場所
「私の名前を伝えれば、すでに装置を自由に用いることができるようにしています。もちろん、そちらの方々も」
言っているのは俺と佐藤のことだ。
量子ビットの生成装置を、とてつもなく高額な装備を一言で使ってもいいようにしたということだ。
「ありがとうございます。さっそく二人が行くことでしょう」
前側氏はお礼を副総裁へと伝える。
「一つ、よろしいでしょうか」
おずおずとした感じで、ゆっくりと手をあげるのは佐藤だ。
「ええ、どうぞ」
それににっこりと微笑んで副総裁は答える。
「その施設は、どこにあるのでしょうか。私たちはこれからどこに向かえばいいのでしょうか」
「ああそういえば、お伝えしていませんでしたね」
そう言いながら近くにあるパソコンに、カタカタと何かを打ち込む。
すぐに会議室の隅にあるプリンターが動き出し、紙を3枚、それが1組となり俺用と佐藤用の合わせて6枚のA4の紙が吐き出された。
「そこに記載されている通りです。場所はノースダコタ州。グランドフォークスという市の校外にあります。そこは安定している土地を持っているので、こういったものを作るのにとても適しているのです」
手野市からそこまでの詳しい行きかたも教えてくれている。
出発地が手野市役所前になっているが、それぐらいならわかりやすいものだ。
「ありがとうございます。さっそく明日にも出発をします」
「お待ちしています」
他にもこまごまとした話がある、と言って前側氏と副総裁が続けて座り直し、俺らはその間に会議室から出た。