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(1)

「昨日の晩の話ですけど……」

「どう説明したらいいか、判んないから、誰にも言ってない……」

 お嬢様と第2王女は王宮の中庭で行なわれてる剣術の稽古を見ながら、そう話していた。

「結局、あいつが本物の王子様の代りに出る事になったのか? 勝ったら、勝ったで、ややこしい事になるぞ……」

 剣術の稽古をやってるのは……本物の王子様じゃなくて、王子様の護衛の従者。

 どうやら、王子様の代りに草原の民から申し込まれた勝負に出る事になったらしい。

「でも、思ったより強そうだね」

 ルールは、5種目の内、1つでも勝てればOK。

 そして、偽物の王子様は、王宮の兵隊相手の練習で……連勝中。

 でも……ラートリーは……。

「どうしたの?」

「舐められた真似された以上は……やり返してやるか……」

「えっ?」

「おい、駄目だ、その調子なら、剣術の試合は捨てて、他のに注力した方がいい」

 大声で、そう言いながら、中庭の方に向かう。

「何を言ってる? どう云う事だ?」

「中々、実戦的な剣術だ。だが……()()()()()()()()()()()

 意味の判らない説明に……偽の王子様と兵隊さん達は顔を見合せる。

「訓練用の木刀を持って来てくれ」

 兵隊さん達と偽王子様はポカ〜ン。

「木刀なら……ここに……いくらでも……」

 兵隊さんの1人が持ってた木刀を差し出す。

「それじゃない。勝負は、草原の民のルールでやる以上、草原の民の使う刀と同じ、反りの有る木刀だ」

 あ……。

 たしかに……練習に使われてる木刀は……まっすぐなモノばかり。

「あ……彼女の言う通りにしてくれ」

 偽の王子様は兵隊さん達に指示。

 やがて、反りの有る木刀が2本持って来られ……。

 そして、2人は反りの有る木刀を手にして構える。

 両方とも……何の変哲も無い、普通の……ん?

 ほぼ同時に動き出したのに……先に刀が当たったのは……。

「あ……有りか……それ……?」

「これが、草原の民の剣術だ」

「ふ……ふざけるな……その足さばき……」

 なるほど……。

 ラートリーは軽快に相手の懐に飛び込み、偽の王子様の足は、膝を曲げてふんばるような感じ。

 これが勝敗を分けたらしい。

「そうだ。重い鉄の鎧を着込むのが当り前の国なら、マモトな剣の師匠であればあるほど……弟子が稽古で今の私みたいな動きをすれば矯正する。重い鎧を着てたら、こんな動きは無理だし、仮に無理矢理出来たとしても鎧の重さで体のバランスを崩して巧く行く訳が無い。でも、草原の民は、(いくさ)の時は、軽装の鎧で馬に乗り、主力武器は弓矢だ。草原の民の剣術は、矢が尽き、馬さえも失なった時の為のモノか……さもなくば、平時の護身術だ。そっちの国とは剣術の位置付けそのものが違う」

「つ……つまり……我が国の常識では……正式な剣術の試合では有効打と認められないものも……」

「思いっ切り、有効打扱いだ。あと、草原の民の剣術は反りの有る刀が前提なんで……」

 ラートリーは、偽王子様の首に木刀を軽く当てて……更に引く。

「刀を叩き付けるだけじゃ『斬る』事は出来ない。突き以外は、当たった時に押すか引くかの動きが無いと、試合では有効打と見做されない」

「あ……あ……まさか……」

「草原の民を脳味噌が足りない蛮族だとでも思ってたのか? 脳味噌が足りない蛮族が、あれだけ戦争に強い筈が有るまい。草原の民は……ズル賢さでも超一流だ。『試合は草原の民のルールで行なう』ってのを了承してしまった時点で、そっちの勝目は、ほぼ無くなっていたんだよ」

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