DAY228(火)5月14日
DAY228(火)5月14日
未だに記憶は定着していないが、それでも記憶を思い出してきたので仕事がはかどるようになってきた。
大体の仕事をできるようになったので、収集も解析も考察もまとめも全てができるようになり、その結果見落としなども発見したのでそれも修正をかけてしまう。
ただ、記憶そのものはロックがかかっているようで、トモミの以前の様子というものがイマイチ思い出せない。ただ、感覚のみは体が覚えているようで、結構様々なことを思い出せる。
そのせいで理解した体の疼きというものもあるが、それは気にしない方向で行くことにする、これは危ない欲だ。
今日もシャドーに訓練を施しつつ、一万歩を目指して歩いていたら、本日も白い人に出会った。
その白い人との会話が残っていたから書いておくが、実に奇妙な人ではあるのだよな。
「ずっとこの付近を歩かれていますが、今日も一万歩を目指されているのですか?」
白い人が聞いてきたので、私はうなずいて返す。
「はい、体がなまってしまったのでね。そういうあなたも今日もいますよね、誰か待っているのですか?」
その問いかけに、白い人は口をとがらせながら否定する。
「いえ、スマホゲームで位置情報ゲームがあるのですが、道具がもらえる場所がここなのですよ。
オーブと呼ばれるものを歩いて集めて、その集めたオーブを自分の陣地に持ち帰り、その陣地を強くする。
敵陣を弱体化するオーブもあって、私はその防衛要因というわけです。」
「そうなのですね、頑張ってください。」
ただの世間話なので、適当に切ろうとしたら、相手がふと意味深なことを教えてくれた。
「そういえば、ここ最近はやっている都市伝説、知っていますか?」
その言葉にピンとくるものがあったが、あえて知らん顔をする。
「いえ、正直あまり詳しくないもので、なにかあるのですか?」
尋ねると、相手は周りを気にしてからこちらに教えてくれる。
「スマホゲームでオーブを集めていると、よくわからない黒い服を着た人と出会うことがあるのです。
その人が持っているもの、それがこのゲームにあるオーブが闇に染まった結晶、穢れ結晶というものがあるのですが、それにクリソツなのです。
その穢れ結晶を浄化するのが、オーブの役目なのですが、なにか穢れ結晶について、知っていることはありませんか?」
その言葉では、子細な表現がイマイチわからなかったので、一応問いかけてみる。
「その黒い人というのは、ゲームの中の話ではなくて?」
「はい、現実の話なのです。」
確かに、これだけを聞けばゲーム中毒者の妄言だと切り捨ててもいいのだが、私としてもその情報を追っているので、なるべく聞いてしまうことにする。
「そうなのですか、不審者がいるのはいただけませんね。」
私の言葉に相手は残念そうな顔をした。
「そうですか、あまり興味はありませんか?」
「いえ?興味はありますが、その穢れ結晶の詳細も何もないですし、ゲーム自体も知らないものなので。
それに、どうやってその黒い人が持っているものが、穢れ水晶というものに似ていると、わかったのでしょうか。」
私の問を聞いたからか、白い人はポケットに手を入れてそのものを取り出した。
「これがその辺に落ちていたので拾ったのですが、一発で穢れ水晶のキーホルダーだとわかったのです。
ですがこれを手に入れたと同時に、黒い人に声を掛けられまして、そのあとうまくゲームを展開しましたら、相手が突然消え去ったのです。
結局それが何なのかもわからないままなのですが、これを子供たちも持っているのが見えたので、最近そういったのがはやりな可能性も考えてなのです。
どうです?その辺にありますし、おひとつ。」
相手からの申し出を断るのもなとも思ったが、一応断りをしておく。
「いえ、私としても気になりますが、貴方の体調も気になりますし、手にするのはやめておきます。」
私の言葉に相手は驚いた顔をした。
「なぜ、このぼくが体調が悪いと、気が付いたのですか?」
「え?」
「やはり、わかる人にはこの力がわかるものなのですね!拒否したというのが、その最たる証拠!」
「何を言っているのかわからないのだが。」
なんだか危ない人だったらしいということで、歩くのを再開させたら、なぜか相手が歩調を合わせてくるので困っていると、向こう側から見知らぬ人が歩いてくるのが見えた。
「あ、かおりさんッ!こんなところで出会うなんて、やはり運命の糸で私たちはつながっているのですね?!」
「いやお前誰。」
目の前の者とは姿かたちが真逆の色合いをしている女性が、目の前には立っているが、記憶の中に彼女の姿はない。
「そんな!私です!ミサですよ!」
「あ、知り合いか?丁度良かった!この人の相手、代わりにしてくれないか?」
「いやです!私はかおりさんと話したいのです!」
「えぇー?」
そんなこんなで三人で椅子に座り、色々と話をすることになったのだが、なかなかに面白い話が聞けたので良し。
まず例の我々がつけた名前である、というか所有していた少女が使っていた名称であるイノセントトレイターだが、あれはとあるゲーム、名を『狐の巫女オンライン』というものがあるのだが、そのゲーム内に出てくる『穢れ水晶』というものに形が近いという。
