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静かな異変



「天上の三女神ミレイネスよ、神聖なる輝ける白翼で穢れし存在ものを浄化し給え。女神の光翼(プリエルド)


 

 今さっき奥義ってやつを使ったばっかなのに、また何か術を唱え始めたぞ。



 ヒュイィィィィィィン!



 ミュティアの体から黒い煙がリラの翼に吸収されていってる。

 宙に浮いたリラはまさに女神のようだった。

 とても神々しく、なんだか涙が出て来そうな。

 嬉しいのか悲しいのか、色んな感情が俺の心を溢れさせて渋滞してるよ。


 そしてミュティアに奇跡が起こったんだ。

 目が開いたんだよ。そればかりか、顔が人間の色を取り戻してる……。

 奇跡……本当に奇跡だよこんなの。



 スッと着地したリラは、溜め息を一つ吐くとミュティアの体に手を添える。



「……もう大丈夫よ。起きて」


「…………う……ん。天使……様、私は……」


「貴方を蘇生させたわ。それと体も元通りよ。もう大丈夫だから安心してね」


「リラ! 凄いなー! 天使様はやっぱこうでなきゃな! あ、まだ見習いだったか〜! あっはっはっは!」


「うん」


「レエナもレエナも! レエナも頑張ったのです!」


「そうだそうだ♪ お前がいなかったらこの作戦は思いつかなかったんだからな! よし、ギューしてチューしてやる☆」


「はぅわ!? そ、そんなハズカシイこと出来ないのですぅ〜!」



 あら? にげられちゃった。

 も〜ギャグなのにぃ。



{ゼン←神喰技【ブラッドリンク】を解除した}

{レエナ←共有者を解除した}

 ∟{Mp∞→74}

{リラ←リンクを解除した}



 ふぅ。まぁ何とかなってよかったよかった。

 って……あれ? ログに気になる表示が。

 レエナのマナがなんで74しかないの、、、



 ピコ。



ーーーーーーーーーーーー

ステータス

ーーーーーーーーーーーー

レエナ=レルア

Lv232

Hp7723

Mp∞

St100

攻撃力513

防御力510

魔力2億8931万

(※最大Lv封印結界解除時)

精神力325

行動力5100

ーーーアクティブーーーー

火炎属性魔術ファイアスペル

氷結属性魔術コールドスペル

疾風属性魔術ウインドスペル

大地属性魔術グランドスペル

稲妻属性魔術サンダースペル

水流属性魔術ウォータースペル

ーーーパッシブーーーーー

⚫︎封印結界

⚫︎感情リミットブレイク

ーーーーーーーーーーーー




 ステータスだと無限大表記でちゃんとなってるな……これ表示されてるのは最大値か。って何気にさっきのでレベル上がったんだな。


 いや今はそんなのどうでもいい。

 やっぱり神術や天使の奥義を使うと、流石の無限大マナでも減ってしまうんだな。


 一瞬、レエナと【ブラッドリンク】を使って少し工夫すれば、人間からアーディルを奪わなくたってって思ったんだが……世の中甘かないねぇ。




◇◇◇◇◇◇◇◇




「助けていただき本当に有難う御座います」


「あたしの方こそ、命をかけてまでアビリティをいただいて感謝しかないわ。貴方を助けられたのも神術を使えたおかげなんだから」


「天使様……あぁまさか私の目の前に……この様な奇跡が起こるなんて……」


「もう大丈夫なのか?」


「うん、大丈夫よ。君も助けてくれたのよね。うふふ! 助けてくれてありがとね」


「レエナも! レエナも頑張ったのです!」



 ヒュンっと飛んできてミュティアの服をグイッグイッと引っ張る。



「はい☆ レエナちゃんありがとね☆ 貴方はフェアリー?」


「はいなのです! でもでもレエナは救世主召喚で召喚された別世界のフェアリーなのですぅ!」



 レエナは何歳か知らんが見た目がまあ幼女だし、あんな喋り方だし、子供扱いしても分かる。

 だが俺に話す時、何故に子供扱いするのだこのお姉様は。



「とても怖い魔物がいる所なのに、全く泣かないのですね。君は逞しくて強いのね。ヨシヨシ」



 って、頭を撫でられた。

 このプレイもま、まぁ悪くはないけど…………デュフ♪



「あの……俺も実は救世主召喚で別世界からやって来た正義の使者なんすけど、中身22歳の大人っす!」


「え? 22歳?」


「見た目は子供! 心は青年! その名は神喰のゼン! キラーン☆」


「えっと……う、うふふ」



 か、顔がめちゃくちゃ引き攣ってる……。


 そんな説明じゃ分かんないでしょう!! ってツッコミが入るタイミングなんだが、神術やらなんやら技を連発したせいでリラのやつ相当疲れてるんだな。


 って事で本題に戻る。

 ミュティアの話を聞いてくと、やっぱりこのお姉様もロゼルスがここに追放したのな。

 しかも、めちゃくちゃに扱われたみたいで聞いてるだけで胸糞悪い。



「あの野郎……マジで許さん! 帝都へ乗り込むぞ!!」


「ゼンたん! 無理なのです! まずはこの島から脱出する方法と、瘴気をどうにかしないとなのです!」


「も、もちろん分かってるさ!」



 瘴気か。


 聖女は瘴気を浄化出来るんだよな。

 だったらミュティアが浄化すればいいんじゃないのか?



