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一方その頃①


ーロゼルス視点ー



 ロゼルス帝国、皇帝のロゼルス17世である。

 最近、救世主召喚で変なゴミを呼んでしまい、魔島追放(ゴミ処理)に手を焼いていたが、数日前に()()が見つかったのじゃ。


 大勇者リーベルト・デカオルド!


 彼こそが世界を魔王の手から救い、メルティシア全土に広がる瘴気を取り払える救世主なのである。


 彼と巡り会えたのは奇跡だと思うが、世界中の異世界召喚に長けた者を召集した甲斐があったと言うものじゃ。

 儂の思惑通り、リーベルト殿は我が最愛の愛娘アイリーンを好いとるようでこのままいけば、大勇者の孫が誕生する。


 それはまさにこのロゼルス帝国の更なる発展と繁栄を遂げる事になるであろう。


 その為にも2人の仲を急速に深めるべく、儂はデートを計画した。


 この世は瘴気に覆われ、世界のほぼ全ての人間が街から外に出られない中、〝聖女〟の祈りによる浄化で瘴気を一時的に退ける事が出来る。

 つまり、聖女と一緒ならば旅は可能と言う訳じゃ。



「ロゼルス陛下、お久しぶりで御座います」



 良く聞き取れる透き通った声。

 栗色の腰まで伸びたロングヘア。

 紅く優しい瞳が特徴的な、誰もが羨む絶世の美女。ラムリース王国の王女であり、世界で1番の力を持つ大聖女と言う肩書きを持つミュティア。そう言われとるようじゃが……。


 儂に言わせれば〝王女兼大聖女〟と言う肩書きに助けられとる()()()女じゃな。



「メルティシアで最も優秀な聖女、大聖女ミュティア殿。其方に大事な頼みがあるとラムリース王に伝えたと思うんじゃが? 一体何日待たせるのじゃ……」


「へ、陛下! ラムリースからは船でどれだけ飛ばしても3日はかかる距離で御座います! ミュティア様は三日三晩、寝ずに」



 ミュティアの護衛のラムリース兵か。

 兵士の分際で儂に意見を述べるなど……と、心境を察したのかミュティアが一歩出てそれを止める。



「グニシス、下がりなさい。陛下、遅くなってしまい申し訳ありません。では早速お聞き致しましょう。その前に、今回討伐する魔物のランクをお聞きしても宜しいでしょうか?」



「遅れて来ておいて、早速本題に入れとな。もっと謝罪の言葉があるじゃろう。何を言っとるんじゃ……。ラムリースでは〝すみません〟で何でも許されるんじゃな?」



「い、いえ! その様な事は! 本当に申し訳ありません!」



 儂の言葉で深々と頭を下げる。だが……。



「大聖女ミュティア殿。少し頭が高いのではないかな? 儂が誰か、まさか忘れた訳ではあるまいな?」



「勿論で御座います! 陛下、御無礼をお赦し下さいませ!」



 大聖女ミュティアが地に頭を擦り付けよったわ。

 やっと事の重大さに気づいたようじゃな。

 ぐふふ……世界一の聖女、大聖女にここまで出来るのは儂以外おらんじゃろう。あぁ快感じゃ♪

 

 深い溜め息をこれ見よがしに見せつけてから、さて本題に入ろうか。



「我が娘アイリーンと大勇者リーベルト殿のデートに従者として1ヶ月間の付き添えを命ずる。直ぐに娘の部屋へ向かえ」


「………………あの、陛下。デート……ですか?」


「なんじゃその顔は? 何か不服か?」


「陛下、お言葉ですが……今この時にも魔物により命を失ってしまう人々がいます。私の力はその人々の為に使うべきだと思うのです。屈強な戦士でも瘴気の中では5秒と持ちません。私の力があれば一時的ではありますが、瘴気を退ける事が出来ます。その事は陛下もご存知かと」


「では何か? 儂の娘よりもその人々の方が大事であると、そう言いたいのじゃな?」


「命の危険がある方を優先したいのです、陛下」



 此奴……生意気にもズケズケと言いおって。

 儂がラムリースに対してこれまでにどれだけの事をして来てやったのか、その恩を忘れておるとは……。



「その言葉はラムリースの言葉と受け取って良いのじゃな? 王女ミュティア殿」


「……私は……」


「貴国とは、これまで良い関係を築いて来たと思っておったが……今日でその関係も終わりとなるか」


「そ、そんな」


「王国の未来は明るい方が良いと思うがのう? 其方の一言で明るい未来が約束される、その逆も然りじゃ。王女なら、今儂が言った言葉がよく分かると思うが?」



 顔を伏せてどんどん顔色が悪くなっていっとる。

 ふっふっふ……王女兼大聖女と言う肩書きを背負っとるだけの事はあるな。



「……分かりました陛下。お受け致します……」


「まったく、時間を無駄にしおって……では儂について参れ」


「あ、あの、陛下も御同行なされるのですか?」


「一々疑問を持つな。黙ってついて来い」


「も、申し訳御座いません」



 儂も同行するに決まっとるじゃろうが。

 ラムリースは力ある聖女が生まれる事が多い。

 特にミュティアは歴代でもその力がずば抜けていると言う話を聞いた事があるが、その件に関しては儂も評価しとる。


 だからこそ今回彼女を呼んだ訳じゃからな。


 ずっと城の中と言うのも退屈極まりない。たまには儂も羽を伸ばしたいんじゃよ。


 今回のデートは儂の息抜きの旅でもある。

 

 1ヶ月間、しっかり扱き使ってやるから覚悟しておくんじゃな。


 大聖女ミュティア殿。



「くっくっく……ぐはははは!」

 


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