三日月
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半年後
「ちと、お前さんに話がある。」
和夫さんにそう呼ばれた。訓練では、訓練とは思えない様な事をしていた。鬼ごっこにかくれんぼ、唯一マシだったのは筋トレぐらいだった。
「お前さんを家に帰そうと思う。」
やっと家に帰る時が来たのかと思うと、和夫さんと別れる寂しさと、家族にやっと会える嬉しさでよくわからなかった。
「そのことで、お前さんの能力について話がある。」
「何ですか?」
「お前さんは、過去に戻れるようだ。」
「過去に行けるんですか。僕最強じぁないですか。」
「だが、鑑定したところまだ発動条件がわかっとらんのだよ。過去に戻れることは確かなんだが、どうゆうデメリットがあるかとかがわかっとらん。だから、くれぐれも気おつけろよ。」
家に帰る途中和夫さんの言葉が気になっていた。
「着いた。」
半年ぶりの家だった。インターホンを鳴らそうとする指が震えてなかなか押せない。その時。
「宏君?」
多分学校帰りであろう日野が声をかけてきた。
「心配したんだからね。半年もどっか行っちゃて。」
日野が泣きながら抱きついてきた。
「ごめん。」
僕は、そんなことしか言えなかった。今までの事を信じてもらう事もできないし、信じて欲しいとも思わない。
「なんかあったら話聞くって言ったじゃん。」
「ごめん。日野。」
その後家に帰った後も親に問い詰められた。妹は、相変わらずな態度だったけど。
その夜、僕は悪魔退治に出かけた。月神さんに会いたいというのもあるけど、一番は師匠から聞かされていた、月神さんの話が気になってなにか力になれないかと思い、悪魔退治に出かけることにした。
「これで三匹目。」
順調に悪魔退治は進んで行った。引き寄せる力があるおかげで速いペースだった。
「お前、面白い匂いしてんなぁ。」
急に後ろから声がして振り向くと、人間の形をした何かがいた。
「たまには、外に出てみるもんだなぁ。」
「お前は何者だ。敵か?」
「面白いこと聞くじぁねぇか。それは、お前次第だ。」
僕は、明らかに悪魔というのしか見ていないから判断がつかない。だが、この気配は明らかに和夫さんたちとは違う。
「お前は絶対許さない。」
叫びながら、月神さんがその何かに攻撃して行った。
「いてー、じぁねぇか。」
そいつは、腹を突き破られても生きていた。
「お返しだ。」
そう言うと月神さんが吹っ飛んだ。とっさに僕は。
「援護します。」
「やめろ、私の仇だ。」
和夫さんが言っていた事を思い出した。月神さんは、幼い頃に両親と住んでいた町を1人の悪魔によって全部跡形もなく壊された。だが、1人でやらしては、ダメだ。
「お前じぁ勝てない。」
そう言ってそいつが月神さんに向かって、腕を振り下そうとした。僕はとっさに間に入った。止められるとは、思っていない。だが、月神さんだけは守りたい。そんな悲しい想いを1人で背負っている彼女を僕は、救いたい。
「お前やっぱり面白いなぁ、お前に免じて今日はやめといてやるよ。」
そいつがそう言ってるのを、僕は飛びそうな意識を保ちながら聞いた。そいつは、消えた。
「何て、ばかな事を。」
月神さんが泣いてそう言っていたが、僕には聞こえなかった。だが、泣いている月紙さんを見て。
「僕は、、月神さん、、君を守りたかった。故郷の事を聞いてしまったから、放って、、、置けなかった。君が無事で、、、よかった。」
「私は、私は、」
掠れゆく意識の中で泣いている月神さんの涙を拭った。
「笑って。」
そう言って僕の意識は、暗い暗い海の中に沈んでいく様な感じでなくなって行った。