ブラックアウト
「こんなにたくさんの星が消えているのなら、この地球も消えるのも近いんじゃないかって思ってしまって」
「そうだな……」
俺は佐藤の横にキャスター椅子をもってきて座る。
「結局のところ、この現象がどうして起こっているのかがわからない以上、それも可能性の一つとして考えておかないといけない事象だ。何が起こるか分からないからな」
俺は言う。
「だが、どうせ地球が消滅するのであれば、それまでは研究を続けよう。もしかしたら回避できる現象なのかもしれないからな」
残念だが、俺が言えるのは、どうせこの程度だ。
励ますことぐらいしか、今はできない。
見えない領域、ここをブラックアウトということにしたのも、ついこの前のことだ。
「ブラックアウト領域について、それで分かったことはあるのか」
「ダークマターエネルギーが予想よりも集積をしているようです。重力モデルによると、新しい銀河でもできる勢いだとか」
手野グループのスーパーコンピューターを利用しての、大規模な演算の結果が、佐藤の前にあるパソコンモニターに表示されているのが見えた。
それによれば、つい50年ほど前にエネルギーは集まり始めたのだという。
種自体はもっともっと昔のようだが、この核によって重力の谷のようなものが生じてしまい、際限なく増えているということのようだった。