見習い天使リューエル
「リューエル……何でこの時間軸にあんたがいるの!?」
「人間のガキと……フェアリー……おかしなパーティだな。そこにお前がいる事が1番びっくりだよ……先輩」
「知り合いか?」
リラは首を縦には振らなかった。
ただ、リラと共通するところがこの男にはあったんだ。
「リラたんと同じ白い翼……なのです。貴方は天使様なのですか?」
「俺の後ろを走ってたのに、いつの間にかいなくなったんで気になって戻ったら、時間操作魔法を無断で使ってるお前を見つけたんだ」
レエナをまるで眼中に入ってないかのように当たり前に無視してる。
リラが話してた通り、俺達人間をただの家畜としてしか見てないんだ。
その事実とこの男の態度に段々苛立ちを覚える。
「まだガキとは言え、人間と接触し俺達天使の秘密を暴露しやがった。掟破りに裏切り、お前の行為は天罰ものだ」
「…………」
俯いて唇を噛むリラ。そうか、話しているところを見られてたんだな。
と言う事はこいつは結構前から俺達を尾行してたのか?
「天罰……でしょうね。でも、あたしは自分の正義を信じてる。天使様達のお考えや人間を滅ぼしてアーディルを奪い取るなんて……やっぱり間違ってる!」
「そうか。じゃあお前は人間側につく、って事なんだな」
「例え及ばなくても悪行には賛同できないもの!」
「だからお前はいつまでも見習いなんだよ」
「おいストーカークソ天使くん、何でレエナの質問に答えないんだよ。俺からも質問だ。そのもじゃもじゃのブロッコリーヘアは天界で流行ってんの?」
「あぁ? 家畜のガキが調子に乗るなよ。裏切り者に天罰を下した後、直ぐに狩り取ってやるから」
「先に俺をやれよ。アーディルってのが欲しいんだろ? それともガキ1人も相手に出来ないのか? クソ天使様」
「そんなに先に死にたいなら狩り取ってやるよ。家畜」
「リラとレエナは下がってろ」
ピコ……ブブー。
やっぱロックしてやがるな。
「お前……今俺をスキャンしたのか? 何で人間が……」
「まだビビんなよ。もっとビビらせてやるから」
「ほざけ!」
シュパッ!
消えた!
だが、大体こう言う時は背後か上から来る可能性が高い。
{ゼン←召喚【ミスティール】を召喚した}
∟{St100→87}
「ガキだろうが容赦はしない!」
両手が輝いたと思ったらいつの間にか大剣が握られ、俺に向かって真上から振り下ろしてきた。
【ミラージュムーブ】で回避が確実か。
{ゼン←命令【ミラージュムーブ】}
∟{St87→37}
{【ミスティール】←【ミラージュムーブ】を発動した}
ピシュン! ピシュン!
はい、入れ替え成功っと。
ズバッ!
大剣が【ミスティール】に命中する。
{【ミスティール】←1HIT 19886ダメージ}
∟{【ミスティール】←戦闘不能}
∟{ミスティール←CT240sec.}
「なんだこのキノコは」
「へへ、可愛いだろ? ミスティールちゃんってんだ」
「……召喚術か。魔力を感じなかったがどうやって召喚してる?」
〝リューエルからの【スキャン】のアクセスを拒否しました〟
なるほど、【スキャン】されたらこうやって分かるんだな。
大剣を構え直す黒髪ブロッコリークソ天使くん。
黒髪ブロッコリークソ天使くんも結構やるな。
うちのキノコちゃんが紙装甲にしても通常攻撃で2万ぐらいダメージ出てたもんな。
黒髪ブロッコリークソ天使くんも、リラと同じ見習いなんだっけ?
見習いでこの強さなら……あんま油断はしないでおこう。
と言うか、黒髪ブロッコリークソ天使くんってちょっと名前長いな。略そ。
「へぇー天使様が家畜に興味あるんだな。残念だがブロクソくん、企業秘密なのだよ」
「なんで天使の技を使えるんだ? なんなんだよお前」
「天使達が1番恐れてるものだよ」
スタミナ〜はよはよスタミナちゃ〜ん。
〝St67〟
よし! 【狼炎】!
