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フリョリーテイル  作者: 浅野エミイ
第2章

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2-3

 異世界という夢物語みたいなワードを口にする高坂を、オレは鼻で笑う。


「ははっ、んなわけねぇだろ。それよりおめぇ、『異世界』なんて言葉がすぐ出るあたり、ネット小説読み漁ってんのか? 案外オタクだな」


「そういうお前もネット小説ってわかる時点でオタクじゃねぇか」


「うるせぇ! このくらい一般常識だっ!」


 だけど、高坂がここを異世界というのも少しは納得してしまうような。


 変な果物に変な魚。少なくとも日本では見たことがない。ただ、異世界というにも確証はない。


「どこかオレたちの知らない海外っていう可能性だってまだあるぞ」


「それはそれで困るけどな。帰れないことには変わりない」


「……」


 難しい顔で考え込む高坂。しかし、考え込んだって仕方ないだろう。川に入っていたオレは、高坂を冷静にさせるために水をかけた。


「な、何をっ!! うわっ!!」


「高坂!?」


 高坂がバランスを崩して川に落ちる。その瞬間――。


 バチバチバチッ!! と、体中に電流が走る。


「うわぁぁっ!?」


 川の中にいた先ほどの飛び魚たちも、ビチビチビチっ!! と陸に飛び上がる。


「やべっ……」


 川に落ちた高坂がすぐに水から上がると、電流が流れる感覚はなくなった。なんだ、今の。まだ体中がしびれている。フラフラする……。


「お、おい、大丈夫か? サキ」


「大丈夫……だけど、おめぇ、何しやがった?」


「……私さ」


 高坂が何か言おうとしたときだった。


 バザァァッ!! と水が盛り上がり、川から何か巨大なものが現れる。


「!?」


 オレも急いで陸に上がる。川から出てきたのは……。


「×○△□×○!!!」


「……な、なんだ!?」


 出てきたのは、金髪できれいな女性。ただ、体は透き通っている。まるで水のような……というか、川の水だ、これは。


「もしかして、川の精的なものなんじゃ?」


「はぁっ!? おめぇ、何川の精を呼び出してんだよ、高坂!」


「知らねぇよ! そういうお前が水を私にかけたのがいけねぇんだろ!!」


「××○△×○○□!!」


「「うるせぇ、何言ってんのかわかんねぇよ!!」」


 声がハモった。


 川の精だかなんだかわからん人、というか物体。日本語を話さない。しかし、これで確定したっぽいな。ここは海外ではない。やっぱり、川に『精霊』みたいなのがいるファンタジーな世界。


「○○×○△※※□!!」


 川の精は、何を言っているのかわからないが、どうやら怒っているような感じだ。


 もしかして、怒らせた? 高坂が?


「おい、なんかヤバくねぇか? これ」


「ヤバいっていうか……怒ってるっぽいな。どうする?」


「どうするも何も、怒らせたのおめぇだろ」


「その原因を作ったのはお前だ」


「※×○△!!」


「うわぁっ!!」


 川の精が腕を上げると、水がザバァッ! と盛り上がる。それがオレたちに襲いかかる。


 バシャーン!!


「うわっ、つめてぇっ!! 高坂、何したのかわかんねぇけど、とりあえず謝れ!」


「その前に日本語が通用すっかわかんねぇよ!」


「とりあえず、誠心誠意を込めて土下座しろ!」


「ちっ、わかったよ! サーセンでしたぁぁぁっ!!」


 高坂が土下座すると、一瞬川の精が動きを止めた。しかし。


 バシャーンッ!!


「って、全然伝わらねぇじゃねぇか!!」


 水をかぶった高坂が、オレに突っかかってくる。参ったな。となったら、もうここは……。


「逃げるしかないんじゃね!? 行くぞ!」


「仕方ねぇ、それしか方法はねぇみたいだな!」


 オレたちはその場をあとにしようと背中を向けるが、足首を川の水が触手のようにつかみ取る。くそっ、捕まった。逃げられねぇ!! ……このまま殺されるのか?


 キッと川の精をにらむと、手に何か持っている? あれは……。


「あーっ!! オレのジッポ!」


「ジッポ?」


「もしかして、さっき電流みたいなのが走ったとき、落としたのか?」


 ジッポからはオイルが少し漏れているようだった。


 川の精は笑顔で手にしたジッポを水圧で潰す。これは……なぜか相当怒ってる?


「もしかして、ジッポのオイルで川を汚したことを怒ってるんじゃないか?」


「はぁ!? 確かに川に落としたのは悪いかもしれねぇけど、不可抗力だろ。なんか知らんけど電流が走ってふらついたんだから」


「ともかく、もし川を汚したことで怒っているならば、土下座するのは私じゃなくてお前だな」


「……ちっ! 高坂が何かしたのが悪いんだろ!」


「お前が水をかけたりしなければこうならなかった」


「くっ……わかったよ! 土下座な! サーセンしたっ!!」


 高坂に引き続き、オレも土下座する。だが、土下座という文化がこの異世界(?)にあるのだろうか? それでも謝罪の気持ちが伝わればいいんだが。


 しばらく、川の精の動きが止まる。わかってくれたか? ゆっくりと顔をあげると。


「いてっ!!」


 川の精が、潰れたジッポをオレの顔面に投げつける。そして両手を上げると、また川の水が盛り上がる。もしかして、土下座通じねぇのか!?


「やべぇな……」


「どうするんだよ! 高坂!」


「ここは、戦うしかねぇ!」


「た、戦うって!? 相手は川の精で、多分水だぞ! 物理攻撃が効くか……」


「それでも売られたケンカは買うしかねぇだろ!? ヤンキーだったら逃げてどうする! タイマンじゃねぇけど、相手は人間じゃない。2対1だろうが、勝ちゃいいんだ、勝ちゃ!」


 高坂は持ってきていた釘バットを握り占める。あ、こいつ、ずっと持ってきてたな。そういえば。


 でも、川の精を釘バットなんかで倒せるのか? オレも一応、川の中に落ちていたと思われる木の枝を手にする。


「……」


 川の精とオレたちのにらみ合いが始まる。


「くそっ、水が実体みたいなやつなんかと戦ったことなんてねぇよ!」


「奇遇だな、私もだ」


「何が奇遇だ、日常だったらあり得ねぇだろ」


「だから非日常……異世界なんだろうが。行くぞ!」


「ちくしょうっ、ヤケだ!! うおおおおっ!!」



 オレが振るった木の枝は、案の定川の精の体をすり抜ける。攻撃なんぞあたりゃしねぇ。


「クソッ、ダメだ! 高坂!!」


「うおおおっ!!」


 高坂は釘バットを横に振るう。そのとき、何かがバチッと光った。


「!?」


 なんだ、今のは……。


「食らいやがれっ! 電光石化ぁっ!!」


 バットに刺さった釘が、バチバチと電気のようなものを散らす。な、なんなんだ、マジで。


 高坂、お前は本当に何者なんだよ!!



 電気らしきものが飛んだ釘バットが、川の精が先ほど潰したオレのジッポに当たる。すると、パアンッ!! と水しぶきが派手に飛ぶ。見ると、川の精は目の前からいなくなっていた。


「もしかして……やったのか?」


 高坂はハアハアと肩で息をしている。


 もしやったとしても、高坂のあの『力』は一体なんなんだ――?

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