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それでも
「……気持ちはよく分かったよ、でも、それでもしないと」
佐藤がそれでも、と思いを伝える。
「……わかった、じゃあ私もしてみる。ともかく今回問題になるのは量なんだと思うの。だからたくさんの量子ビットで適切に情報を送り続けることにしたらいいと思う」
「どの量子を使えばいいと思う?」
「一番簡単だと思うのは光子かな。私もよく実験で使っているから、やり方はわかるよ。ただそれをするためには専用の設備がいるから、この天文台じゃできないかな」
周りを見回してみても、そういった量子の実験に使える装置はここにはないことは明白だった。
ようは単なる天文台なわけなのだから。