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「ねえ、お嬢様、ここ夜中に女だけで来る所じゃないよね……絶対に……」

 ボクはミリィお嬢様に、そう言った。

「え……ええ……そうね、エイミー」

 ボクが仕えてる田舎の貧乏貴族の元に、王宮から直々に手紙が来たのは先月の初め。

『次の新月の晩に、この書状を持参して貴殿の長女を王宮に寄越すべし。日没の後の2回目の刻告げの鐘が鳴った直後に、王宮にある「リドワンの門」の前に案内の者が居るので、その者の指示に従うべし。貴殿の長女の同行者は侍女2名まで許す』

 2名まで許すと言われたけど、人手が足りない貧乏貴族なんで、お嬢様に付いて来た侍女はボク1名。

 昼間の内に待ち合わせの場所を下見しておこうと思ったら……何故か、王都の通行人に道を尋ねても、誰も「リドワンの門」なんて知らなかった。

 ようやく見付けた知ってる人に案内されて辿り着いたのは……王宮の裏口。その近辺は、王宮のすぐ近くには思えないような……治安の悪そうな飲み屋街にしか見えない通り。

 それに……飲み屋街だとしても、若干、変な場所だ。

「な……なんで、その……飲み屋街にしか思えない場所に……何軒も葬儀屋の看板が有るの?」

「リドワンって何か知ってる?」

 ボク達をここまで案内してくれた女の子は、そう言った。

 明めの茶色のボブカットの髪に、黒に近い褐色の瞳。

 動き易そうな男物の服。

 はっきり言えば……しゃべり方や服や仕草から出身地や身分の見当が全く付かない。

「たしか……天使の名前じゃ……?」

 ミリィお嬢様は、そう答えた。

「そ、天国の入口を守る天使……そこまで言えば判らない?」

 ……ど……どう言う事?

 案内してくれた女の子は、ポカ〜ンとしてるボクとお嬢様を見ると、説明を続けた。

「貴族なんかの気取った言い方だと『不浄門』。それを更に遠回しに言ったヤツ。ここから出るのは……天国に行く人だけ。つまり、王宮の下働きの中から、死人や助からない急病人や怪我人が出た場合に運び出す為の門がここ」

 え……?

 そうか……どうやら……お嬢様は……普段は誰も使わないような門からこっそり王宮に入んないといけない用事で呼ばれたらしい……。

 それが、どんだけロクデモないモノかは想像も付かないけど。

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