表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
288/321

DAY216(木)5月2日

DAY216(木)5月2日


今日はトモミのことを家から出した後、通常業務をするために確認を行ない、手順などを確かめ、それにより五号を用いた記録を常日頃から行なっていたことを確認したため、これからは五号を使い記録を行なう。


五号は私が戻ってきたことに喜んでおり、タンクトップの懐の上に座る形で鎮座することが多いようだ、長袖のシャツの襟もとからわずかに五号が姿を見せている。


どの研究を優先的に行なえばいいのかの確認を行なった上で、通常業務とされるデータ収集や解析作業、そして得られたものを分類、保存をする作業をした。


データ収集や解析については多少操作をする必要があれども基本的に自動でできるようだが、その際に分類分析する過程があるようだ。


収集している間にほかの研究もできるようなので、その時間を使い最も大切そうな感情認識プログラムを確認していく。


さまざまな数値は基礎プログラムの中にあるのだが、それらを何も弄らずに適用することはできないので、相関関係にあるデータをすり合わせ、それにより相互関係を作ることとする。


どうやら二つのプログラムを統合する必要がありそうだが、それが途中の状態でメンテナンス明けとなったようだ、その間のフローなどがまとまっている。


とはいっても、最終的にはそれぞれのデータを作り、それらどちらもを操ることができる新しいプログラムを作っただけなので、あとでこれを適用させることとする。


昼食に記録されている食事のレシピを参考に料理し、それぞれに振舞ってから、再度パソコンへと向かい合い、それら作業を全て終わらせた。


トモミが帰ってきたところでは情報の収集が終わっておらず、解析なども始まらない、そしてデータの研究くらいしかやっていなかったので、トモミに頼んで一緒に散歩することにした。


