DAY4(火)10月3日
今日は自分のワンダーエッグとドリームエッグの飼育をすることにする。
まずはそれぞれを温めていた機械から取り出し、変化させた後に話しかけながらご飯を与える。
どのようなものでもいいが、それぞれの個体に決められたものを与える。一人一個とは言ったが、慣れてきたら一人で複数個を持つことは可能だ。ただ、多頭飼いをするかのような苦労をすることになる。
それぞれに餌を与えた後散歩をする、今日は食料と雑用品の買い出しがある。
近場のスーパーにワンダーエッグとドリームエッグを引き連れて向かうことにする。大量の卵がそれぞれ手のひらサイズの姿を取ってもらっている。
個性のある卵たちを使役しながら買い出しをし、家に帰るついでに大きな公園に行き、そこでインターネット会議に参加して経過を報告する。その間、卵たちは自由な時間を過ごさせる。
給料はこのワンダーエッグとドリームエッグの使役をすることと、その経過過程を然るところに報告することで得ている。他にも、たまに依頼される内容を受けて、それをこなすことでもお金がもらえる。
そのお金は、基本的にボーナスみたいなもので、そのくせ組織からやれと言われたら、基本的に受けることになっている。
そして、使役するものが組織ではない他のものに飼育させた場合のデータも取れと言われたため、今回のこととなった。
組織の者たちは、マッドな者たちが基本で、その集まりを得てから給料を得ているのだ。ついでに言うと、しっかりと税金も納めているからなんの心配もない。
そんなことをしていると、自身のワンダーエッグから連絡を受けたので、報告されたその方向に向かうと、ワンダーエッグを渡した男の子たちが遊んでいるのが確認できた。
その音声が五号に入っていたため記録する。
「あ、あの時のおばさん!」
と言われたから少しイラっとしたが、それをスルーして、自身の名を名乗る。名乗ったが、それでも無視されおばさんといわれた。
「ハラおばさん!俺たちのワンダーエッグ、まだモンスターにならないんだけど!」
そういわれて男の子たちが持っていた卵を見てみると、見た目は以前と変わらない、いつものワンダーエッグがあった。
ワンダーエッグの説明をしたはずだけどなぁ、と思いながらもう一度育て方を伝える。
「ワンダーエッグを温めて、大体一週間しないと孵化はしないよ。その間話しかけてあげたか?」
尋ねると、その一週間という言葉に不服そうな顔をした。
「そんなに長く待てないよ。」
ショウがそんな風に腑抜けたことを言ったため、仕方ないから回収を試みることにした。
「そういうんだったら回収しようか?育てる気がないなら。」
「えっそれは……。」
そうショウがいうのに、マサトシとタカマサが何とも言えない顔をした。
「育てる気がないなら返してもらうって、私は渡す前に伝えたはずだからね。
ほら、面倒なんでしょ?返してくれないかな?」
私が問いかけながら手を差し出すと、ショウは必死になって、自分の卵を守り始める。
「いやだ!俺の卵だかんな!ぜってぇ渡さねぇから!」
五号に入っている通りに、相手から半泣きで拒まれたので、そのまま観察を続行することにした。
「本当に返さないの?面倒なのに?
