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『 ニア 』 脚本バージョン

夏代孝明の『ニア』という曲に着想を得て書いた、オリジナル作品です。

テロップ

【 2060年アンドロイドは各家庭に普及し、家族の一員のような存在となっていた 】


――― レース場  

レースで先頭を走っていた汎用ロボット『ニア』の速度が低下する。

ニア「もうダメ。体力が残り少ない」

ゴールラインからその様子を見守っていたマージがニアを鼓舞こぶする。

マージ「ガンバレ! まだやれる! 最後まで諦めるな!」

速度が低下したニアの横を、ライバルロボットのさくらが追い抜く。

さくら「ニアちゃーん。またあたしの勝ちだね~。最初に飛ばし過ぎちゃったんじゃないの~?」

ニアを追い抜いたさくらが、そのままゴールラインを超える。

ゴールしたさくらを褒めたたえる、さくらの相棒キング。

キング「はっはっは。よくやったさくら! これで決勝トーナメント進出だ! このまま世界を目指そうぜ!」

エモートを出し合うさくらとキング。

キングは、マージとニアの近くに歩み寄る。

キング「よう、ニアちゃん。今回は相手が悪かったな。まあ、パートナーがマージじゃあ誰が相手でも同じ結果だったかな? はっはっは」

マージ「クッ、作戦に間違いはなかったんだ。ただ、ニアが……」

キング「ん? どうした、負け惜しみか? いつまでもBクラスに留まってないで、早く俺のところまで上がってこい。それとも、ここがお前の限界か?」

マージ「負け惜しみじゃない! ニアが最後にニトロを使うのを忘れなければ勝ってたんだ!」

ハッとショックを受けるニア

ニア「ニ、ニトロ……。そういえば、ニトロ使うの忘れてた。またやってしまった……」

ニアを振り返るマージ。

マージ「『またやってしまった』じゃないよ。なんでいつもそうなんだよ。肝心な所が抜けてるんだよ! ニアは」

ニア「抜けてる? 私、もしかして欠陥がある?」

マージ「欠陥かどうかは知らないけど、とにかくミスが多すぎる!」

ニア「ミスが多いと……、売りに出されちゃう?」

少し考えながらウロウロするマージ。

マージ「このまま失敗ばかり続くようなら……、もしかしたらそうなるかもな! だから気を引き締めて……」

マージに背中を向けるニア。

ニアの心の声(失敗したら売られちゃう? 必要ないって思われたら、売られちゃう……」

マージに歩み寄るキング。

キング「おい、言い過ぎだぞ」

ニア「いいのキング、マージを責めないで。だって、マージは悪くない。言ってること、間違ってないもん」

場外に走り去るニア



――― マージの家

マージは部屋で1人、ニアの帰りを待っている。

マージ「あいつ、どこに行っちまったんだ。帰ってきたら説教してやる。だいたいあいつは自分勝手なんだよ」


――― 回想シーン

・ニアとマージがランニングしてる途中、ニアが珍しいオブジェを見つけて、そっちへ寄り道してしまうシーン

・ニアとマージが、飲食店でビールやお皿を振り回して、はしゃぎ合うシーン



――― マージの家

時計の近くに移動するマージ

マージ「グズグズしてると、外が暗くなっちゃうだろ。かと言って、自分から探しに行くのもしゃくに障るしな」

その時、部屋に入ってくる人影が。ニアが返ってきたと勘違いして玄関を振り返るマージ。

マージ「遅いじゃないか」

入ってきたのはキング。

キング「お、遅いって何がだ? ていうか、トロフィーを見せびらかしに来たぞ」

辺りを見回すキング。

キング「あれ? ニアは?」

マージ「ニアならあれから帰ってきてないよ」

キング「帰ってない? じゃあ、お前はここで何してるんだ。ニアにあんな酷いことを言っておいて、「帰ってない」で済ます気か?」

マージ「そんなこと言ったって仕方ないだろ? 出て行ったのはアイツの方なんだから。きっとその内帰ってくるさ。いつものことさ。ハハッ」

キング「おい、何言ってんだ! お前がそんな態度じゃ、ニアは帰ってきたくても帰ってこられないだろ。どうすればいいかなんて、自分でも分かってるんだろ? お前の方から動けよ! 暗くなる前にさっさと探しに行け! 行かないんなら、俺が代わりに行っちまうぞ!」

急にソワソワして部屋を歩き回るマージ、外に出て周囲を見回す。

マージ心の声(くそ、僕はバカだ。いつの間にかニアがパートナーであることを、当たり前と思ってた。うぬぼれて、自分が見えなくなって。ニアがその気になれば、もっとずっと条件のいいパートナーが居るじゃないか。それなのに、あいつはずっと僕を選んでくれてたんだ!)

