おみくじサブスクリプション
サブスクリプション。
定期的に料金を支払うことで、
物ではなく、利用する権利を対価として得ること。
会員権や定期購読、家賃などがこれにあたる。
最近では、パソコンやスマートフォンなどのソフトウェアや、
乗り物や消耗品の利用などでも、この方式がみられるようになった。
町外れにある小さな神社。
その神社の神職、つまり神社の職員といえば、
年老いた宮司とその妻の老夫婦二人だけ。
あとは、たまに親戚などが手伝いに来てくれる程度の、小規模な神社。
昔は地元の人たちで賑わっていたものだったが、
昨今では参拝に訪れる人も少なくなり、
試験前の学生などで賑わう一時を除けば、閑古鳥が鳴く日々。
その神社の収入は、おみくじやおまもりなど、
授与品の対価として受け取る金が主なもので、
あとは、お祓いの祈祷料や賽銭が少し。
いずれにせよ、参拝する人がいないことには始まらない。
そんな神社の不安定な先行きは、宮司の老夫婦を悩ませていた。
老夫婦の頭を悩ませているのは金の問題だけではなく、
若い一人息子が神社を継ぐ気が全くないこともまた、
老夫婦の尽きない悩みの一つだった。
「今日も参拝者は少なかったなぁ。
何人くらい来てくれたんだったかな。」
「そうですねぇ。何人でしたっけ。
朝に一人、昼に二人・・・」
夕食時、宮司の老夫婦がのんびりとそんな話をしていると、
一緒に食卓を囲んでいた若い息子が、すっくと立ち上がって言った。
「この神社には変化が足りない。時代に合わせて変化する必要がある。
サブスクリプションを導入しようと思う。」
サブスクリプション。
息子の口から飛び出た聞き慣れぬ言葉に、宮司の老夫婦は顔を見合わせた。
神社にサブスクリプションを導入する。
若い息子の突飛な言葉に、
宮司である年老いた父親は眉をひそめて言った。
「お前、何を言っているんだ?
家の手伝いもしないで、また学校で聞きかじった話か。」
苛立つ父親を、妻である年老いた母親がたしなめる。
「まあまあ、あなた。
せっかくこの子が家のことを考えてくれてるんですから、
話くらいは聞いてあげてくださいな。
それで、そのサブスクリプションっていうのは、何のことなんだい?」
すると息子は、待ってましたと胸を張って説明を始めるのだった。
「サブスクリプションっていうのは、定期契約のことだよ。
うちの神社は、普段は参拝客もほとんどいないけど、
でも、試験期間とかは、学生やなんかで賑わうんだよ。
学業成就、合格祈願ってね。
その期間は、おみくじやおまもりもよく売れる。
まずはその人たちに普段も来てもらえるようにするんだ。
そのために、おみくじをサブスクリプションにする。
名付けて、おみくじサブスクリプション。
おみくじサブスクだ。」
「おみくじ・・サブスク?」
「そう。
おみくじをサブスクリプション、つまり定期契約にして、
契約した人は期間中に何度でも無料でおみくじを引けるようにする。
おみくじなんて、普通は一回引いたらしばらくは再度引かない。
でも、もしも定期契約していたら、
きっと元を取ろうとして何度も引きに来ると思う。
特に若い学生やなんかはね。
そうやって神社に来る機会を増やせば、
いずれはそれが習慣になって、
おまもりとかの物販の売上や賽銭が増えて、
神社の収入が安定することが期待できるはずだ。
神社のおみくじサブスクリプション。
若い息子の神をも恐れぬ発想に、宮司は頭を抱えていた。
一人息子であるその子は、
宮司の老夫婦が遅くになってから授かった子供で、
神社の子でありながら、幼い頃から神など信じぬと言って憚らず、
神職である両親とこうして衝突することもしばしばだった。
学校では経営学を勉強していて、
自分がなりたいのは神職ではなく経営者だと、
神社の事情など欠片も勉強することさえなかった。
そんな息子が神社について考えたというので話を聞いてみれば、
やれおみくじサブスクリプションだのという妄言とも思える話に、
宮司は父親として、頭を抱えたままで言うのだった。
「お前は、またそんなふざけたことを言って。
定期契約だとか、収入だとか、
神社は店などではないと、いつも言っているだろう。」
「わかってるよ。
神社は神様を敬い、地域の人たちの交流のためにある。
そう言いたいんだろう?
