新たな出会い
レナが獣王国に向かっても何の役にも立たないかもしれない。
しかし、もしルークがまた呪いをかけられ命の危機に陥った時は助けられるかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られず、レナはすぐさま旅の準備を整えた。
「よし! それじゃあ最後にこれね!」
レナは手にしっかりジョウロを握ると、獣王国に向かって歩き出した。
レナの住んでいる場所から獣王国との国境は近い。
しばらく歩くと国境へと到着する。
「ここを越えれば獣王国よね」
緊張しながら一歩踏み出すと、なぜか目の前には何もないのに前に進めず、レナは首を傾げながら、手を伸ばす。
するとまるで透明な壁でもあるかのようにそれ以上先には進めず、レナは小さく唸った。
「うう……何これ……どうしたら中に入れるのかしら……」
手で叩いてみるが何も変化は起こらない。
「もしかして魔法か何かかしら……それならこの水でどうにかできないかしら? でもジョウロに入る分しか水は持ってきてないし……少しだけ……」
レナは持ってきたジョウロから水を撒く。
すると視界がグラグラと揺れ獣王国側の景色が揺らぎ、透明な膜が円形に切り取られる。
その円に向かって恐る恐る手を伸ばすと、手が獣王国側へと入った。
「やった! 入れたわ! また閉じちゃったら大変だし、早く入らなきゃ!」
レナは急いで円の中をくぐった。
それからしばらく森の中を歩くうちに、レナは自分の無鉄砲さに頭を抱えた。
「どうして私ったら何も考えずに出てきっちゃったのかしら……獣王国の街の場所も何も知らないのに、何をやっているのかしら」
自分の不甲斐なさに落ち込んでいると、ガサっと草をかき分ける音に驚き足を止める。ここは森の中だ。もし大型の野生動物とでも出くわしたら撃退することはできない。
ガサガサと茂みをかき分ける音にレナは近くの木へと身を隠す。緊張で早くなる心臓を落ち着かせるため大きく息を吐きながら、レナはじっと音のする茂みへと目を凝らす。
「あ、あれは……と、虎?」
茂みから出てきたのは子虎だった。
「やっぱり獣王国には虎はその辺に普通にいるものなの? 子虎がいるってことは親が近くにいるのかしら……」
レナは木に隠れたまま警戒しながら子虎の様子をうかがう。
この子虎はルークとは少し毛色が違い、少し黄色が混じり、プラチナブロンドのような毛並みをしている。
子虎は警戒しているように周囲を見回し危険がないかを確認すると歩き出す。しかしどこかふらふらしており、左足を庇っているようにも見える。
しばらく観察していたが親の気配はなく、周りも静かなためレナは意を決して子虎に近づいた。
「あなた怪我してるの?」
レナが近づくと子虎は警戒するように背をかがめ、唸りながらレナを睨みつける。
「あ……怖いわよね……でも大丈夫よ。私はあなたを傷つけたりしないし、あなたの手当をしたいと思ったの」
レナはどうしようかと迷い、とりあえず持ってきていた水筒の容器に水を入れて子虎の前に差し出す。
「お水よ。いらない?」
レナは子虎から数歩下がり様子を見守る。
すると子虎はチラチラとレナを見ながら、水を飲み出した。
「よかった……でもこうやって見ると……少し毛色は違うけど、ルークが虎だった時とそっくりね」
子虎はその言葉にぴくりと耳を動かすとレナを見上げる。
「まさか……ルークを知っているのか?」
子虎から聞こえてきたルークの時と全く同じ状況にレナは一瞬固まると、頭を抱えた。
「あ、あの〜つかぬことを聞きますが、もしかして獣王国の王族のルークと関係があったりしますか?」
突然変わったレナの反応に子虎はびっくりしたように目を見開く。
「もしかして言葉が通じている? 君はルークを知っているのか?」
「えっと……ルークのことは知ってます。もしかしてあなたも呪いをかけられて今の姿に?」
「呪いのことも知っているとは……まさか魔族の仲間か?」
子虎は警戒して毛を逆立てる。
レナはブンブンと頭を振って否定する。
「ち、違います! 私はルークを助けたくてここまで来ただけで魔族と関わりはありません! それにルークの呪いを解いたのは私なのであなたの呪いを解くお手伝いもできるかもしれません」
「ルークの呪いを解いただと? まさか君は光の守り手なのか?」
「それは分かりませんが、光属性の魔法が使えるんです。制御はまだ全然できないんですけど……」
「そうなのか……俺はフレディ・エドワーズ、ルークの兄だ。すまないが君が知っていることを教えてくれないか?」
「ルークのお兄さん!? わ、わかりました」
レナは小さく頷くと、今までのことをフレディに話した。




