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かまちゃん

「オッス川崎~」

 朝大嗣たいし登校していると後ろから蒲田かまたがやって来ていった。

「おお蒲田か。おはよう」

「なんだ~疲れてるのか?」

「ああ、この休日あまり休めなくてな」

 そう言って、大嗣はあくびをした。

「ふ~ん・・・部活もしてないお前が休めないって、いったい何してたんだ~?」

「何でもいいだろ」

 説明するのも面倒だったので、大嗣は回答を曖昧にした。第一女子と遊んでたことが知れたらよからぬ噂が出てしまう。特に蒲田は早とちりしそうだし、それをすぐに周りに言いそうだ。

「おはよう」

 再び背後から声が聞こえて、大嗣と蒲田は振り返った。

「お~平島ひらしまちゃんおはよう~」

 声の主は平島だった。手を振りながら大嗣たちの方へ歩いてくる。

「お、おおおはよう」

 ・・・・まずい、平島が昨日のことを言ったら・・・

 特に平島は噂が流れたとしても気にしなさそうな性格をしている。大嗣が神経質すぎるのかもしれないが。

「あったいちゃん。昨日はありがとね」

 ・・・・ええええええぇぇぇぇ!?振ってもないのに言いおったぁ!?

 大嗣は開いた口が塞がらなかった。

「ん?昨日?たいちゃん?」

 当然平島の言葉に反応したのは蒲田だ。疑いの目で大嗣のことを見てくる。

「お前ら・・・まさか・・・」

「な、何だよ?」

 確実に付き合ってると思われてるな・・・そう大嗣は覚悟した。

「お前らすごく仲良いんだな!!」

「へ?」

「あだ名で呼ぶんだもんな~すげ~仲良いじゃん」

「そ、そうなんだよ~な平島!」

「え?う、うん」

 大嗣が急に降ったため平島は戸惑い気味に答えた。

 どうやら本当に付き合ってると思われることに抵抗がないようだ。

「そうか~いいなぁ」

「そうかな~ははは~」

 ぎこちない笑い声をあげながら何事もなかったかのように大嗣は蒲田の横を通り過ぎ学校へ向かった。

「・・・待とうか」

 蒲田は大嗣の肩を掴んで言った。表情は笑っているが声はとても冷たかった。

「な、なにかな?」

 ・・・・大嗣は口をひきつらせながらも笑顔を作って振り返った。

「仲が良いで済むかぁぁ~!!」

「で、ですよね~」

 どうやらとても鈍くて付き合ってると言う考えに至らなかったのではなく、頑張って気付いてはいるけど気付かないふりをして自分を抑え込んでいたようだ。

 しかし、我慢ならなかったようだ。我慢していたものを思い切り吐き出すように蒲田は叫んだ。

「付き合ってるんだろ?そうなんだろ?」

「つ、付き合ってないよ」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ~」

 蒲田は大嗣の襟を掴んで大嗣の頭をブンブン振り回した。

「やめろ・・・気持ち悪くなる・・・」

「ちょ、蒲田君やめなよ。私たち付き合ってなんかないよ」

 完全に酔って反論できなくなった大嗣に代わって平島が仲裁に入り反論してくれた。

「ほ、本当か・・・?」

「本当よ」

「じ、じゃあ俺のこともあだ名で呼んで」

「え?あだ名?」

「そう!俺のこともかまちゃんって」

 とても必死な感じで蒲田は平島に頼み込んだ。

「お前・・・気持ち悪いな・・」

「うるせぇ」

 「殺すぞ」と言わんばかりの怖い表情で蒲田は言った。

 この時大嗣は何と無く分かった気がする。蒲田は平島のことが・・・

「・・・・かまちゃん?」

「・・・!」

「今度からこれで呼べばいいの?」

「は、はい!・・・あのもう一回」

「かまちゃん」

「うおぉぉぉ!!」

 大嗣の考えは確信に変わった。そう蒲田は平島のことが好きだ。

「お前・・・気持ち悪いな・・」

「うるせぇ」

 今度の「うるせぇ」先ほどと違って、とても上機嫌の酔っぱらいのようにハイテンションで笑顔の「うるせぇ」だった。


 朝から騒がしい一日となった。

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