部屋の中に戻ってキングに声をかける。

マージ「すまんキング、トロフィーは今度またゆっくり見させてもらう!」

部屋を飛び出すマージ。



――― マージがニアを探すシーン

・シーン1  さくらの家を訪ねるマージ

さくら「ニアなら来てないけど? ねぇ、ニアを探してるなら、私も手伝おうか?」

マージ「あ……、いゃ、これは僕とニアの問題だから……」

さくら「ねぇマージ、あなた何をカッコつけてるの? 助けが欲しいなら、そう言えばいいじゃない。もっと強くなって! 私だって力になりたいんだから」

反省して少しの間考えを巡らせるマージ。

マージ(たしかにさくらの言うとおりだ。体裁ていさいつくろってる場合じゃない)

マージ「さくら、頼む。ニアを探すのを手伝ってくれ! このとおりだ」

さくら「OK! 私、手伝うよ!」


・シーン2  土手をウロウロ

マージの心の声(ダメだ、ここにも居ない)

外が暗くなってきた。

薄暗いワールドで「転ぶ」または「落ちる」

足を痛めるマージ。

心の声

(「痛ッ」こんな暗がりじゃあ、ニアだって転んでしまうかもしれない。ニアがケガをしたら僕のせいだ。試合だって……、いや、試合なんてどうでもいい。ニアが喜んでくれないとしたら、僕はいったい何のために戦うんだよ!)

立ち上がって再び走り出すマージ。

心の声

(もう絶対に手放さないって誓う。だから、もう一度姿を見せてくれ!」



――― ニアの開発者 博士の家


ボニーヨが部屋の片隅でダンストレーニングをしている所にニアが飛び込んでくる。

ボニーヨ「あ、ニア! 久しぶり。遊びにきたの?」

ニア「う、うん。まあそんなとこ。ねぇ、博士いる?」

部屋を見回すボニーヨ。

「あれ? さっきまでそこに居たんだけどな。どこ行ったんだろ? ちょっと探してくるね」

登場する博士。後ろからボニーヨがついてくる。


ニア「ねぇ博士……。私のお部屋、まだ残ってる?」

博士「おい、どうしたニア。連絡もせず急に来るなんて。まあいい。とりあえず中に入れ」

居間に移動し、ソファに腰かける博士とニア。

ニア「ねえ博士。教えてほしいの。私ってダメなアンドロイド? マージが私の事、ミスばっかりするって……。博士、私のことちゃんと作ってくれなかったの?」

博士「おい、バカなことを言うんじゃない。お前は俺の最高傑作だ。病気で亡くなった娘に少しでも近づくよう、何年も、何年も、少したりとも妥協せずに創り上げたのがお前だ。前にも言っただろう」

ニア「だったら、なんで私には欠点が多いの?」

博士「欠点が多くて何が悪い」

ニア「だって、みんなに迷惑をかけるから」

博士「お前は何も分かってないな。欠点こそが魅力なんじゃないか。愛情っていうのはな、足りない部分を補い合うから生まれるんだ。だから、ミスもするし欠点もある。それでいいんだ。もし外で嫌なことがあったなら、気が済むまでここに居ろ。俺がいつまでだって面倒みてやる」

博士の隣に移動するニア。

ニア「そんなこと言って、ここに居させて料理とか掃除とかさせるつもりでしょ?」

そのまま眠りについてしまうニア。



――― 数刻後…… 博士の家 玄関先

マージ「博士。僕です。マージです。ニアはここに来ていませんか?」

玄関から出てくる博士。

博士「マージか。随分と来るのが遅かったな。もっと早く来ると思っていたぞ」

マージ「ニアは、ニアはここに来ていませんか?」

博士「ニアならいる。ただし、事情を聞いて俺が納得するまで、お前には合わせん」

言い争いの声に目を覚ましたニアが、2人の前に姿を現す

ニア「どうしたの? あ! マージ! 迎えに来てくれたの?」

ニアの前に立ちふさがる博士。

博士「おい、勝手に出てくるんじゃない。お前は中に入ってろ。夜風に当たると、無駄にエネルギーを消費してしまうじゃないか」

マージ「待ってニア。僕から君に伝えたいことがあるんだ」

博士の陰から姿を現すニア。

ニア「そんな顔しないで? マージ。私、分かってるから。あなたの気持ち、聞かなくても分かってる」

博士に顔を向けるニア。

ニア「ねえ博士、マージを中に入れてもいいでしょ? 暖かい紅茶をみんなで飲んだら、そしたら私、マージと一緒に帰るから。それまでもう少しだけ……。ここに居させて……」



曲「ニア / 夏代孝明 」  カバー曲を字幕付きで1番だけ流してテロップへ


テロップ1

【 produced by さくらサブカルチャー学園 】



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