でも、考えてみてよ。
おみくじサブスクリプションに契約してくれた人は、
おみくじを引くために定期的に神社に来てくれるはず。
神社に人が来れば、それは即ち、地域の人たちの交流になるじゃないか。
今、時代はサブスクなんだよ。
スマホアプリも自家用車も、何でもサブスクなんだ。
だったら、神社もサブスクを導入したって罰は当たらないよ。
それとも父さんと母さんは、
この神社が経営破綻してもいいって言うのか?」
経営破綻という言葉が、宮司の老夫婦の胸に突き刺さる。
神社は金儲けのためのものではない。
そうは言いつつも、金がなければ何事も立ち行かない。
このままでは神社の経営破綻もありえる。
他に神社の収入を増やす方法も思いつかない。
結局、宮司の老夫婦は、若い息子の提案に従ったのだった。
若い息子の提案で、宮司の老夫婦の神社に、
おみくじサブスクリプションが導入されることになった。
その神社のおみくじは、種類にもよるが、一回100円~200円。
それを、先に500円まとめて払うことで、
一ヶ月間、何度でも無料でおみくじを引くことができるようにする。
まずは宣伝のため、最初の一ヶ月間を無料にする。
そんな内容のチラシを作って、近隣の家のポストに投函した。
すると、チラシを配ってから数日ほど経つまでに、
チラシを手にした人たちが、ちらほらと神社を訪れるようになった。
「あのぅ、チラシを見て来たんですけど。」
「おみくじサブスクって、こちらの神社ですか?」
おみくじサブスクリプションのチラシを見て神社を訪れてきたのは、
中高生や若い女など、普段のその神社ではあまり見かけない人たち。
最初はおっかなびっくりしていたのが、
おみくじサブスクリプションの説明を聞き終わる頃には、
みんなが興味津々。
初月無料というのも手伝って、
多くの人がおみくじサブスクリプションを契約していった。
そんなことが一週間程続き、
今日もまたおみくじサブスクリプションの説明を一件終えて、
若い息子は額の汗を拭って言った。
「よし。今回も多くの人が契約していってくれたぞ。
既におみくじサブスクリプションを契約していて、
おみくじを引きに神社に来た人も、ずいぶんと増えた。
これからもっと忙しくなりそうだ。」
すると、休憩にとお茶を持ってきた母親が一言。
「そうねぇ。
でも、参拝者の方は若い女の子が多かったから、
おみくじサブスクリプションの会員証は、ただのカードじゃなくて、
もっと可愛らしいものが良いかも知れないわね。」
「・・・なるほど。そうかもしれない。」
そんな母親の提案で、おみくじサブスクリプションの会員証は、
ただの印刷したカードから、母親の手編みのおまもり型へと変更した。
参拝者に飽きられないように、
おみくじや会員証などのデザインは定期的に変えることとした。
さらに、神社に来てくれた人たちがゆっくりできるよう、
神社にある建物を休憩場所として開放することにした。
また、中高生などが口コミでお互いに勧誘してくれることを期待して、
おみくじサブスクリプションの団体割引も用意することにした。
そんな方策が功を奏して、おみくじサブスクリプションは好評を獲得。
契約者は順調に増えていき、
中には、学校の一クラスの生徒全員が契約してくれたこともあった。
契約者が増えればおみくじが話題に上ることも増える。
特に学校などでは、おみくじが生徒たちの話題の中心になりつつあり、
仲間はずれになりたくなければ契約するしかないという状況。
それは学生のみならず、会社や同好会などでも同様で、
時が経つにつれ、おみくじサブスクリプションは、
子供から大人まで老若男女問わず、地域の人たちに受け入れられていった。
その神社でおみくじサブスクリプションを導入してから半年ほど後。