ブゥゥン!
{ゼン←召喚【狼炎】を召喚した}
∟{St67→54}
「また何か呼び出したな。どう言う事だ……人間は魔力しか使えんはず」
「ウゥゥゥゥ!」
「いけ! 狼炎!」
素早く左右に跳びながら向かっていく俺のワンコちゃん。
そうだいいぞ、どっちから攻撃してくるか分からんだろう。
「こざかしい! ウォーライトブリッツ!」
バリバリバリバリ! ズバァァァァン!!
素人目で見てもあれに触れたら感電死しそうなぐらいの凄そうな電圧を帯びた奴の技。
それを薙ぎ払うように前方に放って来たんだ。
まあ大剣の振る速度が人間の俺でも目で追えるぐらい遅いから【狼炎】に当たる訳がない。
こっちで命令出さなくても、サッと背後に回っておててクローの連撃を繰り出すうちのワンコちゃん。
あ、ちなみに〝おててクロー〟って勝手にそう呼んでるだけでSt消費する技とかではない。
ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシューーン!
{リューエル←4HIT 15793ダメージ}
そうか、【スキャン】でステータスを見れない時は残りHpもログに表示されないんだな。
まあでも良いダメージ出してるよ【狼炎】!
「ちぃ! 目障りな犬め!」
ブン! ブン!
そんな大振りじゃ当たらないぞブロクソくん。
なんだったら、回避して攻撃、回避して攻撃をやって見せてる我がワンコちゃん。
まるでお餅つきだわ。
ただ、最後の攻撃は見切られていたのか大剣で防がれてしまった。
「ぐぐ……ぅ」
よし、【狼炎】戻ってくるんだ。
ピシュン。
〝St100〟
St回復パッシブをいっぱい取ったから、早く満タンになるんだよな〜♪【霊神召喚】いくか!
「……確かに本気でやった方が良さそうだな。人間相手にまさか本気を出すとは思わなかったが……」
「なんだよ、今までは本気じゃなかったのかよ」
「それに、お前の弱点も見つけたぜ。家畜」
ん? なんだアイツの周りに紫色のオーラが。
「はあぁぁ〜!」
地面が揺れる。今までは本気じゃなかったって言うのは嘘じゃなかったんだな。
「ま、まさかリューエルは……」
「アーディライズ!!」
ギュオォォォォォォォォーーーーー!!!
「や、やっぱり。……まだ見習いなのにもうアーディライズを……!」
リューエルの体が分厚い白銀の兜、白銀の鎧に覆われた……いや鎧と言うか、ロボットみたいな雰囲気すらある。
これが【アーディライズ】なのか?
「お前の弱点はな……」
スッ。
また消えた! 上か背後か……と考えていると真正面に現れ大剣を片手に素早く突きの構えで狙ってくる。
ダメだ、ヴァルガントに命令しても間に合わない!
「烈炎波動弾 ー!!」
ドォドォドォドォーン!!
リューエルの側面方向から凄いスピードで複数の火塊が飛んできた。
「ふん!」
ガツゥン!!
なに!?
全部弾き返しやがった!
「あのちっこいのは魔術士か。不意打ちとは卑怯者……」
「まだ終わってないのです!」
レエナ!? 俺はもちろん、リューエルも捉え切る事が出来ないスピードで俺達の頭上でホバリングしながら、また何か魔法を!?
両手を掲げてそこに大きな火の塊を作ってるんだが、まるで小さな太陽みたいにギラギラ燃え盛ってる。まだでっかくなるのかよ。
「烈炎球!!」
ズドォォォォーーーン!
{レエナ←魔術 【烈炎球】}
∟{リューエル←1HIT 141306ダメージ}
い、いちヒットで14万!? すんげぇーなレエナ……。
ただログには戦闘不能とは表示されていない。
それはまだ生きてる証拠だ。爆炎の煙が辺りに漂っていて視認が難しいが、油断しないで……う……ん?
グシュ。
「が……がはっ……」
{ゼン←1HIT 18996ダメージ}
∟{ゼン←戦闘不能}
「お前の弱点……それは、お前自身が弱い事だ」