尾行
「じゃあ、今日はこれで」
大嗣は席を立ちあがり言った。
「おお~また明日~」
声を上げたのは会だけではあるが、空も鶴美も新も手を振って大嗣を見送った。
「ふぁ~・・・今日も疲れたな・・・」
大嗣はあくびをしながらいつもの空き教室を出た。
「・・・行ったか?」
「ああ・・・行った」
大嗣が見えなくなるのを確認して会たちは空き教室から出てきた。
この日会たちが計画したのは大嗣の尾行である。
「じゃあ、今日も行きますか!」
「なぁ・・・これいつまでやるんだ?」
ハイテンションの会に対して面倒くさそうに新は言った。だが、新が言うことももっともだった。なぜなら、この尾行と言う行為は大嗣が帰宅部のメンバーに加わってから常習的に行われてきたんだから。
「飽きるまで!!」
「いつ飽きるんだよ!?今までだって特に何もなかったのに」
新の言う通りこれまで尾行を行ってきたが、これと言って収穫は無かった。強いて挙げれば、大嗣の家が分かったという事だろう。
「まぁまぁ、とりあえず行こうじゃないか」
「そうっすよ~たいちゃん行っちゃいますよ」
渋る新を空と鶴美が急かした。
「よし行こう~!!」
「はぁ~はいはい」
ため息をついて新は会たちについて行った。
「あっいたっす!」
鶴美が大嗣の姿を確認して声を上げた。
「ん~何やってるんだ?」
「飲み物買ってるんすかね」
自動販売機前で悩んだ素振りをしながら大嗣は立っていた。
「お!買ったぞ!」
「一体何を買ったんだ?」
「見てくるっす!!」
素早く軽快な動きで大嗣の背後にまわり、鶴美は確認した。
「なんだった?」
「普通にコーラでした」
「つまらんな・・・」
・・・なにが楽しいんだ?
女子たちはとても楽しんでいる様子だが、新だけいまいち乗り切れないでいた。
「たいちゃん移動開始します」
「よし!行こう!!」
「ワクワクが止まらないね!」
「ノリノリだなお前ら!!」
大分調子に乗ってきた女子三人に思わず新はツッコんだ。