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穏やかな眠り

「叔父様、叔母様、お願いします! ルークはまだ怪我が完治してないんです!」


 本当は怪我ではなく呪いだが、今はとにかく二人に許しをもらうのが優先だ。


「黙っていてごめんなさい……獣人族の世話をするって聞いたら二人とも心配して反対するんじゃないかと思ったの……でもどうしても私はルークが完治するまで、見守っていたい! もし二人の迷惑になるなら、私もしばらくルークとこの町を離れるわ!」


 叔父と叔母も商売をしている。その商売が軌道(きどう)にのり、今は男爵という地位まで授かったのだ。

 いつもレナを心配してくれる二人に迷惑はかけたくない。

 しかし、ルークのことも簡単に諦めたくはない。

 レナの強い意志のこもった目に、叔父と叔母は戸惑うように二人で顔を見合わせる。


「レナ、もういいんだ。レナがそこまでする必要はない」


 ルークが間に入り、レナを落ち着かせるように語りかける。

 しかしレナはいいえと首を横に振る。


「これは私の意思よ。お願いルーク、最後まで見させて。きっとルークが完璧に元に戻れば、私も力を完全に扱えるようになる気がするの。だからこれは私のわがままなのよ?」


「レナ……」


 レナは叔父と叔母に向かって頭を下げる。

 ルークも叔父と叔母のほうを向くと、頭を深く下げた。


「レナにもお二人にも迷惑をかけて申し訳ない。図々しいのは承知のうえですが、もうしばらくここに置いてはいただけないでしょうか? 絶対人前で獣人族とバレるような軽率な行動はとらないと約束します」


 すると頭上から困ったようなため息が聞こえた。



「二人とも、とりあえず頭を上げて。私たちは別に二人を追い出そうとしているわけではないよ」


「ええ。事情はわかったもの。レナちゃんは怪我人をほっておける子ではないのもよくわかっているし、まだ子どもといえども獣人族を保護してくれるような場所なんてこのローゼンタールにはないでしょう」


 レナとルークがおずおずと頭をあげると、叔父と叔母は困ったように笑いかける。


「彼の怪我が完全に治るまで、レナがお世話をしてあげなさい。でも他の人に獣人族ということがバレないようにするんだよ?」


「よ、よろしいのですか?」


「あなたもまだ子どもなのに怪我をして一人で見知らぬ土地に来るなんて心細かったでしょう? 私たちにできることがあれば言ってちょうだい」


 二人は優しい笑みを浮かべ、ルークの肩にそっと手を乗せる。


「叔父様、叔母様、ありがとう!」


 レナの言葉に優しげに頷いた二人だったが、次の瞬間きっと真剣な表情に変わる。

 突然の変化にレナは嫌な予感がして、一歩足を引く。


「彼がしばらくここにいることはいいとして……レナ、いつも言っているだろう? 何かあればすぐに私たちに言いなさいと! どれほど心配したことか!」


「そうよ! レナちゃんたら! そういえばさっき私の力がどうのとか言っていたわよね? そのことも洗いざらい全て話しもらおうかしら?」


「えっと……それは……」


 レナがそっと後ずさると、叔父と叔母はガシッとレナの腕を掴む。


「さぁ、ゆっくり座って話そうか?」


 無理矢理椅子に連れて行かれ、助けを求めるレナの視線に苦笑しながら、ルークも三人の後に続き席に座った。





「はぁ……疲れたわ……」


「お疲れ様」


 机にぐったりとして突っ伏しているレナにルークがいたわるように飲み物を渡す。


「ありがとう。こんなことなら最初からルークのこと話しておけばよかったわ」


 あの後散々質問攻めにされたレナは大きなため息をついた。

 呪いのことは流石に話せなかったが、レナが光属性の魔法を使えること、魔力操作をルークから習っていること、そして先日起きた惨事など全て話した。

 二人は驚き、心配そうにしながらも、結局最後はいつものように優しい笑顔で自分たちはレナの味方だから何かあれば頼って欲しいと言って帰って行った。

 二人にルークのことを話せて、受け入れてもらえたのは良かった。しかし、どっと疲れたレナは机に頭を置いたままウトウトと目を(つむ)る。


「レナ? こんなところで寝たら風邪をひくぞ?」


 ルークが肩を揺するが、レナは相当疲れていたらしくそのまま寝てしまった。

 ルークは仕方ないと苦笑を浮かべるとレナを横抱きに抱えあげた。


「レナもレナの叔父さんと叔母さんも人が良すぎるな……変な奴に(だま)されないか心配だ」


「ん……ルー……ク…………呪いは私に任せて……」



 寝言でもルークのことを心配しているレナにルークはふっと柔らかく笑う。


「まったく……呪いが完全に解けるまでと思っていたが……これじゃあ離れがたくなるな」


 ルークはベットにそっとレナを下ろすと、優しく頭を撫でた。


「本当にレナには感謝しているんだ。ゆっくり休んでくれ」


 ルークはレナの額に顔を寄せると、チュッと軽く唇を寄せる。


「おやすみ、レナ。いい夢を……」



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