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めんどくさがりな俺と彼女の平行線〜三次元のねじれ〜

作者: 星野彼方
掲載日:2026/02/22

 高校二年────世間では、彼女がいる奴は充実していて、そうでないやつはまだ彼氏のいない美人に猛アタックする。そんな感じなんだろうか。この年頃というのは。


 うちの学校の男子は、皆、銀白琴音(かねしろことね)という女子に玉砕しに行っている。


 恋愛というのは、きっとうまくいくものではない。だから俺はしたくない。

 きっと、両思いでもお互い告り待ちで平行線で、その後もきっとそのまま別の人と結ばれるんだろう。

 そして、数学のねじれの関係のように、一生交わりも、重なりも、しない。そんな感じにすれちがっていってしまうだろう。




 * * *




 教室で、窓の外を眺める。ぼーっと窓越しに、空にある雲を一つ一つ数える。

 ひとつ、ふたつ……

 三つ目を数えようとした時に、隣の奴がシャーペンの頭でつついてくる。

 

 全く、美人生徒会副会長さんが僕になんのようだか。

──彼女の名前は、銀白琴音。容姿端麗、頭脳明晰でなんとも二次元フィクションの世界から出てきたようなお方だ。女子の中には彼女の非の打ち所の無さを証明しに、欠点を探す奴もいるらしいが、告白男子と同じく玉砕しているらしい。


「なんだよ」

 俺が小声で喋りかけると、彼女は話し始めた。

 

「あの先生席順で当てる人だから、あなた次当たるわよ。ほら、これ答え!──まったく、あなた空ばかり見てないでちゃんと授業受けなさいよね。」

「あぁ、ありがとう」


 おまけに、非モテ男子のだーいすきなツンデレときた。これはモテるわ。つーかこれで惚れさせて告られたら振って、しょうがないな。


 俺は、二年に進級して、偶然席が隣になった。俺は隣ってことよりも、窓側のそこそこ目立たない席だからそっちの方が良かった。──というのも、うちの学校は、都心の中では比較的郊外にあり、空気の美味さもまずまず、河原あり、景色良好、ビル群なし、の良物件なのである。

 校内のやつの民度は少々悪いが、まぁまぁ偏差値はあるので、おバカすぎて会話が通じないこともない。


 そんなことを思いながら、今日もまっすぐ……はうちに帰らず、途中でコンビニに寄って、ミルクティーを買って都会のコンビニにはない広々とした駐車場で、キャップを開けた。


「プシュッ!」


 ん?なんで今。炭酸?

 ふと気になって辺りを見回す。

 360度見渡そうとした。そのうちの270度くらいで、僕の頭がショートした。


「ぷっはー!やっぱり炭酸はいいわね。」

 俺は即、声をかけた。

「おーい!銀白〜!」


 彼女は俺を見た。そして俺に言った。

「な、なんであなたがいるの?」

 俺は答えた。まっすぐに。

「いや、ここのコンビニは俺の一番のおきに登録済みのコンビニだぜ!いて当然だろ!」

「あちゃー。ねぇ、このこと、あの人たちには言わないでね。」

「いやーどうしよっかなー?」

 まったく、おちょくりがいのある。楽しいー!

「言ったら許さないからー!」

 そう言って、彼女は走って行った。夕日の方へ────じゃねーわ。逆だわ。



 * * *



 さて、どうしたものか。俺は────

「いやだー!お見合いなんてしたくないー!」

「ダメだ!もう決めちゃったからな!」

 このクソ親父!マジで。やりやがったな!

 言い忘れていたが、これでもうちは名家だ。地元ではかなりの。

 そして、そこの長男に、見合い話────外から見たらいい話に聞こえるが、親に勝手に結婚相手を決められるなんていやだー!(なんか俺乙女みたいだな。)


「おい、こいつを抑えろ、美咲。」

「了解です!父上ー!」

「やめろ姉ちゃん。頼むってー」

 あぁ、ダメだ。もう終わった。俺の青春。姉ちゃんに七五三以来の七五三の服に着替えさせられた。この服の名前なんて言うんだ?──まぁいいか。

 そして父がふすまを開けた。

 

 その瞬間の、一瞬の期待と絶望は、新しい喜びに変わった。

 まず、絶望は、俺のタイプでない女子が目の前にいること。

 そして期待は ────目の前に琴音がいないか?いないか!というものですとさ。ほほほ。


「よぉ。千代ちゃん。可愛くなったな!」

 親父がそう言う。

 はっきり言って、めちゃくちゃ可愛い!琴音くらい。もしかしたらそれ以上に!


