意味
「……だが、これだと複数の中心点がないといけないんじゃないか」
演算モデルをみながら、俺はつぶやく。
結果から考えられる意味としては、何千光年かさらに大きいところに、ポツンと一つの特異点ではない。
数万光年は隔たっているものの複数の特異点が同時多発的に生じなければ、このようなものは起きないはずだった。
「そうなんですが、こんな複数の特異点が同時に起こることなんて、自然ではありえないことでしょう」
「誰かが意図的にしたって言いたいのか。宇宙人だな」
佐藤の言葉を俺は茶化す。
だが今の情報だけで推定すると、そうとしか思えなくなってしまっていた。
特異点が分裂をしたとしても、少なからずの技術がないといけないのは明白だ。
そして、人類は今のところその技術水準に達していない。
「しかし、まさに宇宙人の仕業としか考えられないのです。ブラックアウト領域が、自然にできたものとは到底考えられませんから。やはり人工的にしたと考えるのが妥当でしょう」
「しかし、どうしてだ。仮に宇宙人の仕業だとして、何が目的なんだ。彼らはこんなブラックアウト領域を作って、何がしたいんだ」
「皆目見当もつきません。はっきり言えば、現象しかわからずに、それも巨像の足の裏しか見ずに、全体像を理解しろと言っているかのようなものです。理解できるはずがないんですよ」
数万光年にわたる虚無空間。それが意味することは、結局人智を超えた存在を証明するだけだったようだ。