力の覚醒
「うーん……やはりレナの力は特別なようだな」
「え?」
「これだけずっと森を歩いて一匹も魔物と出くわさないとは……」
「私運はいい方なんですよ!」
「いや、運がいいだけでは片付けられないだろう。これは予想だがレナの力が奴らを遠ざけているのかもしれないな……」
「光属性の魔法にそんな力があるんですか?」
「いや、光属性の魔法にはそんな力はない。……やはりレナこそ光の守り手なのか? 魔族の強力な呪いを解くなんてただの魔法使いには無理だろう……」
フレディの小さな呟きを聞き取れずレナは首を傾げる。
「あの?」
「ああ……いや、なんでもない。とにかく先を急ごう。もう少しで王宮の入り口が見えてくるはずだ」
「フレディさん、あれ!」
レナとフレディが森を抜け、王宮の入り口近づくと、そこには獣人の騎士が大勢倒れていた。
レナは急いで駆け寄ると話しかける。
「大丈夫ですか?」
「おい! しっかりしろ! この紋章は……ルークが指揮している騎士団か?」
「うう……なんで……こんなところに人間が……君、はやく…逃げるんだ……」
苦しそうに答えながらも、レナを心配する言葉にレナはジョウロを手に立ち上がる。
まだ上手く力を制御できないが前にルークが言っていた。怪我人に水をかけると回復するのではないかと。あの時はそんな酷いことと思ったが、今は一刻を争う。ここに医師はいないし、この騎士たちをどうにかできるとしたらレナだけなのだ。
レナは深呼吸して集中力を高める。
「レナ? そのジョウロは何だ? 何をする気だ?」
フレディの怪訝な目にレナは微笑みで答えて、深呼吸する。
(大丈夫……水は少ししか入っていないけど、本来は媒体なしで力を使えるものだってルークが言っていたもの……)
「フレディさん少し離れていてください」
レナはジョウロに力を流しながら、騎士たちの傷が癒えるように強く願う。
「お願い! みんなを癒して!!」
そしてジョウロから水を流すように周囲に振り撒くと辺りいったいが光に包まれる。
レナの体から強い光が溢れ、その光が騎士たちの体を包み込む。
「こ、これは……」
フレディがレナの後ろで息をのむ。
光が緩やかにおさまると騎士たちがゆっくりと動き出す。
「あれ? さっきまで苦しくて死ぬかと思っていたのに……」
「なんだこれ? 傷が消えてる」
「俺、助かったのか?」
「今の暖かい光は何だったんだ?」
所々から上がる驚きの声と回復を喜ぶ声に、レナは安心して大きく息を吐き出した。
「よかった……上手くいった」
「ありがとう! あなたが我々を助けてくれたんだろう?」
先ほど話しかけた騎士がレナに近づくと他の騎士もそれに気付きレナのほうへと視線を向ける。
「いえ、私は自分ができることをしただけです。それより、ルークは? ルークはどこにいますか?」
「ルーク様? 君はもしかしてルーク様の呪いを解いてくれた人か?」
「ルーク様ならこの先の光の木が植えられている中庭にいるはずだ。我々が魔物と魔族を引き付けている間に先に向かってもらったのだ。しかし我々も全てを倒しきることはできず、一部がルーク様の後を追いかけて行った……」
「それでは早くルークたちを追わなくては」
「!! この声は……まさかフレディ様ですか?」
レナの後ろから出て来たフレディに騎士たちが騒ぎ出す。
「その姿はまさか……フレディ様も呪いを受けていたのですか?」
「そうだ」
「大変です! 殿下たちはフレディ様と魔族を引き離せば、フレディ様の暗示が解け、元に戻ると信じていらっしゃいました。精神が離され本来の体が魔族の好きに操られているのであればルーク様たちが危険かもしれません……」
「急ぎましょう!!」
レナは嫌な予感にぎゅっと手を握り込むと、騎士たちと共に王宮の中庭を目指した。
「レナ、止まれ! そこを右だ!」
途中何度か魔物に遭遇したが、弱っていたのか動きが鈍く、一緒にいた騎士たちが瞬く間に倒してくれた。そしてフレディの指示のまま走り、大きな扉の前に着いた。
「その扉の奥が王宮の中庭だ」
扉の奥からは剣と剣がぶつかるような激しい戦いの音がする。
(ルーク……どうか無事でいて)
レナは強く祈りながら扉を開いた。
「ルーク様!!!」
扉を開くと同時にギャビンの叫び声が響き、ルークが弾き飛ばされ、壁へと突っ込んだ。
「うぅ……」
ルークの苦痛から漏れ出た声にレナは大声で叫んだ。
「ルーク!!!」
頭から血を流しながらもルークはレナへと視線を向ける。
「レナ? どうして……」
レナがルークの元に駆け出すと同時に今度はルークが叫んだ。
「レナ! 来るな!!!」
ルークの視線がレナの背後を捉え、顔が強張る。
レナもルークの視線に後ろを振り返ると眼前に鋭い刃が迫っていた。振り下ろされる刃にレナは身動きができず、ぎゅっと目を瞑った。