そしてその穢れ水晶の穢れを払うには、オーブと呼ばれるものをゲーム内で集めて、それを使って穢れを払い、穢れを払った水晶を集めて、自軍の陣地や敵陣へと持ち帰る、というゲームがあるそうだ。
そして黒い衣を着た人が現実に出ているのだが、それがゲーム中に出てくる敵なのでは?という話であった。
それを本当の話として聞いたので、試しにその物体があるのかを確かめるために、いわく話をしてきた白い人、ペンネームで「神代マシロ」のあとをついていくことにしたのだった。
マシロがスマホゲームのMAPを使い、移動し始め、様々なところにあるオーブを一緒に集めていったが、別に穢れ水晶は普通にゲーム内にはあって現実にはなく、その穢れ水晶の色で対応するオーブを消費して穢れを払い、それを陣地へと持ち帰り強化する。
その間もずっとミサがついてきていたが、特にこちらに危害を加えることなく一緒にいただけで、ただただ三人して歩いただけなのであった。
「で?特に問題はなかったわけだが、なにか説明はあるか?」
私としては良い運動となったわけだが、マシロには色々と聞きたい気分になっていた。
「本当なのです!あの穢れ水晶は現実にあったのです!ほら!これだってそうなのですよ!」
「正直なのです口調は痛いから、やめた方がいいぞ。」
「なにがですか?」
私が受け取ったものは、確かにイノセントトレイターと呼ばれるものとは違う見た目だったし、イノセントトレイターとは違い、これは全体的に白くて、更にひび割れていたので、きっと違うものだろうということはわかった。
「ところで、これを使うにあたって、なにか思うところはあるか?」
口に出しながら手の中のものを返そうとしたときに、突如として手渡す直前に致命的なまでにひび割れ、そのままパワーストーンのようなところが粉々に砕け散ってしまった。
「あぁ!水晶が!」
「あ、ごめん。」
砕け散った穢れ水晶のかけらがその場で全て消え、気付けば手の中にあったものまで、砂が手の中から零れ落ちるかのように、全てが跡形もなく消えさったのだ。
「へ?」
「おぉ、本当に消えたな、なんでだ?」
マシロが素っ頓狂な声を出したのに、私が驚きすぎて、普通の平坦な声色で消えたことを言葉に出したら、ミサが理由を話してくれる。
「きっと役割を終えたのでしょうね。人の意思を変え、攻撃的にさせる作用ができないと判断したのでしょう。
いいじゃないですか、役割を終えることができて。」
「そんなことを言うお前も何者なんだ?
重要そうなことを話しているが、どこかのスパイなのか?」
私が動揺のままにミサに対してそんなことを言うか否かのところで、なぜかマシロが反応する。
「スパイ?!この人スパイなのですか!?とっ捕まえます?」
「いきなり味方面するなぁ、この人たち本当に意味が解らないよ。」
とりあえず自分一人では何もわからないし、手元にあったものも残骸を残して消えたので、どうしようか悩むしかなかった。
なんだかんだ今後も落ち合うことを決め、私は自宅へと帰り、仕事にいそしんだ。
その結果、仕事ははかどったのだが、結局あのものが何なのかがよくわからずに、集まりの方に情報を投げておくことにした。
手に取った時点での情報も何もないので、断片的な情報で検索をかけるが、集まりの方の情報でそれらしいものがいくつか存在していたが、それがかつて自身がオカルトだと笑ったものであることが判明した、理由が、それを解析したアカウント名が私だったからだ。
その物体の情報を確認すると、そのものの内部には広がりがあり、中に何らかの状況を作り出すことができるらしく、それを周囲に展開することができるらしい。
その内部から脱出すると物体が壊れるとあったが、別に私は公園内をマシロとミサの三人で歩き、スマホゲームである狐の巫女オンラインで遊んでいただけである。
そしてミサが言っていた役割を終えたというのも間違ってはおらず、人を吸収する以外で何らかの状況を吸収することで黒いのが浄化され、それにより白くなり、中身が出てきたり壊れたりして消滅するそうだ。
中身は様々な状況が想定され、吸収された人はその中で養分となり、時期が来たら暴走し、人生を終えるとのこと。
時期が来る前に浄化し、白くすることで、内部に吸収された人は吐き出され、表に出られるらしいが、そのためにはいったん関係者を内部に閉じ込め、それにより内部からの浄化を行なう必要があるらしい。
ならばなぜ、私が今日例の穢れ水晶を手に取った時点で壊れたかといえば、あらかじめオーブと呼ばれるものを穢れ水晶の中に溜めていたということが挙げられるそうだ。
オーブが何かと問われれば、その場の状況というものらしく、状況を集めるために開発されたのが、狐の巫女オンラインなのだそうだ。
どうやら、このゲームに使われるデータには、私が解析した情報が使われているらしい。その情報についてなかなかに面白いなと、つい思ってしまった。
トモミが帰ってきて、共に食事などもしたあとで調べたこの手のことだが、トモミも巻き込んでゲームということで、一緒にこのゲームをぬるゲーマーとしてやることにした。
どうせ簡単に飽きるだろうし、体力づけの一環としてもいいだろう、その間にワンダーエッグやドリームエッグたちと戯れればいいし、これで組織から怒られることもないだろう。
このことを組織にも伝えてから寝ることにする。
その際に少々トモミに甘えることにしたが、これは致し方ないこととして考えておこう。




