・・・どっちでも」
「はいはい、つまらないなお前は」
新はこれ以降話に入ることを許されなかった。
「で、会さんはどう何すか?」
「そ~だね~私は犬かな~」
「お~一緒っすね」
会の回答に嬉しそうに鶴美は言った。
「犬なんて面倒くさいだけじゃないですか。何かと絡んでくるし、散歩行かないといけないし」
「その散歩が楽しいんじゃないか!」
大嗣の言葉に空かさず会は反論した。
「その点猫は大人しいし、手がかからない。抱っこしたり撫でたりすると気持ちいいし」
「でも猫は夜中に暴れ出したりするっすよ」
今度は空の言葉に鶴美が反論した。
しばらくこの討論会は続いたがお互い一歩も譲らず、結局どちらも素晴らしいで幕を閉じた。
「そう言えば、なんで突然この話題を?」
大嗣は会に訊いた。
「え?と、特に理由は無いけど・・・」
そう言って、会は目を逸らした。
それが気になった大嗣は会の視線の先を辿ってみた。するとそこには見覚えのない箱が置いてあった。
「・・・・」
しばらくその箱を見ていると、カタッと一瞬だけだが確かに動いた。
「あの・・・あの箱」
大嗣がそう言った瞬間。会はあからさまにビクッと体を震わせた。
「え?なに?どの箱かな~?」
会の顔にはすごい量の汗が出ていた。
「いやいや、分かってるでしょ。その箱ですよ」
「ああ、これ?これがどうかしたの?」
「動いたんですけど」
「な、なに言ってんだ~たいちゃんは~箱が動くなんて・・・」
『ワン!!』
何でもない箱だと必死で弁解していた会の努力をぶち壊す鳴き声が箱から聞こえた。
その瞬間、会の顔にはさらに汗が噴出し始めた。
「ま、まさか・・・会さん?」
「・・・・・すみません」
たっぷりの間を開けてから、観念した会が謝り、事情を説明し始めた。
「つまり、学校に来る途中で捨て犬になつかれてしまって、ここまで持って来てしまったと・・・」
「そういうことです・・・」
正座をさせられている会は首肯した。
「で、どうする気ですか?」
「ここで飼えないかな?」
「無理ですね」
大嗣は即答した。
「いや、でも・・・」
「戻してきなさい」
くい気味で、有無を言わさず大嗣は言った。
その後、しぶしぶ戻しに行った会を見送ってこの日の活動は終了した。