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発見

「星が消えてる?」

その情報を聞いたとき、俺は思わず聞き返してしまった。

「そんな馬鹿げた話があるものか。この科学全盛期にだよ、不可思議珍妙な話があるものか」

星が消える原因としてはいくつかある。

超新星爆発で吹っ飛ぶことや、連星ならば片方にはじき出されることだって考えられる。

ほかにもいくつも理由が考えつくだろう。

それでもなお、目に前にいる女性は同じ言葉を繰り返した。

「間違いないです、主任。私だって何回も見直した結果です。星は何年か掛けて、徐々に消えています」

あまりにも早すぎる。

「所長には」

「まだ話していません。さすがにこれほどまでのものは、想像外の出来事ですので」

そうだろう。

手野大型天文台始まって以来の大事件だ。

「ともかく、会議を招集しよう。他の人らも巻き込んで、この仮説が正しいかどうかを確認するんだ」

「了解です」

すぐに社内メールを送りつけて、天文台のなかにいるひとたちを集めた。


「しかし、にわかには信じられん話だ」

所長は、その証拠として提示された、いくつかの宇宙の観察領域の経時写真を見比べながらつぶやいた。

「多数の星が消えています。具体的には、こいぬ座の方向が主として。他にも複数の領域で確認されています」

「しかし佐藤さん、古今東西、これほどまでの星が見えなくなったというのは噂すら聞いたことがないぞ。どうしてだ、ほかの天文台はどうしてこれに気づかなかった」

「確証はありませんが、こんな話、どう聞いても嘘だと思うでしょう。その証拠かためをしているのでしょう」

佐藤さんがいうが、確証はない。

「手始めに、カバナー博物館へ連絡を。同様の観測結果をえられるかもしれん。あとは、アマーダン天文台も必要だろう。この二つなら、突飛な意見でも手野天文台からの話だとすれば聞いてくれるだろうからな」

この2つの組織は、カバナーはアメリカに、アマーダンはイギリスにそれぞれ位置している。

いわゆる姉妹団体として協定を結んでいる組織だ。


緊急通知と称してメールを送ったおかげか、3日くらいで結果が帰ってきた。

結果としては、佐藤は正しかった。

星は、わからないようにして消えている。

じゃあどうしてか、ということいついては答えられないと言うことだった。

それはそうだろう、こっちも分かって1週間と経っていない。

これで分かってれば、今回の事象の首謀者といわれることだろう。

再び、天文台職員会議が招集されて、正式に今回の未確定事象が観測されたことが分かったという報告がなされた。

「向こうからの報告によれば、これはそんなものだという、あやふやなもので見落としていたのではないかということだった。コンピュータによる時差参照をしていたようだが、それも観測されていなかった」

所長からお話を聞く限り、あまりにも違和感が大きい。

最近のAI搭載のものであったとしても見落とすほどのものならば、もはや何かが介在しているとしか思えない。

「今回の事象については、佐藤さんがまず発見に至った。ここから佐藤さんを研究班長とする研究班を臨時に編成する。当該研究班に所属する者は、当該研究を最優先に進めなければならない。早急に今回の事象を科学的に解き明かしてほしい」

最終的にメンバーは所長が決定することとなった。

その中の一人に俺も入っていたのは、少し意外だったが、彼女の上司ということでよく見ていたから、という理由かもしれない。

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