ま、本当に真の選ばれた人だったら、その期間程度、ちゃんと育てられないとねー。それともなに?選ばれたとしても、ドラゴンとかその他シャドーを飼育したくないの?」
「シャドー?モンスターのこと?」
マサトシが不思議そうな顔をして私に聞いてくるから、肯定するために頷く。
「別にモンスターって言ってもいいけど、なんとなくシャドーって呼んでる。それに、高位の術師になれば複数のシャドーを使役することもできるのよ?」
自身はそうやって呼んでないくせに、意味深な感じに言葉に出すと、男の子たちは目を輝かせる。
「あと何日あっためればいいの!?」
聞かれたからスマホを取り出し、男の子たちと会った日を確認する。
「うーん、ちゃんと私と会った日から飼育しているなら、最短で……あと、三日……かなぁ。」
確認を終えて、スマホから顔を上げる。
「だけど、ちゃんとしていなかったらまた回収しに来るからね。」
スマホの画面を消しながら、子供たちの方を見ると、タカマサがオドオドと、何か言いたげにこちらを見てくるから、それに答えるように問いかける。
「どうかした?」
「俺んち、ペット飼っちゃいけないんだけど、大丈夫かなぁ。」
あー、そういう家もあるよね。そう思いつつ、にっこりと笑顔を作りながら答える。
「大丈夫。周りを汚したりとか、壁をかんだりとか、鳴き声がうるさかったりは基本しないから。あと、臭くもないしね、ただ……。」
そこで、わざと一瞬考えてから話す。
「どんな姿にでもなれるから、場合によってはお母さんに怒られるかもね。」
他にもリスクはあるが、そうそう起こらないだろうと、思いつつも伝えたら、タカマサがあからさまに焦った顔をしたので、対処法を伝える。
「ワンダーエッグには三種類の基本形態があるの。
卵型、動物型、無機物型、それらがあるけれども、基本形態の卵か、無機物にしておけば問題ないよ。
ま、その場合でも話しかけなきゃいけないから、話しかけやすいように動物型にしておくことが多いってだけで。」
正直なところを言うと、話しかけることによってデータが蓄積され、そこから対象者の好みを把握して、自分好みの姿を取ってくれる。というだけなのだが、それは話さなくてもいいだろう。
「ほら、私のワンダーエッグたちを見てごらん。そのあたりにいるんだけど……。」
広い公園に目を向けて言うと、辺りから私が使役しているワンダーエッグとドリームエッグが顔を出す。
連れてきたのは皆動物型で、大きさはバラバラ、そんなのが総勢10体だ。そんな奴らが木や遊具の陰、草原、自身が遊具のふりをするなど、興味のまま動いたであろうことは一目瞭然であった。
「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」
卵たちに気づいた三人の声が重なる。
「これだけの数を使役するとなると、かなり骨が折れるけど、できなくはないの。どう?やる気になった?」
自分の卵に軽く手を振ってから、横目で三人に問いかけると、三人が頷くのが見えた。
「うん!」
「お、おれにもできるようになる!?」
「こんなにはいらないかなぁ。」
三者三様の発言だ、先に声を発した順からショウ、マサトシ、タカマサだ。
「どうするかは君たちに任せる、それとも、今すぐに私に返す?」
「「「それは絶対嫌だ!」」」
「そう。」
三人に全力で拒まれたなら、ということで、私は三人と別れた。
その際に、早く孵化できるようになるという名目で発信機付きの輪を渡した、これが首輪になるということを伝えておく。
記録されている会話は、ここまでで終わっており、その後卵たちを元の卵に戻してから帰宅、日用品を整理するために、卵を動ける状態にしてから命令を出し、自分は食事を作る。
卵一つにつき、個体差はかなりあるが、大体一日に最低500グラムは食べる。正直、色々とグループや個体によって料理するため、なかなかに骨が折れる。一日に最低ではあるが500グラムなので、量は一応少ないが、厄介ではある。
卵たちと食事をして、食後に雑用をこなし、終わらせてから、卵たちに訓練を課して能力の開発に勤しむ。
今日は、ワンダーエッグには動物型になってもらい、色々な形への形態変化の練習を。
ドリームエッグには、防御力と衣装力を高めるように、動物型にしてから、様々な雑誌と質感表を与え、それを参考に形態変化の練習をする。
それを一通り見届け、2時間ほどした辺りで風呂に入り、今日の活動報告をつけてから、卵を卵形態に戻し、保温機に入れて電気を消す。
ちなみに、今書いているこれは個人的に書いているものであり、正式な活動記録ではない。補助的な記録の側面が強い。
今日は比較的、いつも通りの一日だった。
明日はどのようなことになるか、多分暫く動きはないだろうと考えられるため、明日以降は雑用を片付けるとする。