レンジャー
「ちわーっす」
大嗣はあいさつしながらいつもの空き教室のドアを開けた。
そして閉めた。
ドアを開けて目の前に謎の赤レンジャーがいれば、そうせざるを得ないだろう。
「なんだったんだ・・・今の」
「どうしたんすか?」
「おわっ」
謎の赤レンジャーのことを考えすぎて背後にいた鶴美に気付かなかった大嗣は声をかけられ驚いた。
「何すか?なに驚いてるんすか?」
「いや・・・すまん」
「入らないんすか?」
「いや・・・謎のレンジャーが」
「なに言ってんすか?入りましょう」
鶴美は笑いながら大嗣を急かしてきた。
「お、おう」
意を決して大嗣は再びドアを開けた。
増えていた。赤だけでなく、さっきまでいなかった青と緑もそこに立っていた。
「増えてるぅぅ!!?」
大嗣は叫んだ。今この場で思いついた言葉をただ叫んだ。
「なに叫んでるんすか~?」
「いやいや何言ってんだよ?・・・この状きょ・・・はああぁぁぁ!!?」
振り返って鶴美の方を向いた大嗣の目に飛び込んできたのは黄レンジャーだった。見事な早着替えで鶴美は黄レンジャーになっていた。
「な、何やってるんですかみなさん!?」
驚き疲れた大嗣は観念して訊いた。
「なにって・・・レンジャーごっこだよ!」
赤レンジャーもとい会が元気よく答えた。
「子供ですか・・・」
「君のもちゃんとあるよ」
「いや、俺はやらないですよ・・・っていうか何でおれピンクなんですか!?」
大嗣に手渡された衣装は女子が着るべきであろうピンク色だった。
「大丈夫。それは男子用のピンクだよ~」
「絶対嘘です!ほらスカートのヒラヒラついてる」
大嗣の言う通りピンクの衣装の腰の部分にはスカートのようなヒラヒラがついていた。
「ごちゃごちゃ言わずにやろうぜ」
緑レンジャー改め新が言ってきた。
「じゃあ、新さんがやってください」
「断る!なぜなら私は緑レンジャーだからだ!!」
完全になりきっていた。
・・・・ダメだこの人。
大嗣は呆れてものが言えない様子だった。
「じゃあ、青レンジャーやるかい?」
青レンジャーの空が「やれやれ」と言ったような感じで言ってきた。
「良いんですか!?」
「だがその場合、女子高生の脱ぎたての服を着ることになるんだが・・・覚悟はできてるかな?」
「・・・・ピンクで行きます」
口にするのも恐ろしい参事を想像してしまった大嗣はあっさり諦め、ピンクレンジャーを引き受けた。
この日はレンジャーの集合写真を撮って終わった。
思いのほか楽しかったが、後日ピンクの服着た自分がポーズとか決めてる写真を見た時のドン引き具合は言うまでもない・・・