五号に入っていた記録を記入することにする。


「ハラさん、今日は一日家の中にいたのですか?」


家に帰ってきたトモミがそんなことを聞いてきたから、頷きつつも玄関で靴を履く。


「あぁ、一日中作業に没頭していたからね、今からこの付近を歩こうにも、サクラは知っているかもだが、私は未だに記憶があやふやだ。


うかつに外に出て何かあっては困るとしか言いようがなくてな、すまないが、一緒におでかけをしてくれないか?」


私がサクラというと、トモミは複雑そうな顔をしながら、訂正をしてくる。


「わたしのこと、サクラ、じゃなくて、トモミ、と、呼んでください。


サクラと呼ばれるの、嫌なんです。」


トモミがそんな形で言ってくるので、私も円滑なコミュニケーションのため改めることにする。


「あぁわかった。それじゃトモミ、一緒に外に出てくれるかで言ったら?」


トモミにお願いするように言えば、トモミはすぐにうなずいてくれた。


「わかりました、カバン自室に置いてきてしまうので、待っていてください。」


トモミが部屋に戻り、私が外で待っていると、着替えてから出てきたらしい、トモミが普段着だと思われる服装で出てきたので、その状態でお散歩をすることになった。


「なぁ、歩きながらであれなんだが、私がメンテナンスに行っている間に何か、変わったことはなかったか?」


現在地は住宅街のどこかしら、多少坂を上る形での散歩をしているわけだが、トモミは少し考えてから、首を振る形で答えた。


「そうか。


そういえば、研究室にあった記録に、エターナルジュブナイルの研究とあったのだけれども、あれに『トモミにDTMを買おうか迷っている』とあった。


それについて、何か話すことはあるか?」


それについては相手も思うところがあったらしい、返答をくれた。


「確かに、私は音楽について少々学びたいと思うことがあったので、DTMを買っていただけたら嬉しいなとは思いますが……高いですよね?」


トモミがそんな感じのことを言ってきたので、それについて少々考え、首を振る。


「いや?組織の方から援助をしてもらう手はずだから、高くはないだろう。


ただ、音楽を作るのと並行して、研究も行なってもらうことになるから、その点についてはお願いな?」


私が軽く手を顔の前にお願いする形で立て、トモミに言えば、トモミは笑顔でうなずいた。


「はい、元からそのつもりですので、大丈夫ですよ。」


「本当か!いやぁ~助かるよ!」


大丈夫だと聞いた瞬間に私がそうやって即答すると、トモミはくすぐったそうな笑みを浮かべ、ふと思い出したのだろうことを聞いてきた。


「そういえば、私が今まで卵の世話をしていましたが、それはこれからも継続ってことでいいんですかね?」


「うーん、それについては私がちゃんと管理しなければいけないし、交互にやっていくことで、OK?」


「はい、わかりました。」


そんな感じに外を歩いているが、初夏のころの陽気というのはなんとまぁ強いのだろう。


じりじりと既に身を焦がすような暑さと、桜が散った後のさわやかな風とがある、丁度良い時期、長袖のワイシャツがとても気持ちがよい季節だ。


「そういえば、私になにか服を買っているらしいじゃないか、そのことについて聞いてもいいか?」


連絡で送られてきていたそれを尋ねると、トモミは少し複雑そうな顔をしてこちらを見て、顔をそらした。


「いえ、もう少しあとにします。」


「もう少し後なのか?それはなぜ。」


トモミが嫌そうにしていたので不思議に思っての発言だったのだが、トモミはあいまいな笑顔でこちらを見るのみだった。


しばらく歩いたのちに、ふと公園に寄ったのだが、どことなく懐かしい感じがあったので、トモミにそれをいうと、トモミは笑顔を向けてきた。


「あ、なにか思い出しました?」


まるで、私のことを病人や患者を扱うような口ぶりだったので、口をとがらせながら不貞腐れる。


「思い出したかって、そりゃあ私はまだあまり記憶が安定していないが、それでも頑張って思い出そうとしているのだが?」


不貞腐れたように言うのに対し、トモミはクスクスと笑いながらうなずく。


「そうですね、まだ一日目ですし、それほど不安にならなくてもいいですよね。」


トモミのその態度にふと不思議に思ったことがあったので、それも聞いてみる。


「そういえば、トモミは私が記憶喪失になったとしても、あまり動揺した様子がないじゃないか。


どうしてなんだ?私はトモミのことも忘れているというのに。」


トモミはそれに少し考えるそぶりを見せてから、笑顔をこちらに向けてくる。


「はい、前は私が距離を詰めすぎたので、今度はちゃんと間合いを考えて接しようと思っただけですから。」


「きょり?まあい?何の話だ?」


「何も気にしないでください、私の独り言です。」


トモミの笑顔には曇りがあるのだが、距離とか間合いとか、一体何の話なのだろうか。


「ハラさんは、ハラさんでいてくれれば、いいのです。


私にとってはそれが、一番の救いとなるので。」


トモミの言葉に違和感を感じたが、それが別に普通のことにも感じられるので、それはそれでいいかと聞き流す。


公園には複数の子供たちが自転車を乗り回して遊んでいて、遊具にも子供らがはしゃぎながら乗っている。


トモミと一緒に歩きながら話しているが、どことなく既視感のある風景、かつてここには桜の木があった気がするのだが、当然のごとくどこにも桜が咲いている木などない。


色々とトモミとは世間話もしたが、記憶が戻るのはもう少し後のことらしい、一向に何もわからなかった。


家に帰る道すがら、トモミにくっつかないのかを尋ねたが、トモミはすんなりと拒否を示してきたのにも違和感を覚えた。


それが何なのかがわからないが、それでも違和感があったのは確かだ。


トモミと一緒に自宅へと帰ってきて、皆に出迎えてもらいながら、料理を作り始める。


トモミが食材を買ってくれたおかげで問題なく料理が作れるのがありがたいが、あと3日は持つであろう食材類を、使い果たさずに使う算段を立てたりしながら料理を終え、皆で食べた。


そのあとのお風呂もなぜかトモミと一緒に入らねばならないという気がしたので、それについて尋ねたが、トモミとしては別に一緒に入らずともいいらしい。


一日中どことなく違和感はあったが気にせずに風呂に入り、日誌をつけている。


なんとも今日は複雑な気持ちになった一日であった。


が、今までのことを総合すると、まさかな?と思うことはあれども、気にしないようにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