今日も、その神社には、たくさんの参拝者が訪れていた。
学生やスーツ姿の人たち、お年寄りなど、
老若男女が神社のあちこちで楽しそうに談笑している。
話題はおみくじの話だったり、無関係な世間話だったり、
神社が地域の人たちの交流の場になっていることが伺える。
おみくじサブスクリプションを切っ掛けとして、その神社は、
地域の人たちの交流の場として定着していた。
息子の目論見通り、神社の売上は上々。
おみくじサブスクリプションの料金だけではなく、
おまもりなどの授与品や賽銭の収入も順調に増えていた。
傾きかけていた神社の経営は、立て直すどころか今や業績好調。
次は増改築などと相談するほどまでになっていた。
何の心配もない、順風満帆の日々。
そう思われたその神社に、しかし思いもよらない災難が降り掛かった。
「あなた!?どうしたの?」
「父さん、しっかりしてくれ!今、救急車を呼ぶから!」
ある日のこと。
多忙を極める日々が祟って、宮司である年老いた父親が倒れてしまったのだった。
神社でお祓いの最中に倒れた父親は、多数の参拝者が心配そうに見守る中、
救急車で近所の病院へと搬送されていった。
診断結果は過労。
きっと忙しすぎたのが原因であろうということだった。
息子と母親が医者から話を聞いている間、
父親はベッドの上で穏やかに寝息を立てていた。
若い息子は、そんな年老いた父親の寝顔を見て、
自責の念を感じずにはいられない。
おみくじやおまもりなど、神社の授与品は、
一般の商店で売っているような大量生産品とはわけが違う。
この神社のおみくじやおまもりは、基本的には全て手作業で作っている。
作って終わりというわけではなく、きちんと祈祷などもしなければならない。
手作業は手伝ってもらえたとしても、お祓いは宮司にしかできないこと。
神社に休日や祝日などはない。
年老いた父親には忙しすぎる生活だったのだ。
ぎゅっと手を握って、息子が言葉を漏らす。
「これ以上、両親に負担はかけられないな。
何とかしないといけない。
でも、どうやって?」
ただの学生である若い息子には、宮司の仕事を肩代わりすることはできない。
では、他の方法で何かできることはないか。
そうして息子が思いついたのは、神に成りすますに等しい行為だった
おみくじサブスクリプションの評判は上々。
神社には参拝者が増え、おみくじやおまもりによる収入も増えた。
しかし、神社の仕事が忙しくなりすぎたことで、
とうとう宮司である年老いた父親が倒れてしまった。
宮司の仕事は、他の誰も代わることができない。
年老いた父親の負担を軽くするために、何かできることはないか。
そうして若い息子が思いついたのは・・・、おみくじを細工することだった。
参拝者から見えない社務所に籠もって、息子は言う。
「うちの神社のおみくじの中身は、完全に無作為に作られている。
そのせいで、その時によって結果に偏りが出ることがある。
吉が多いが月あったり、逆に凶が多い月があったりする。
その月は吉と凶とどっちが多くなるのか、事前に予想ができない。
お祓いだの祈祷だのは、凶が多い時期に集中する傾向がある。
おみくじやおまもりの需要もその時に集中する。
当然だ。
誰だって、おみくじで悪い結果が出たら、神頼みしようとするだろう。
それを、人の手で少しだけ操作する。
おみくじの中身を操作して、
どの月も、吉と凶の比率が同じくらいになるようにする。
そうすれば、おみくじやおまもりの需要も一ヶ月間で均一になって、
父さんの負担が少しは軽くなるだろう。
差し当たって、父さんが元気に動けるようになるまでは、
お祓いの依頼が少なくなるように、
おみくじの結果は吉が多くなるようにしよう。」
しかし、年老いた母親は、息子のそんな企みを聞いて反対する。
「あんた、おみくじに細工する気なの?
