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隠した感情

「今の最優先事項はやはり俺の呪いが完全に解けることだな」


「そうですね。今の状態では以前の半分も力が出せないでしょうし……とにかくレナさん、引き続きルーク様をよろしくお願いします」


 レナから見るとルークは力持ちだし、ギャビンを追いかける時もすごいスピードで走っていたが、どうやら今はその能力も全て出しきれてないらしい。


「はい、任せてください。あの……呪いにかかる前のルークの力ってそんなにすごかったのですか?」


「ルーク様はどの者より武術に長けていらっしゃいますし、他の者の剣技などルーク様の足元にも及びませんよ。しかも歴代のどの白虎獣人より力が強いと言われてますから。でも今の状態ではまともに戦うこともできないでしょうね」


「戦うって……」


 不穏な言葉にレナの顔色悪くなる。


「先程話していたが、俺たちは呪いかけた奴らを倒さないといけないんだ。そして獣王国を守らなければいけない。大丈夫! 奴らにレナへの手出しは決してさせないから安心してほしい」


「私が心配してるのはルークたちが危険な目に遭うんじゃないかってことよ? 奴らってそんなに危ない人たちなの?」


「心配してくれてありがとう。以前は突然のことで何も抵抗できなかったが、今度は違う。呪いの影響で奴らのことは話せないが次はしっかり準備して奴らを返り討ちにしてやるさ」


 ルークの力強い言葉にギャビンも大きく頷く。

 それでも不安気なレナの表情にルークがニッと笑いけかける。


「大丈夫だ! それにレナに出会って、さらに負けられないって気持ちが強くなったからな!」


「え?」


 レナが首を傾げるのと同時に目の前まで迫ったルークがニヤッと笑うとレナの額にキスを落とす。


「ル、ルーク!?」


 レナが非難を込めて名前を叫ぶがルーク何事もなかったかのようにギャビンに指示を出す。


「引き続き情報の収集にあたってくれ」


「わかりました。……ですがルーク様、行動には気をつけてくださいよ! 後々どうなっても知りませんからね!」


 ギャビンのジト目にルークはしらを切るように視線を逸らした。




 あれから数日、何事もなく日々が過ぎ、変わらない現状に焦りを感じたレナは頭を悩ませる。


「う〜ん……どうしたらジョウロの水以外に魔法を流せるのかしら……」


 レナは首を傾げながら、スープをかき混ぜる。

 ルークたちの状況を聞き、早くルークの呪いを解いてあげたいとは思うが、力の制御は全く上達していない。


(呪いが解けたら、ルークはすぐ獣王国に戻っちゃうのよね……やっぱり寂しい……)


 そんなことを考えて、レナはハッとして頭を振る。


(ダメダメ! ルークたちには国を守るっていう重責を負っているのに、私ったらなんて自分勝手なことを……)


 レナはため息を吐くと、手を止めてスープを覗き込む。


「そういえばルークは私の育てた野菜を食べてるから呪いが薄れてるって言ってたけど、スープだって水なんだし、スープ自体にジョウロに注ぐみたいに力を流し込めないかしら?」


 もしそんなことができれば野菜を摂るよりよっぽど呪いを解く力が上がるのではないか?

 レナはじっとスープを見ながら、ジョウロに力を注ぐ時と同じように力をそっと流し込んでみる。

 するとふわりの柔らかな光が少しずつスープへと流れ込む。


「あれ? もしかして成功?」


 スープ全体が優しい光に包まれて、キラキラと輝いて見える。


「ルーク! ルーク! ちょっと来て!」


 レナの興奮した呼び声にルークがパタパタと廊下をかけて来る。


「どうした!? 何かあったか?」


 ルークがキッチンに顔を出すとレナがこっちこっちと手招きする。


「ルーク、これを見て欲しいの!!」


 ルークは不思議そうに首を傾げると、レナに従ってスープ覗き見る。


「これって……まさか、スープに光属性の魔法を流し込んだのか?」


「うん。これって成功してるのかな?」


「すごいじゃないか! スープにレナの魔力を感じる。ついにジョウロの水以外に魔力を流せるようになったな!」


 ルークの労いの言葉にレナは嬉しそうな笑みを見せる。


(やった! 本来は媒体がなくても使えるのが普通なんだけど、それでも一歩前進だよね!)


「ありがとう! それじゃあ早速このスープ食べてみましょう!」


 スープをお皿に入れ、二人はそそくさと椅子に座ると、スープに口をつけた。


「うまいな!」


 ルークの賞賛にレナは微笑む。

 味自体はいつものスープと大きな変化はない。

 しかし、スープを飲むほどに疲れが癒やされるような心地よい感覚になる。


(体の中からポカポカするような、なんだか不思議な感じだわ……それよりもルークの呪いには効果があるのかしら?)


「ルークどう? 何か体調に変化はあるかしら?」


「体は癒やされている感じがするな。呪いのほうは今のところ何も変化はないが……今までもスープを飲み続けることで変化が出ていたし、呪いに関してはそうすぐには効果は出ないのかもしれないな」


「そっか……」


 残念そうなレナの様子にルークは苦笑する。


「でもきっとこのスープでさらに一歩前進できていると思う。ありがとう、レナ。俺も呪いが解けた時に備えて準備しておかないといけないな。すぐにでも獣王国に行けるように」


(そっか……そうだよね……ルークは呪いが解けたらすぐにでも国に戻っちゃうのよね……)


 また寂しい気持ちが胸を占め、レナはそれを振り払うように元気よく立ち上がる。


「私も早くもっと力を操作できるように頑張るわ!」


「レナ?」


 レナのどこか自分の感情を隠すような笑みにルークは声をかけるが、レナは笑みを貼り付けたまま、片付けを始めた。

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