 ピコ。




ーーーーーーーーーーーー

ステータス

ーーーーーーーーーーーー

ミュティア・ディア・ラムリース

Lv1

Hp19

Mp8

St100

攻撃力4

防御力3

魔力7

精神力6

行動力5

ーーーーーーーーーーーー

なし

ーーーアクティブーーーー

なし

ーーーパッシブーーーーー

なし

ーーーーーーーーーーーー




 そっか……もうミュティアは大聖女じゃなくなっちゃったのか。

 アビリティを継承したって言ってたから、今はリラが大聖女のアビリティを持ってるって事か。



「なあリラ、お前もしかして大聖女のスキル使えるのか?」


「うん。ミュティアのおかげでね。浄化術も神術プリエルドも使えるようになったわ」


「リラたんが聖女スキルを使えるなら、瘴気を浄化出来るのです! だったらだったらレエナの魔導術で飛んで脱出できるのです!!」


「だよなだよな! よっしゃぁ! ほんじゃあ、帝都に乗り込もうぜ! 俺の仲間を散々な目に遭わせた報いを受けさせてやる!」


「仲間……」



 くぅぅ〜☆ 

 真っ黒だったから気づかなかったが、この人マジで美しい……♡


 ミュティアお姉様に見つめられて緊張して足がガクブルものよ。

 

 必死で今バレないように隠してるが。


 はれれぇ? このパーティ……。


 ツンツン見習い天使に、むっちりきょぬー幼女、そして清楚美人お姉様とまるで各カテゴリー代表みたいなメンツ♡


 そして男は俺だけ。


 あぁ……ゾクゾクしてきゅる。


 武者震いがとまんねぇ……武者震いか知らんが。



「突然で申し訳ありませんが、私をラムリースまで連れて行ってもらえませんか? グニシスを弔いたいのです。命の恩人の皆様にこの様なお願い事は大変言い難いのですが……」


「グニシス……護衛だった? いいぜミュティア、だが俺達はそのラムリースの場所が分からないんだ」


「それなら大丈夫よゼンくん。ここから北に船を使って1日程でラムリースです」



 ぜ、ゼンくん……。



「レエナの飛翔光翼ゼフーザフェザーならギュギュッと短縮出来るのです! 北なのですね?」



 問いかけながら術の準備を始めたレエナに向かって「レエナちゃん待って」と返すお姉様。



「この島とラムリースとの間には、〝シアデス海〟と言う大きな海があって魔術などではとても渡れない距離なの」



 そもそも【飛翔光翼ゼフーザフェザー】は一時的な効果として飛行出来る魔術であって、長距離を飛ぶにはマナの消費が膨大過ぎる。マナを極めた賢者でも実現するのは難しいんだって。無謀すぎる、と。


 さらには周りに瘴気を浄化しながら飛んでいく事も考えると不可能に近いと力説する。


 まあ普通の人間ならそうかもしれないが、ティア姉さん、俺の仲間は()()()なんす!



 〝大丈夫〟って言葉だけでその心配を軽く跳ね除けた俺は、レエナに指示を出し【飛翔光翼ゼフーザフェザー】を使って、ラムリースに向けて飛んで行くのだった。

 俺にリラ、そしてミュティアの飛行コントロールを全部レエナに任せる事で、リラは浄化に専念出来るし、空を飛ぶ敵が襲って来た時には、俺が一手に引き受ける。



 と、言いたいところだが、どうやら()のレエナの魔力だとこれ以上のスピードは出せないらしく、このままでも十分早いがもっとスピードを上げて一気にラムリースへと行きたかった俺は、レエナの名前を呼んだ。



「みんなの飛行のコントロールを俺に出来るようにしてくれ! もっとスピードアップしてやるぜ」



 そもそもそんな事が出来るかどうか知らんが、とりあえずむちゃぶりしてみた。するとこの天才幼女ちゃんは「イエス」と答えたのだ。



「んん〜!! ゼンたん! これで一時的に全員の飛行コントロールが出来るようになったのですぅ!」



 出来んのかよ!


 流石はスペルマスターちゃんだ!



「よっしゃ飛ばすゼェェェ!」



 キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーン!!



「……な、なな、何と言うスピード……。なのにどうして目が開けていられるの?」



 島から船を使えば1日、だが俺のパワーでコントロールすれば僅か5分程度でもう大陸が見えて来た。



「へっへっへ〜♪ おいリラ〜ちょっと浄化のスピードが落ちて来てるんじゃねぇかー?」



 後ろを振り返る。

 すぐ後ろにミュティア、その隣にレエナがいる。あれ? リラの姿が見当たらない。



「お、おい……リラは何処だ?」


「え!? つい先程まで私の後ろを……」


 

 と言いながら、後ろを振り返ってリラの姿が消えた事に驚いてるミュティアの隣で、レエナが真下を指差した。



「あそこなのです!!」



 リラの位置に気がついた時には、既に浄化の輪の外にいた。


 そして下は海。


 瘴気の中は5秒ともたない。ミュティアが言ってたのを思い出し、全速力でリラへ飛ぶ。


 ずっと何か変だったんだ。

 凄い術を使った事の疲労だと思ってた。



 違ったんだ。


 必死に痛みに耐えるような苦顔と漆黒の色に染まっていく純白の翼が、俺の目に映っていた。



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