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居眠り厳禁!

作者: 小雨川蛙

 

 少なくとも私は人間として生きてきたつもりだった。


 普通に朝起きて登校する。

 退屈な授業に飽き飽きをしながらもやり過ごす。

 放課後に友達と雑談をしながら下校する。

 そして夜に寝てからまた起きる。


 そんな生活をずっとしていたはずだった。


『明日のお昼休み。とても大切な授業があります。必ず出席してください』


 昨日の先生の言葉をよく覚えている。


『しっかりお話をきいてくださいね。今だけはしっかり起きていてください』


 今日の先生の言葉をどうにか思い出す。


 そう。

 私は居眠りをしてしまったのだ。

 昨日の夜、少し夜更かしをしていたせいだろう。


『どうしたの?』


 心配そうに私に尋ねる声がある。

 隣の席。

 つまりクラスメイトのはず……。

 しかし、その姿はおよそ人には見えない奇怪なもの。


『気分悪いの?』


 悲鳴をあげそうになる。

 それをどうにか隠すために俯くも、今度は吐き気がせりあがる。


『え!? 大丈夫!?』


 そう言いながら奇怪なものは私の身体に触れる。

 背中を擦ってくる。


 やめて。

 さわらないで!


『どうしたの?』


 先生の声が聞こえる。


『先生! 体調が悪いみたいです!』

『体調が悪い?』


 足音が聞こえた。

 私は何となしに嫌な予感がしながら恐る恐るそちらを横目で見ると、予想に違わず奇怪な見た目の生物が私を見下ろしていた。


『……なるほど』


 先生の声をしている奇怪なものは周りの生徒を軽く追い払うと屈みこんで私へ小声で問う。


『寝ちゃったんでしょう? 正直に答えて』


 少しだけ安心する。

 姿形は先生ではないものの、どうやら中身は本当に先生らしい。


「はい。すみません」

『まったく……居眠りしちゃったの?』

「はい。ごめんなさい」

『仕方ないわね。ついてきて』


 そう言って先生の差し出した手に引かれ私は教室を立ち去る。


『時々ね、居るのよ。あなたみたいな子。こっちが注意しているのに聞かないんだから……』

「すみません……ところで先生。これは?」

『説明は後。とりあえずこっちへ来て』

「あっ、はい。すみません」


 私は安堵する。

 一先ずは安心だ。

 分からないことは追々聞いていけばいい。


 そう思いながら私は進む。

 先生は職員室のさらに奥、給食室へと向かった。

 私の手を引いて。




 翌日の給食には肉が出た。

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