「やぁー父上様。ここは早く座って座って、姉さんに料理を持ってきていただきましょう。いやー千代さん、まずは連絡先から──って痛って」

「は、そこの辺にしておけ。このバカ息子。ははは」

 痛ってークソ親父!んん、ま、いっかこんなに可愛い子が今から俺の奥さん、じゃねーか彼女だー。はははー同級生諸君!ご苦労であった。俺は今から君たちよりも二、三段階上にいってしまうみたいだ。


 しばらく食事や話に花を咲かせた。

「それはそうと陽斗くん。あの時の約束を、覚えていますか」

「えぇ?あの時?ご、ごめん。覚えてないかも」

「そ、そうですか────」

 覚えていない、覚えていないが────

 なんなんだ。この悲しげな瞳は。

 その瞳は、とても澄んで、潤んでいた。少し茶色がかったもので、ずーと見ていられそうだった。

 そして、この宴が終わると同時に、俺は美咲ちゃんの許嫁となり、仲良くするようにとのことだった。

 ちなみに彼女の家は都会の大企業の社長の家で、幼少期からずっとタワマン暮らしだったらしい。

 田舎の良さを、教えてやるぜ!



 * * *



 まぁ、何はともあれ、普通の日常へと俺の生活は戻った。

「おはよう。琴音。」

「おはよう。陽斗。」


 そう言った瞬間に、ギャラリーの男子たちがうるさくなる。

「そんな。陽斗のやつ、なんで急に下の名前呼びに!」

「あやつ、許すまじ」

「まさか、付き合ったんじゃ」


 まったく、そんなにざわざわされると────めんどくさいな。

────実は、これには真相がある。宴のあとに、琴音にコンビニぷっはー事件を言わない代わりに、下の名前呼びを許可されたのだ!はっはー!

 その時、先生が教室のドアをガラガラっと開けて入ってきた。

「おーい、みんな座ってー。今日は転校生を紹介しまーす!」


 そう言って先生の後ろから入ってきた女の子は、なんと昨日のお見合いの相手。つまり俺の奥さん!──ではないけど、許嫁の、千代ちゃんだったのだ!

 はっ?なんだこのラブコメすぎる展開は!


 そして彼女が入ってくると同時に、教室に歓声が起こった。男子たちの…………うん。主に玉砕組の男子たちの。ギャラリーがざわざわうるさい。

「よっしゃー!俺琴音さんには昨日3回目フラれたけど、またきたぞー!うぉー!」

「何言ってんだ。俺なんかもう二桁だぜ!」


 いや、普通に辛辣すぎる、そのグッド、その数字、涙を堪えた笑い。勇者にも程があるぜ。なんとかしてやりたいもんだね〜。


「みんな、自己紹介してもらうから、静かにして。」

 先生のその声で、生徒たちが静かになる。

 千代は、俺のことを自己紹介で言うだろうか────言ってくれねーかな?

 千代は自分の名前を言って、趣味を言った────そのあとは!


「私は、そこの陽斗くんの、許嫁です♡────」

 教室は、一瞬の静寂に包まれた。そして男女問わず生徒全員が俺の方を向いた──いや、ちがう。正確に言うと、琴音だけは俺に顔を背けていた。髪でよく顔が見えない──どうしたんだろ?


「えぇー!」

「おい、陽斗!ふざけんなよぉー。」

 おい、マジで教室がうるさいぜー。俺のことで!


「おーそうなのかーお前らー。じゃあ隣かわってやれ、銀白。」

「………………」

「どうしたー?具合でもわるいのかー?」

 本当に先生の言うとおりだ。めちゃくちゃ首とか顔とか赤い────なんで?

「…………い、いやです。」

「なんでさ?」

「だって……だって、許嫁で隣とか授業ただでさえちゃんと受けない陽斗が、ほんとに何にもしなくなっちゃうじゃないですか!」

「そうか──それもそうだな。でもせっかくなら知り合いの隣にしてやりたいし────じゃあ逆の隣の、お前、代われ。ちな、お前に拒否権はない!」

「えぇー!」

 そう言われ、しくしくと、その場から荷物を持って去っていった────


「よろしくね!陽斗くん。これから色々教えて欲しいなぁ。」

「うん、いいよ。」

 なぜだろう、目の奥で少し遠目を睨んでいるように見えてしまうのは。

 俺は隣を見た────いや、こっちもスッゲー形相で睨んでんすけど、どーなってんの?

 まぁ何はともあれ、これからは、またほかと変わった青春が待っていそうだ。

 

 まだ、この時の俺は知らなかった。あんな悲劇やこんな喜劇が起きて、終演することは。






読んでくださり、ありがとうございます。

久しぶりに小説書きました。連載が投稿頻度守るのむずいので、短編でしばらく修行しようと思います。どうぞ温かく見守ってください。

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