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第78話 やり過ぎ注意

 グレッグが対峙していたオーガ族は【オーガジェネラル】と呼ばれるオーガ族の上級種らしい。

 強化魔法が掛けられたであろう大戦斧で虚空斬(ブラインドスラッシュ)を弾くだけの力がある。これならザーザードよりも強いのは間違いないだろうが、コイツ等は傭兵ギルドには所属してないのか?


 兎にも角にも虚空斬は弾かれてしまうので、今度は雷撃の魔法を放ってみる事にした。


「斬撃がダメなら、コイツはどうだ――『雷電撃射(サンダーボルト)!』」


 瞬時に作り出した雷雲から、四人のオーガジェネラルに向かって雷電撃射を一斉放射する。

 大きく鳴り響く雷鳴と同時に辺り一帯を強い光が覆う。そして、けたたましい轟音と共に雷撃がオーガジェネラルに降り注いだ。


 爆発音と衝撃に激しく大地が揺れ、思わず自分自身も身を屈まてしまった。


 上空から衝撃で飛ばされた土砂や細かく破壊された瓦礫がパラパラと降り注ぎ、若干耳鳴りもしているがそれも少しずつ治まって来る。

 砂埃が風に流され視界が晴れて来ると、四つのクレーターが重なって一つの大きなクレーターが出来ていて、その中に四体の黒焦げになった物体が転がっているのが見えた。


「なあターナス、あれって……」


「さっきのオーガ……かな」


「炭化してるな」


「……ああ」


 ちょっとやり過ぎた。あの強さの雷撃だと威力が大き過ぎて、狙った敵以外の場所に被害が出ちまうな。しかも対象を炭化させてしまうほどだ。次に使う時はもっと威力を抑えて“感電死”させる程度にしよう。


「しかし、あの図体で軽々動き回れるうえに四人相手となると厄介だったな」


「単体ならグレッグのスピードを持ってすれば物理攻撃は有効だっただろうな。もしくはあの巨大な戦斧を破壊するだけの武器があれば……」


「ああ、確かに今の俺の武器もターナスの強化魔法が掛けられていて、そんじょそこらの剣とは全く別物なハズなんだが、それでも破壊しきれなかった。あの大戦斧は途轍もない強化が施されてるのかもしれん」


 その大戦斧も、やり過ぎた雷撃のせいで炭化したオーガジェネラルの近くに真っ黒く燻って転がっている。

 グレッグが近付いて拾い上げると、少し驚いたような表情で大戦斧に目を向けていた。


「意外と軽いな。いや、軽いと言う表現は正しくないが、これならパイルやアレーシアでも持ち上げることは可能だ。流石に振り回すのは俺でも無理だけどな」


 両手で持って大戦斧の重さを確かめながら、グレッグはその見た目に反する軽さに驚愕していた。

 俺も持ってみるが……なるほど振り回すのは無理だが、アレーシアでも持ち上げることは出来るだろう。


「ただ……この大きさに対してこの重さだと、破壊する力は減少するはずだ。――にもかかわらず、これだけ街を破壊出来ているのは強化魔法の賜物かもしれんな」


「……つまり?」


「軽さと破壊力は相反するものだが、これは軽いのに破壊力がある。つまり、破壊力を増す魔法が掛けられているんじゃないか……ってことだ。軽い大戦斧なんて矛盾してるだろ?」


「それじゃあ仮に一対一だったとしても、俺の剣じゃこの大戦斧には太刀打ち出来ないって事か……」


 自分の剣では大戦斧とぶつかった場合……良くて刃毀れ、悪ければ真っ二つに折れて破損してしまうだろうと、そう想像したのかグレッグは眉間に皺を寄せて厳しい顔で大戦斧を眺めていた。


「グレッグの剣の強化を更に上げれば問題ないさ。例えば……めちゃくちゃ硬い鉱物って何がある?」


「オリハルコンとか、ヒヒイロカネとか……かな?」


「金剛石よりも硬いのか?」


「金剛石は別だ。あれは伝説の鉱石と言われる実在するかすら怪しい代物シロモノだ。そんな物があればドワーフの鍛冶師が泣くだろうぜ」


「ほう、ならば金剛石よりも硬くすればいいってワケだ」


「はぁ? そんな伝説の鉱物よりも硬くするなんて可能なのかよ」


「多分、な。ただ、それだけ硬いと剣に加わった衝撃がそのまま自分の腕に伝わるはずだ。そうなると自分自身の腕が損傷する可能性が出て来る」


「そこは鍛えるしかない……か。でもまぁ、イザとなったらターナスが魔法で腕を強化してくれるんだろ?」


「金剛石並みに硬くしてやろうか?」


「……いや、やっぱ遠慮しとく」


 何を想像したのだろうか。束の間、顎に指を当てて空を見上げたかと思うと、感情を顔に出さずに拒否した。腕を金剛石並みに硬くすれば斬り付けられる心配はなくなるのにな。尤も、俺が『絶対的身体防護アブソリュート・プロテクション』を掛けてやれば、例え大戦斧であろうが傷ひとつ負わないんだから、逆に金剛石並みの強化なんて当てにならないかもしれん。


「それにしても、ジェネラル級がいるとは思わなかった」


「他の場所の応援を急いだ方がいいかもな」


 グレッグも一対一(タイマン)なら多少苦戦する程度で済んだだろうが、四対一となると応戦しようがないほどの種族階級だったようだ。

 そんなのがまだいるとしたら、魔王軍の兵士では心許ない。だとすれば対応出来るのは俺と、強化&防護魔法を施したグレッグくらいなものだろう。


 索敵を広げ即応が必要な場所を探る。


「グレッグ、向こうだ」


 俺の正面から二時の方向に忙しなく動き回っている多数の影と、その影をその場からあまり動かずに蹴散らかしているような影が、一グループ三体の三グループいる。

 

 グレッグは俺が指差した方角を一瞬見てから耳をそばだてる。

 戦闘音が聞こえたのだろうか、俺と目を合わせて頷くと、あっと言う間に神速で消えていってしまった。


「まだ強化魔法掛けてないってのに……」


 逸る気持ちは分かるが、ジェネラル級以上の個体だったらどうすんだよ。俺はちょっとだけ呆れつつ、瞬間移動でグレッグのあとを追った。


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