男らしさ
「はぁぁ~・・・やっちまったな」
大嗣は公園のベンチに座って項垂れていた。
会と平島の二人から逃げるようにここまで走ってきてしまったが、今になって大嗣はものすごく後悔していた。
「あ!!いましたよ!」
遠くから平島の声が聞こえた。
「も~たいちゃん!!勝手に走って行っちゃダメでしょ!」
「いや、犬を躾けるみたいに言わないでください・・・」
「え?なんだって?」
笑っていた会の表情が一瞬で険しくなって大嗣を睨んできた。
「いや、すみません」
「本当に心配したんだよ」
「はい・・・反省してます」
「たいちゃん気を付けてよ!」
「お、おお・・・平島にも迷惑かけたな」
・・・・たいちゃんが浸透しとる!?
しかも会と平島はこの短時間で妙に仲良くなっている気がする。
「でもたいちゃん、もうちょっと男らしくなろうよ」
「え?」
「聞いたよ。犬のウ○チの処理でしょ?あれであの声は・・・」
「う・・・」
「私も犬飼ってて処理はするけど、最初でもあんなにはならなかったよ」
「傷えぐっていくな、お前」
胸のあたりを押さえて震えながら大嗣は言った。
「あ、ごめんごめん。要は慣れだって言いたかったの」
「そのようには聞こえかったような・・・」
「気にしない気にしない!もう、そういう細かいところ気にするのも男らしくないよ」
「はいはい、すみません。アドバイスありがとうございます」
「よろしい」
偉そうにふんぞり返って会は笑って言った。
「っていうか平島も自分で処理してるんですから会さんも自分でやってくださいよ」
「いや~うちはうち、よそはよそだよ~」
「俺もよそですよ!」
「な~に言ってんの?私とたいちゃんの仲でしょ~」
ガシッと大嗣の肩を組んできて会は言った。身長差があるので会はちょっときつそうだが。
「ちょっ、誤解を生む言い方はやめてくださいよ」
その組まれた肩を振りほどいて大嗣は言った。
「お~なになに?和ちゃんが気になってる感じかい?」
「え?」
会の言葉に驚きの声を上げたのは平島だった。顔がちょっと赤くなっている。
「え?いや、そういう事じゃなく、ありもしない噂が立つのが嫌なんですよ」
「噂なんかに怯えているのか!?男ならそんな噂に負けずに立ち向かってみろ!!」
「また男らしさの話ですか!?」
何回も男らしくないと言われて若干いらいらしながら大嗣は言った。