そんなことをしたら罰が当たるんだから。
ここは素直に大人しくして、お父さんが退院するまで、
神社はお休みさせてもらいましょう。」
たしなめる母親に、しかし若い息子は譲らない。
「それはできないよ。
サブスクリプションはサービスに対する支払いだ。
もしも、契約期間中にサービスを中断したら、
その分の契約金を返金しないといけなくなる。
サービスの中断は、サービスそのものへの信頼も揺らぐことになる。
せっかく軌道に乗ったおみくじサブスクリプションなんだ。
絶対にサービスは中断させられない。
神社も休むわけにはいかない。
大丈夫。
おみくじの中身をいじったところで、参拝客にはバレやしないよ。」
そうして若い息子は、母親の反対を押し切って、
おみくじの中身を操作することにした。
まずは、宮司である年老いた父親の体調が回復するまでは、
お祓いなどの依頼が少なくなるように、吉を多くする。
そうすることで、宮司なしでも神社を閉じること無く、
おみくじサブスクリプションのサービスは継続することができるはず。
誰にもバレないはずの禁じ手。
しかし、それを見張る目が存在するのを、若い息子は知らなかった。
宮司である年老いた父親が倒れてから数週間が経って。
父親の体調はもうすっかり良くなって、宮司の仕事にも復帰していた。
息子がおみくじの中身を操作したことで、忙しさも操作することができ、
おみくじサブスクリプションのサービスは中断させることなく、全てが元通り。
そのはずだった。
しかし、元通りにならなかったことがある。
宮司が不在の間、お祓いなどの需要を減らしたい。
そんな目的で導入した、おみくじの中身の操作。
一時的であったはずのそれは、今もなお息子の手によって続けられていた。
おみくじの中身は、お祓いやおまもりなどの需要などに直結する。
それを操作できるということは、需要を増やして儲けを増やしたり、
あるいは逆に意図的に需要を減らすことで休養を取る余裕を作ることができる。
予想がつかない無作為のおみくじの結果に左右されるよりも、
計画が立てられる方が何事も都合がいい。
そんな事情で、息子がおみくじの中身を操作する行為は今も続けられていた。
今日も社務所でおみくじの中身を入れ替えながら、息子は悪びれもせずに言う。
「別に、そんなに悪いことをしてるわけじゃない。
おみくじは景品があるわけでもないし、確率が変わっても問題ないだろう。
中身がどうあれ、おみくじはちゃんと引けるんだから。
どうせ、誰にもバレっこないんだ。」
しかし、そんな若い息子の考えに反して、
神社の参拝者は目に見えて減っていった。
買い物から帰ってきた母親が、青い顔をして若い息子に伝えた。
「ご近所の奥さんたちから聞いたんだけど、
うちのおみくじがおかしいってご近所の学校で噂になってるみたいよ。
学校の一クラスの生徒さんが丸ごと全員、
うちのおみくじサブスクリプションに加入してくれてる、という場合もあるの。
そういう子たちが、みんなのおみくじの結果を記録してるんですって。
それで、吉や凶が不自然に多くなる時があるってわかって、
不審に思われてるみたい。
やっぱり、悪いことをしたら、どこかで誰かが見ているものなのよ。」
数十人分、あるいはそれ以上のおみくじの結果を、
データとして蓄積、分析することで、
おみくじの中身が操作されていることに感づいた人たちがいるらしい。
団体割引を用意したことが、今は不利に働いたようだ。
息子が慌てておみくじの中身を無作為に戻すと、
しばらくして参拝者の人数は、ある程度は回復したのだった。
若い息子が冷や汗を拭って言った。
「やれやれ。
今回は客足は回復してくれたか。
母さんの言う通り、やっぱり悪いことはできないものだな。
忙しさを分散させようとして、おみくじの中身を操作して、
それでおみくじサブスクリプションそのものの信頼が揺らいだら本末転倒だ。
でも、じゃあどうしたらいいんだろう。
おみくじを無作為なものに戻して、
いずれかのタイミングで凶の比率が増えたりしたら、
そうしたら忙しくなりすぎて、また父さんが倒れてしまうかもしれない。
かといって、おみくじサブスクリプションを中断するのも困る。
