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「お前ごときで私を倒せるとでも?」


「先程までと同じと思うな!」


 ルークがレイラに向かって剣を振り下ろすと、レイラも圧縮していた黒いモヤをルーク向かって放った。

 ルークは黒いモヤを斬ろうと剣を振り下ろすが、剣とモヤの間で火花が散る。

 力が拮抗しているのか、それぞれ押し合っている。


「ルーク!!」


 レナがはらはらしながら見守っていると、服の裾をフレディ引っ張られる。


「レナ、君の力で光の木を元気にできないか?」


 フレディが示す方向へ視線向けると中庭の中央に大きな木が見える。しかし元気がなく、葉は枯れ落ち、枝もところどころ折れている。


「光の木が元気になれば魔族は力を存分には使えないはずだ」


「わかりました。やってみます!」


 レナはジョウロを握り込むと、いつも庭の植物に力を流す感覚でジョウロを傾ける。


(大丈夫……ジョウロに水は入ってないけど、コツは掴めたもの! もう水なしでも大丈夫だわ!)


「お願い! 元気になって!!」


 ジョウロから流れ出した光の粒が瞬く間に中庭全体広がり、光の木が淡く光り出す。

 するとルークに放たれた黒いモヤはだんだん小さくなり、端からボロボロと崩れ出す。



「何だこの光は……うう……」


 魔族たちや魔物が唸り、動きが鈍くなる中、ギャビンの声が響く。


「今です! 奴らの動きが鈍くなっている間に倒すのです!!」


「「「おー!!!」」」


 騎士たちからも雄叫びが上がる。


「この光……あの小娘の仕業か!?」


 レイラがレナを睨みつけ攻撃を放とうとしたところでルークが横あいからレイラを切りつける。


「チッ……お前の相手は後でしてやる! 引っ込んでいろ!!」


「はい、そうですかって引っ込むわけがないだろう? 観念しろ!!」


 レイラは忌々しいというように顔を歪ませ、ルークに向かって黒いモヤを使い攻撃を仕掛けるが、ルークはそれを軽々とさばく。


 そうしてみんなが戦い続いている間もレナは光の木へと力を注ぎ続ける。


「レナ、そろそろ大丈夫だ! 光の木も元気になってきた!……レナ?」


 呼んでも反応せず力注ぎ続けるレナにフレディは焦ってレナを呼び続ける。


「おい! レナ? レナ? 聞いてるか?」


「大丈夫……大丈夫……私ならできる」


 集中しすぎて周りの声が聞こえていないのか、レナは目を瞑り小さく呟きながら、もはや中庭中に溢れ過ぎている力をさらに流し続ける。


「ううう……」


「ギャー……」


 中庭に次々と響く悲鳴にフレディが周囲を見回すと魔族や魔物たちが次々に騎士たちに斬られ、そしてレナの光魔法により光の粒へと分解されている。


「何て力だ……」


 フレディは驚きのあまり目を見開いて固まる。

 そして遂には光の木自体が大きく成長を始めた。

 元々大きな木であったが、王宮を飲み込む勢いで成長を始める。これには流石に周囲も焦り始め、戦闘を終えたギャビンが急いでレナに駆け寄ると肩を大きく揺する。


「レナさん! レナさん! ストップ!! ストップです!!」


 そこでようやく目を開いたレナは光の木を見てギョッとする。


「え? あれ? 光の木? えっ……どういうこと?」




「ふっ……さすがレナだ……」


 戦いながらもレナ様子を見ていたルークはふっと吹き出すと、もう一度集中を高めて剣を握りなおした。


「さぁ、もう先程のような力は出せないだろ?」


「くそ!! 忌々しい!!」


 レイラの怒りに満ちた声が響くが、次の瞬間ルークがレイラの懐に入ると斜めに大きく斬りつけ、ついにレイラもルークの剣に倒れた。


「うっ……あと少し……あと少しだったのに……」


 小さく恨み言を呟くレイラだが、体は光の粒に分解されて少しづつ消えていく。


「光の木は決して魔族などには奪わせない」


 ルークの言葉にレイラは鬼の形相で睨みつける。


「私は諦めない……覚えていろ……」


 その言葉を最後にレイラの体が光で分解された。




「ルーク!! 大丈夫?」


 レナがルークに駆け寄ると、ルークはレナを抱え上げた。


「レナのおかげだ!! ありがとう!」


「うわっ!! ルークおろして!」


 二人の様子に周囲からも戦いが終わったと歓声があがる。

 そんな中ギャビンが深刻な顔でフレディに尋ねる。


「フレディ様、先程のレイラの言葉どう思われますか?」


「あれほどの力を持っていれば、体は無くともしばらく精神体のみで生き続けることは可能だろうな。しかし……」


 そこで言葉を切るとフレディは光の木を見上げる。


「これほど大きく成長し、力に満ちた光の木がある限りレイラが戻ってくることはないだろう。レナはおそらく歴代最高の光の守り手だろうな」


「そうですね」


 ギャビンとフレディは微笑みながらルークとレナを見つめる。


「だが、これからギャビンは忙しくなるのではないか?」


「え?」


「あのルークがあれほど心を許し、見るからに好意を寄せているんだ。きっと彼女を番に迎えると言い出すぞ? 番の魔法も彼女に使うといい出すのは目に見えている」


 番の魔法とは獣人族特有の魔法で生涯愛し続けると誓った相手に自分の魔力を刻み込む魔法だ。

 それがある限り相手のことを常に感じ取ることができ、より相手を愛おしく思うのだ。生涯で一度だけ使えるただ一人を愛し守るための魔法。それが番の魔法だ。


「やっぱりそうなるでしょうか?」


「なるだろう。ルークは案外独占欲が強いからな。レナはローゼンタールの平民の娘なんだろ? これからいろいろ手配しなくてはいけないだろうな。まぁ頑張れ! 私もレナのことは気にっているから何かあれば手は貸してやる」


「ありがとうございます」


 これからのことを思い複雑な表情をするギャビンにフレディはくすくすと笑うと、自分の体の呪いを解いてもらうためレナたちのもとへと歩き出した。

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