天橋空
・・・あ、空さんだ。
空を見かけて大嗣はあいさつしようと近づいた。
「む、殺気が!!」
「うほっ!?」
突如、空が振り返って右ストレートを飛ばしてきた。間一髪のところで大嗣はかわしたが、その場でしりもちをついてしまった。
「あれ?たいちゃんか」
「たいちゃんかじゃないですよ!近づいただけで殴ってくるとか危険すぎます」
「私の後ろに立つな・・・」
「どこのゴ○ゴですか・・・」
冗談を言って笑っている空に対し、大嗣はため息をついて呆れたようにツッコんだ。
「ところで何か用かな?」
「いえ、見かけたんであいさつしようかと」
「あぁそうなのか、それは悪いことをしたよ」
今さらだが殴り掛かってきたことを謝ってきた。
そして、それと同時に大嗣はあることが気になった。
「あの、殴られるの覚悟で聞きたいんですけど・・・」
「なんだい?別に殴らないから言ってみな」
恐る恐る言っている大嗣に対して優しく笑みを浮かべて空は言った。
「空さんは何でそんなに暴力を振るってくるんですか?」
「ああ・・・私も殴りたくて殴ってるわけじゃないんだ」
「え?」
「私は意外に思われるんだけど、頭が悪くてね・・・それなのに会たちと一緒にいるとどうしても私がツッコミをしないといけない場面が多いんだ」
空は過去を懐かしむように目を細め語っている。
「しかし、私は会たちのボケに適当なツッコミをすることが出来なかった・・・だからたいちゃんのツッコミ力は羨ましいよ」
「いや・・・そんなことないですよ」
急に褒められたので大嗣は照れて顔を赤くした。
「ふふふ・・・それで私は言葉より体でツッコミを表現しようとしたんだ。だから私の暴力は不器用な私の不器用なツッコミなんだよ」
「・・・なるほど」
・・・そうかこの人はただ一生懸命なんだ。ボケに対して最高のツッコミをするのに一生懸命だったんだ。
大嗣から見た空の印象が変わった。怖い人だと思っていたけど本当はとても優しい人だったんだ。
「でも、殴ってるうちにだんだん気持ちよくなってきたのは否定しないがな」
「結局、殴りたくて殴ってたのか・・・!!」
見直して株を上げた途端下げてくるあたりはさすがの一言である。
「その中でも新の殴り心地は最高だぞ・・・もうあいつじゃなきゃダメだな」
・・・新さん・・・ご愁傷様です。
「そう、たいちゃん・・・君じゃダメなんだ・・・ごめんね」
「何で俺がフラれたみたいになってんだ?」