処理
何はともあれ、散歩は開始された。
「楽しいねぇ~」
「そ、そうっすか?」
大嗣は別に犬が嫌いだったりするわけではないのだが、ただ歩くだけの散歩に気が向かなかった。
それに大嗣はあることを考えていた、それはなぜ会が自分を誘ったのかという事だ。
「あっ・・・」
会が声を上げた。
会が見ている方向を大嗣も見ている。すると、その場所ではチビが排便していた。そうウ○コだ。
「たいちゃんよろしく」
「やっぱりそのためか!!」
大嗣が考えていたのはまさしくこれだった。会はウ○コの処理などの雑用を任せるためにわざわざ家まで来て大嗣を誘ったのだ。
「そうだよ~私こんなのやりたくないもん」
「俺もやりたくないですよ・・・ってか自分で飼いたいって言ったんですから責任持ってやってくださいよ」
「弱音吐くな!男だろう!」
「いやですよ~」
大嗣は全力でやりたくない。男らしくなくていいし、ここで泣いたっていい。それぐらいやりたくなかった。
「・・・やれ」
その瞬間、女子高生の口から出たとは思えない低い声を会は発して言った。表情もすごく怖い顔で大嗣のことを睨みつけてくる。
「・・・・・はい」
涙目になりながら大嗣は返事をした。
「ありがと~たいちゃん」
「・・・・・はい」
ケロッと笑顔に戻った会に大嗣は苦笑いを浮かべ再び返事をした。
「あ~・・・あ~・・・・」
大嗣は手にビニール袋をはめてウ○コにその手を伸ばすが、震えが止まらない。
「ちょ・・・変な声出さないで早くやってよ」
「そ、そうは言いますけど・・・はぅ・・」
「あっまた~変な目で見られるから~」
会は恥ずかしそうにキョロキョロ周りを見渡したが特に通行人はいなかった。
「ぐ・・・あああぁぁぁぁぁぁ」
大嗣も最後には男を見せた。発狂しながらもウ○コを掴みそのまま袋を裏返しにして見事処理に成功したのだ。
しかし、大嗣は心身共にかなりの疲れていた。まだウ○コの処理しかやっていない、散歩もそれほどやっていないのに息が上がっていた。
「大丈夫?」
「だ・・・大丈夫です」
大嗣は立ち上がった。
・・・こうなれば自棄だ。最後まで付き合おうじゃないか。
大嗣はそう考えた。さっきの自分の声も今考えるとかなり恥ずかしい声を上げてたと思うが、誰も聞いてなかったなら大丈夫だ。
「・・・川崎君?」
背後から声が聞こえた。
大嗣が振り返るとそこには平島和がいた。何か変なものを見るような目つきで大嗣のことを見てくる。
「さっきの声・・・・川崎君の?」
平島の言葉を聞いた時、大嗣は固まった。そして恥ずかしくなった。自分のウ○コを嫌がる変な声を知り合いに聞かれた。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そして、顔を真赤にして大嗣は走り去った。