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フリョリーテイル  作者: 浅野エミイ
第2章

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2-1

「……おい」


「ん……」


 なんだかポカポカしていて心地いい。心地よすぎてこのまま眠っていたい……。


 ピーチチチと鳥の鳴き声も聞こえる。暖かいし平和だ。今日は日曜日だっけ? 


「おい、起きろ」


「母さん、うっせぇ……あと1時間」


「だーれーが! 母さんだぁっ!」


 バチンッ!!


 思い切り頬に何か当たった感覚がして、目が覚める。


「いっつ……」


「ふん、ようやく起きたか。小童が」


 目の前には、ボブカットの女子。よく見ると結構かわいい。――って、こいつは!


「高坂! え? 今日は日曜日じゃ……」


「何が日曜日だ。周りを見渡せ」


「え……えぇぇ!?」


 オレが寝転がっていたのは、野原のど真ん中。春うららかな気候。今は夏だったはずなのに、気候も違う。


「ここ、どこだ!?」


「わからん。っていうか、そのリアクション遅すぎるぞ」


「あっ! そういやおめぇ、殴ったな?」


「殴ってはいない。起こしただけだ」


「上等だ! どこだろうが夢だろうがなんだっていい! タイマンの続きだ! 確か勝負してたよな! オレたち」


「え……お前案外バカっていうか、のんきだな? ここでタイマン?」


 高坂は怪訝な顔をする。なんで夜だったのがいきなり昼になったのかとか、戦っていた場所が違うだろ! とか色々あるけど、多分夢だ。うん。一発殴られて気絶かなんかしているんだろう。でも、ファイティングポーズは取り続けねぇと!


 オレが立ち上がって高坂をにらみつけると、高坂もにやりと笑った。


「しっかたねぇな……おめぇも戦闘狂ってやつか。だったら上等だ! とりあえずカタぁつけてからこの状況を考えようじゃねぇか!」


 オレも大概バカだが、高坂もバカだ。ケンカしか頭にない不良は、どこだろうがタイマン中はタイマン。戦わないわけにはいかない。


「私が勝ったとりあえずもう二度と白薔薇学院には近づくなよ」


「オレの目的はおめぇに勝って、西東京1の称号を手に入れることだ」


「そういやお前、名前を聞いてなかったな。顔も見覚えがない。そんなガキが西東京1? ハッ! ちゃんちゃらおかしいわ」


「……ッ! 舐めやがって……。オレは榊サキ! おめぇに勝つ男だ。覚えとけ!」


「秒で忘れるわぁ! こっちから行くぞ!」


 高坂が特攻を仕掛ける。脚を素早く上げ、回し蹴りが来るのをすんででかわすと、今度はストレートを繰り出す。が、またもバチンッ! と大きな音がして、何かに跳ね返させられる。


「っ……なんだ? さっきから」


「ふふっ、おめぇは私に触れられない。『西東京の魔女』も『白薔薇のメデューサ』も、敵に触れられたことがないんだ。これで終わりだ!」


 腹に重いパンチ……? を食らう。いや、パンチではない。拳の感覚がない。ただあったのは……拳風?


「グゥッ……!!」


 もろに腹に食らったオレは、その場にうずくまる。まだまだだ。まだオレは余裕で戦える。地面に唾を吐きかけると、すぐに立ち上がる。


「いいモンもってんじゃねぇか!」


「ふん、お前に私はまだ指一本も触れてねぇ。それなのに、まだやる気か? 今度は肋骨を折るぞ?」


「できるもんなら……」


 やってみろ! と声を上げようとしたところ。


 グウウウウ……。


 盛大に腹が鳴る。げっ、オレ、最高にカッコわりぃ!! 啖呵切ろうとして、腹が鳴るなんて!! 


 高坂はというと、その音にきょとんとしている。そして――。


「……ぷっ、お前、腹へってんのかよ!」


「う、うるせぇ! わりぃか! 夕飯コンビニで軽くしか食ってなかったんだよ!」


「にしても、私ものどが渇いたな。ここは本当にどこだ? 私たちはT大の敷地内の噴水広場でやり合ってたはずなんだが」


 ようやくここでオレたちは、現状把握をしようとし始めた。ここは決闘にはふさわしい野原だ。ただ、今は昼。


「オレたちが戦ってたのは夜だよな?」


「うん。殴り合おうとした瞬間、雷が落ちて――あっ!」


「なんか気づいたことがあるのか?」


 高坂はオレを見ると、ごくりと唾を飲み込む。


「私たちがやり合っていたところは、T大のテレポート試験場と言われていたところ……」


「ってことは、もしかして……どこかにテレポートしちまった、とか?」


「可能性はなくはない。雷と……私のアレで電気が走った。条件はある意味整ってしまったのかもしれない」


「『私のアレ』ってなんだよ」


「それはおいおい説明する。それよりもしテレポートしてしまったとしたら、ここがどこか知らねぇといけない。日本ならいいんだが……」


 難しい顔で考え込む高坂だが、『日本ならいい』という言葉にオレは少し自分の立場を把握した。日本の……関東圏のどこかだったらまだ帰れる。だけど、これが沖縄だとか北海道だとかだったら金がなくて帰れないし、ましてや海外だったら言語すら使えねぇじゃねぇか!


「に、日本の関東のどっかに決まってんだろ。ちょっと北茨城から飛んだだけだって」


「だけど気候がまるで春だし、夜だったはずなのに昼……もしかしたら地球の時差があるところかも……」


「よ、余計なことを考えるなよ! とりあえず、人を探すとかしねぇと。あと、水と食料は欲しい」


「それもそうだな。いつまでもこんなだだっ広い場所にいるわけにはいかない。移動するか」


「移動って言ってもどっちだ?」


「知らねぇわ!」


「知らねぇって……あっ、こんなときのスマホ!」


 スマホを取り出すが、あいにく圏外だ。電波もなければ、GPSの位置情報も無効。本当にここはどこだ?


「ダメだ、GPS死んでる……」


「こうなりゃ野生の勘を信じるしかねぇ! なんとなくこっちだ!」


「大丈夫かよ、高坂……」


 こうして心もとないオレたちは、野原から人がいそうな方向へ移動を始めた。

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