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第七十五話「ぎこちない再会」



ガレスは深く悩んでいた。


父と母が師匠の家に挨拶に行って戻ってきた翌日、まさかの訪問者があった。メルベル様とアザリア様。それだけなら普通の来客だが、問題はその隣にいた人物だった。


アザリア様が二人いる。


いや、正確に言えば、一人は少女版のアザリア様。金髪に青い瞳、瓜二つの顔。どこからどう見ても、あの鍛冶屋で自分の肩に剣を突き立てた都会の暗殺者だった。


自分を殺さなかった理由は「靴を買ってもらったから」。今思い出しても凄まじい理由だ。


「一体なんでここに……」


困惑するガレスに、ナブが苦笑しながら説明を始めた。


「ちょっと込み入った事情があるんだが、まずは紹介しておこう。彼女はニイナ。二人の娘だ」


最初から頭が大混乱した。娘?誰の?まさか……


「父さん、いったいこれはどういうことなんですか?」


ナブは全員を広い屋敷の居間に座らせてから、ゆっくりと話し始めた。


「少しずつ、最初から説明しよう。二人の娘は十三年前に敵の襲撃で死んだと言われていたが、あれは実は嘘だ」


いきなり爆弾発言から始まった。ガレスは何か言おうとしたが、ナブが手で制した。


「彼女は、その後十三年間、敵の教育のもとで育った」


少しずつ話が見えてきた。


「ええっと、つまり……メルベル様のことを『父親の敵』とか言ってたのは、あれは……」


ナブが重い頷きを返す。


「敵の卑劣な企みだ。自分の娘に父親の命を狙わせようとした」


アルマが手を挙げた。


「前に出回ってた、あの手配書。あれってどういうこと?」


今度はアザリアが答えた。


「あの時は正直なところ、戻ってくるとは考えていなかった。味方を傷つけるわけにもいかなかったから、苦渋の決断だったのよ」


ガレスとアルマは顔を見合わせた。


「ええっと、じゃあ……まだ誰も傷つけてないってこと?その、メルベル様以外は」


おずおずと尋ねると、ナブは即座に答えた。


「そうだ。ずっと敵の施設で閉じ込められて育った」


実際は数え切れないほどの殺人を犯していたが、子供たちにそんなことを言っても意味がない。真実は、時に隠す方が優しいこともある。


ガレスは大通りでの出来事を思い出した。逃げる時に駆けつけてきた巡回中の兵士二人の太ももにナイフを投げて大怪我をさせたこと。でも、仕方のないことなのかもしれない。子供心には納得できない部分もあったが。


メルベルがニイナの肩を軽く叩く。あらかじめ打ち合わせていた合図だった。


「あの時はごめんなさい。肩、痛かったでしょう?」


ニイナが優雅に頭を下げ、微笑む。完璧に計算された笑顔だったが、ガレスにはそれが分からない。


「うん、まあ……しょうがないな」


その微笑みに、ガレスはあっさりと全てを忘却した。可愛い女の子に謝られて、悪い気はしなかった。


一方、アルマは違った。


『なんだ、この女。へらへらしやがって』


兄が照れているのも、突然やってきた女も、全てが気に入らない。リーナは娘の表情を見て、小さくため息をついた。


『これはダメかも』


「二人とも、いろいろあったが、これからは彼女も私たちの仲間だ。仲良くするんだぞ」


ナブの言葉に、ガレスは元気よく「はい!」と返事をした。アルマは母親の顔色を窺いながら、不満そうに適当な返事を返す。


「そうだ、ボードゲームでもやらないか?三人で遊べるよ」


ガレスが提案する。少年なりの気遣いだった。


ニイナは父親の方を見る。メルベルが優しく微笑んで頷くと、彼女も柔らかく微笑んだ。


「ありがとう。やり方を教えてくれる?」


三人の子供たちは、ぞろぞろと隣の部屋へ移動を始めた。


その時だった。


パシン!


アルマが思い切り兄の頭を叩いた。


「何するんだよ!」


ガレスが振り返って怒る。


「頭にハチが止まってたから。あ、もういなくなった」


「絶対嘘だろ!」


兄妹の言い争いを聞きながら、ニイナは静かについて行く。この少年が弟。父が優しい目で見る子。でも今は観察の時間。どうやって父の関心を独占し続けるか。


メルベルとナブは安堵の表情を浮かべていた。


「よかった。何とかうまくいったか」


「あぁ、仲良くやれそうだ」


「どこがよ…」


母親の目には、別の光景が映っていた。アルマがいきなり刺々しくなった理由は明白だった。


『よくわからん女にかっこいい兄がデレデレしているのが最高に気に入らないんだろうな』


アザリアがため息をつく。


「仕方ないわよね。いきなり来た、よくわからない女の子がお兄ちゃんと遊び始めたら」


リーナは内心で思った。『よく言うわ。自分も大体似たようなものでしょうに』。先日のメルベルの奪い合いを思い出しながら、胡乱気な顔で答える。


「ええ、そうですね」

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