そんなことをすれば、契約金を返金しなければならないし、
契約者も減るだろうから。」
この期に及んで若い息子は、自分が宮司を継ぐという考えには至らない。
頭に浮かぶのは、学校で勉強しているという経営学。
つまりは安く済ますということばかりだった。
おみくじサブスクリプションで、神社の経営は軌道に乗ったと思われた。
しかし、不定期にやってくる需要の波は、
宮司である年老いた父親の身には重すぎる。
かといって、若い息子は、自分が宮司になることなど考えもしない。
そんな若い息子が辿り着いた解決策、それは。
「・・・そうだ、外注すればいいんだ。
神社の仕事が忙しくなった時だけ、他所から人を呼んでくればいいんだ。
外注は今や大企業はみんなやってることだ。
うちの神社も変化を受け入れよう。」
外注とは、外部へ発注、つまり一時だけ人を雇って手伝ってもらうこと。
つまり、若い息子が思いついた解決策とは、
忙しい時だけ他所の人に代わりに宮司の仕事をしてもらおうということだった。
人を育成したり、継続的に雇い入れたり、
あるいは自分が宮司になるわけでもない、使い捨ての解決策。
どんなに神社の収入が増えようとも、それを人に使おうとはしない。
しかし若い息子にはそれが名案に思われた。
「思い立ったが吉日。
早速、外注の会社に電話してみよう。
しかし、神職の外注なんてできるかな?」
物は試しと調べてみると、神職専門の派遣サービスというものが見つかった。
「なになに、神職専門派遣サービスか。
今まさに必要なものだ。
探せば何でも見つかるものだな。
よし、電話してみよう。」
鼻歌交じりに電話番号を押し、受話器を耳に当てる。
小気味のいい呼び出し音の後、電話はつながったようだ。
相手が話すよりも先に、まず息子が口を開く。
「もしもし?
そちら、神職専門派遣サービスの会社ですか?」
「お電話ありがとうございます。
弊社は人材派遣サービス全般を扱っておりまして、
神職専門派遣サービスも承っております。」
「そうですか、それはよかった。
ええと、神職の派遣の相談をしたいんですが・・・」
そうして息子は要件を伝えていった。
家が神社で、神職の派遣サービスを探している。
予算が限られるので、神職の派遣は忙しくなった時だけでいい。
いつ忙しくなるのか予定が立てられないので、
急な派遣依頼になるであろうこと。
派遣依頼をしてから職員が来るまでに、
どれくらい時間がかかるものなのか知っておきたい。
などなど。
できるだけ要点を整理して伝えていった。
「かしこまりました。
お調べ致しますので、しばらくお待ち下さい。」
話し終わってから、しばしの静寂。
電話の向こうでカチャカチャとキーボードを打つ音が聞こえる。
「・・・お待たせ致しました。」
しばらく待たされた後、
問い合わせに返ってきたのは、こんな回答だった。
「申し訳ありません。
神職の派遣サービスは特殊なサービスで、需要が限られておりまして、
短期のご依頼はお受けしておりません。
こちら、定期契約必須のサブスクリプションサービスとなっております。
プランがいくつかございますが、
どのサブスクリプションプランになさいますか?」
因果応報。
その時、若い息子は初めて、神の存在を信じたのだった。
一方、遙かなる天上の地にて。
霞漂う、穏やかで広大な草原に、
古めかしい着物を身に纏い髪を結わえた何者かがいた。
その何者かは、地面にゴロンと横になって、おしりを一掻き。
草原にぽっかりと空いた穴から下界を見下ろしながら言った。
「サブスクリプションか。
あれいいなぁ。私もそうしようかな。」
終わり。
神社のおみくじをサブスクリプションにした場合の話でした。
世の中なんでもサブスクリプションが増えてきました。
みんながそれを真似していったら、
いずれは神社などでもサブスクリプションが導入されることがあるかも。
そんなことを考えて、この物語を空想しました。
みんながサブスクリプションを真似していくうちに、
おみくじサブスクリプションを考えた息子もサブスクリプションの餌食となり、
とうとう天上の何者かも、
サブスクリプションの導入を考えるようになりました。
お読み頂きありがとうございました。